1980年に登場するやいなや、社会現象にもなったルービックキューブ。通常、急激にブレイクした商品は、一気に下火になるケースがままありますが、ルービックキューブは以来、長きにわたり親しまれ、立体パズルの代表であり続けています。
根強い人気の理由はシンプルかつ奥深い構造にありますが、3×3×3のオーソドックスなモデルだけでなく、近年はさらに進化し、2×2×2、5×5×5といったモデルのほか、コマを不規則にしさらに複雑にしたモデルまで登場。立体パズルファンの頭を混乱させながら、より深い楽しさへと導いているようです。
今回は2020年の発売40周年の直前の今、ルービックキューブの変遷と秘密に迫るべく、販売元のメガハウスの飯田さん、板垣さんに話を聞きました。
【トリビア①】ルービックキューブのプロトタイプは、木製の教材だった!
ーーそもそもルービック・キューブはどのような成り立ちで開発されたものなのでしょうか?
飯田 もともとはハンガリーの彫刻と建築学の教授、エルノー・ルービックさんという方が開発したもので、三次元の幾何学を説明するために考案した木製立方体が原型でした。後に立方体の各面に色を塗り、回転する仕組みを設けたところ、一度バラバラになると、元に戻すことが非常に困難だ……ということで、この立方体をパズルとして見ることにつながりました。
板垣 その後、まず1977年に“マジックキューブ”という名でハンガリーで発売され大ヒットになったそうです。これを受けて、1980年に“ルービックキューブ”として世界中でほぼ同時発売になりました。ですので、2020年は、厳密には“ルービックキューブ”の名で発売されてからの40周年ということになります。
ーー発売当時、自分もルービックキューブをやっていましたが、やり過ぎて各面のシールが剥がれてきてしまう……なんてこともありました。
飯田 1980年当時のルービックキューブは、表面にシールを貼っていました。確かに剥がれることはあまり良くないので、現在ではプラスチックのパネルを埋め込んでいます。このことで最初のモデルよりも格段に耐久性がアップしています。
【トリビア②】初年度の販売個数は、400万個!!
ーー1980年に、世界でほぼ同時発売となったルービックキューブを、「日本でも必ず売れる!」と確信された理由はなんだったのでしょうか。
飯田 当時の販売元ツクダオリジナルの開発責任者さんがニューヨークのトイショーでルービックキューブの原型を見て「これはすごい。日本でも広めたい」と思ったのが最初のきっかけのようです。知的でありながら、子どもから大人までが楽しめるものですからね。それで契約に至ったと聞いています。結果、ルービックキューブは日本でも大ヒットし、初年度(8か月)で400万個を販売するという爆発的な記録となったようです。
【トリビア③】登場から25年後に、ルービックキューブ競技が盛んに!
ーー以来、立体パズルとしては、ルービックキューブを超える商品って出ていなかったように思います。
板垣 そうですね。以降は定番商品となり、コンスタントに売れ続けていたのですが、さらに注目を浴びることになったのが、2005年です。この年に日本ルービックキューブ協会が設立され、競技アイテムとして再び広まりました。こういった競技としてのルービックキューブは年々盛り上がり、今日に至っています。
【トリビア④】ルービックキューブを目隠しして揃える強者も!
ーー「早く揃えられるかを競う」というものですか?
板垣 それもありますし、足で揃える競技や、目隠しして揃える競技もあります。
ーー目隠し!? 色が見えない状況でどうやって揃えるのですか?
板垣 大会での目隠し部門は、まず色がバラバラになっているルービックキューブを目で凝視し、配列を覚えます。覚えた時点で、アイマスクをして、見ないで記憶をたよりにそろえていきます。ルービックキューブを見て覚える時間と、目隠しをしてそろえる時間のトータルタイムが、記録となります。もちろん、完成できることが前提です。現在の世界記録は15.50秒(2019年11月11日時点シングル記録)です。
【トリビア⑤】発売時に次ぐブームは2007年。背景には意外な影響が!
ーー競技が盛んになった後、2007年頃に再び販売数が伸びたようですね。これは何かきっかけがあったのでしょうか?
