電球をつける“口金”にスピーカーを挿し込む。照明×AV機器という斬新な試みの裏側には、ただ単に音が鳴る電球にしないためのソニーのこだわりと最先端の技術が詰まっていました。
ソニー
LED電球スピーカー
LSPX-100E26J
E25口金から給電し、照明としてインテリアに自然に溶け込む電球型のワイヤレススピーカー。Androidスマホだけでなく、iPhoneともペアリングできます。市販の変換アダプターを使えばE17口金にも装備可能。
“なんでもよいから新しいもの”から始まった革新的アイデア
空間をそのままに生かすことで、新しい体験を創造する—―ソニーが「Life Space UX」というコンセプトを掲げ、居住空間の改革に挑んでいます。本年1月に販売された「4K超短焦点プロジェクター」に続き、同シリーズの第2弾として登場したのが、この「LED電球スピーカー」。
本製品を既存の電球と差し替えるだけで、家の照明があっという間に音楽プレイヤーに変わります。面倒な設定などは一切不要で、スマホから手軽に音楽を再生できる革新性が使用者を魅了するのです。
開発責任者の佐藤貴司氏は開発の経緯について次のように語ります。
ソニー株式会社
TS事業準備室 シニアプロダクトマネージャー
佐藤貴司さん
LED電球スピーカーの生みの親。Blue-Ray Discフォーマットやオーサリング技術の開発にも関わりました。
「“なんでもよいから新しいものを作ってくれ”と言われたのがそもそもの始まりでした。しかし、ソニーが作っていないものを探すのは大変で、1か月くらい悶々としました。そんな時、ふと目にとまったのが電気を供給するケーブル。AV機器周辺の配線が全てなくなったら革新的だと考え、電力供給源としての“口金”にたどり着きました」。しかし、このアイデアを実現するためには、電球ならではの課題を解消する必要がありました。
「電球の内部は温度がとても上がりやすいので、いかにして熱を逃がすべきかと悩みました。温度が高いままだとスピーカーとして使用する部品が耐えられないからです。〝パイナップル〞くらいにサイズアップすれば温度は簡単に下げられるのですが、自然な照明器具として空間に溶け込ませるためには、電球としてのサイズを維持する必要もありました。何度も試行錯誤を繰り替えして、ようやく納得がいくレベルまで温度を抑えることに成功したのです。開発に苦労した分、他社は追随しづらいだろうという自信もありますよ」
照明×音響の共存に妥協は一切ない
スピーカーを突端部につけたのは“音響のソニー”としてのこだわり。この構造を選択すると高音質化しますが、一方で照明に影ができてしまう問題もありました。しかし、ソニーは新開発の「光学レンズグローブ」により光を屈折させ、良音と照明の美しさを共存させています。また、全方位に光を照らせることもポイント。
「ランプシェードには、透過させるデザインが多い。光に明かりをこだわってはじめて照明としてのデザインが完成するわけです。余談ですが、ソニー創業者の一人“井深大”が家電の道に進んだのは、少年時代に見た電球の美しさに感動したからと言います。実はソニーと電球には深い縁があるんです」
電球の突起部にスピーカーを設置することで、ランプシェードなどの遮蔽物を挟まず、クリアな音質を届けることができます。
リモコンからの赤外線を乱反射させることで、全方向から受信可能に。赤外線受光部が外からは見えないデザインになっています。
このスピーカーは、電球に使用する一般的なE26型の口径から給電して動作します。普段は電球として活用し、音楽を聴きたいときはペアリングしたスマホから楽曲をワイヤレスで再生。
ボリュームコントロール機能と、32段階の調光機能を持つリモコンが付属。60分で切れるタイマー機能もあります。
リモコン底面のNFCチップにより、スマホとワンタッチでペアリングできます。ソニーのオーディオ操作アプリにも対応。
ソニー
LED電球スピーカー
LSPX-100E26J
SPEC
●対応口金:E26口金
●全光束:360lm
●使用スピーカー:直径約40mm
●最大出力:2W
●通信方式:Bluetooth ver.3.0
●見通し距離:約10m
●使用周波数帯域:2.4GHz帯
●変調方式:FHSS
●対応コーデック:SBC、AAC
●伝送帯域(A2DP):20Hz-20,000Hz(44.1kHzサンプリング時)
●消費電力:約9.0W
●最大外形寸法(外径×全長)/質量:約Φ61mm×116mm/約205g