板垣 当時“脳トレ”ブームがあり、そのアイテムの一つとしてルービックキューブが注目されました。
飯田 ルービックキューブが脳に与える影響についての現時点での科学的根拠は不明瞭ですが、やはり手先を使い、脳を使うパズルですので、こういったことから脳トレブームの際にもアイテムの一つとして注目を浴びたようです。
ーー確かにシンプルですし、高齢者の方にも良いパズルに見えます。
飯田 先ほど板垣が言ったルービックキューブ大会には、脳の研究をされている方も選手として出場されているのですが、その方も同様に「高齢者に良いと思う」とおっしゃっていました。かさばらず、持ち運びも楽にできますしね。また、「ルービックキューブ世界大会2007」のメイン種目で日本人選手が優勝しました。スピードキューブについても認知されてきました。早い選手の動画もwebで一気に広まり、憧れてルービックキューブを、はじめる人も多いと聞きます。
【トリビア⑥】マスの少ないモデル、多いモデルなど様々
ーー現在は様々なマス目の派生モデルがありますね。標準の3×3×3だけでなく、2×2×2、4×4×4、5×5×5など。
飯田 はい。ただ、一面の中心にマスが来ない偶数モデルは、完成させるのが非常に難しいとも言えます。
ーーそうなんですか? 2×2×2は、むしろ揃えられそうに見えますが。
飯田 実はこれが難しいという人もいます。標準の3×3×3の解き方が通用しないことも多いためです。
ーーまた、ブロックのサイズがバラバラのモデルもありますが、そう考えると、さらに難しそうな……。
飯田 「ルービックカラーブロックス3×3」は、各マスの幅が1つずつ違うので、それぞれの幅は必ず、それがハマる位置にしか来ません。なので、3×3×3に比べれば確かに難しくはありますね。
【トリビア⑦】6面揃えの近道は、6種類ある解き方手順と、そのアレンジ!
ーーでは定番の3×3ですが、昔は「縦横、ある一定の動きを繰り返すと、必ず6面が揃う」という都市伝説のようなものがありました。これは正しいですか?
飯田 いや、それはないですね。ルービックキューブのオーソドックスな解き方は、商品に付録している6種類の手順が基本ですね。前述の大会の選手の方々の大半も、この公式をベースにして、ご自身でアレンジをしながら早く揃える工夫をされているようです。
【トリビア⑧】ほぼ2頭身のキャラクターを揃えるモデルがある!
ーー様々な派生モデルが出ていますが、一つ、2頭身のようなカタチのかわいいモデルもありますね。これはナンですか?
板垣 キャラクターとルービックキューブを融合させたモデルですね。頭の部分が3分割、胴体の部分が4分割になっているので、合計7個の要素を揃えていくものです。様々な版権キャラクター商品を展開しているので、日本だけに限らず、アジア圏などでも販売しています。
【トリビア⑨】ルービックキューブを6面揃えると、ルービックキュービストに認定してもらえる!
ーー最初の発売時、「ルービックキュービスト認定証」というものをクラスメイトが持っていて、羨ましかったことがあります。これは今でもありますか?
板垣 もちろんあります。バラバラの状態と、6面揃えた状態のルービックキューブの写真と、商品に同梱している認定書引換券などを送っていただければ、「あなたは6面を完成させました」という認定証をお送りさせていただいています。
ーーこれだけの長きにわたって支持を得ている商品ですが、40周年の記念すべき2020年以降、さらなる展開を予定されていますか?
板垣 1980年に販売した商品ですから、2020年はちょうどユーザーが三世代に差し掛かる時期でもあるんですね。お子さんにとってみれば、真新しく映るかもしれませんし、今昔を知っている層にとってみれば「懐かしい。もう一度やってみたい」と思われるかもしれません。また、先ほども言ったように、今の高齢者の方にとっては、きっとお子さんに買ってあげていた層かもしれません。
この幅広い層が、今も没頭していただけるであろう商品はそうはありません。それを踏まえながら、ルービックキューブのさらなる面白さ、「こんなことができますよ!」といったことを広められたら……と思っています。
飯田 まだ細かい展望は決まっていませんが、新しいルービックキューブの魅力をご紹介できたら良いなと思っています。
特に揃える方法のお話をうかがっている際は、筆者の頭もかなり混乱してしまいましたが、言葉で簡単に説明できない点もまたルービックキューブの面白さの理由です。シンプルそうに見えて、何日、何時間かけて遊んでも飽きないルービックキューブ。40周年を前に今一度挑戦してみては?
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