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2017/11/9 19:30

開発者が「未完成なデザイン」と認めるエアコンって? 色・質感が違う7つのパネルに込めたダイキンの意図

2017年10月31日、ダイキン工業が壁掛形ルームエアコンrisora(リソラ)の説明会を開催しました。「risora」は9月28日に発表されたミドルクラスの壁掛形ルームエアコン。「risora」とは、空気と空間の“心地よさ”をテーマに、暮らしに溶け込むデザインを目指して生み出されたデザイン性の高いエアコンです。

 

「未完成なデザイン」との言葉の裏に見える意図とは?

↑壁掛形ルームエアコン「risora(リソラ)」
↑壁掛形ルームエアコン「risora(リソラ)」。その名は、理想の「ri」と、空間の「sora」に由来します

 

発売は2018年3月の発売を予定。大手家電量販店では2.2 kWから7.1kWまでのラインホワイト、グレイッシュブラウンメタリックの2種が販売されます(残りの5色は住宅設備向け)。6畳用が13万円前後、14畳は20万円前後、23畳用は28万円前後となる予定で、2018年度で5万台の販売を目指すとのこと。

 

この説明会では本機が「未完成なデザイン」と紹介される場面がありました。未完成のものを売るのか? と疑問に思う方も多いと存じますが、その言葉は同社のデザイン意図を端的に表したものでもありました。その点も含め、5つのポイントに焦点を当てて、詳しく見ていきましょう。

 

【その1 デザインコンセプト】

risoraのデザインは次世代のスタンダードになりうる

↑コンセプターの坂井直樹氏
↑コンセプターの坂井直樹氏

 

説明会の冒頭、コンセプターであり株式会社Water Design 代表取締役の坂井直樹氏が登壇して、「空気や空間におけるデザインの役割とは」として、デザインについての考え方を語りました。

 

坂井直樹氏は日産自動車「Be-1」の開発に関わってフューチャーレトロブームの創出をしたり、auの外部デザインディレクターを務めたりと、多方面で活躍。ダイキン工業では、デザイングループの顧問を務めています。

 

自身の過去のデザインの実績を紹介しつつ、「デザインというと、いまだに装飾性やライフスタイルとして語られることが多いですが、コンセプターとしてもっと社会的な機能に注目しています。デザインはローコスト・ハイリターンの経営資源なので、経営者自身がデザインの価値を理解していると、会社は強いブランドを作ることができます」とデザインの価値を説明。

 

「世の中にリリースされたときは変わったデザインだと言われても、それがその後のスタンダードになることは多い」として、今回のrisoraも「エアコンのイノベーションであり、次のスタンダードになりうる」と語りました。

↑坂井氏のデザイン実績紹介ムービーから。risoraも次世代のエアコンの原型になるか
↑坂井氏のデザイン実績紹介ムービーから。risoraも次世代のエアコンの原型になるか

 

【その2 デザイン哲学】

「未完成」だからこそ設置されて初めてデザインが完成する

↑関 康一郎氏
↑関 康一郎氏

 

続いて登壇したテクノロジー・イノベーションセンター 先端デザイングループリーダー 主任技師・関 康一郎氏は、ダイキンのデザインのフィロソフィ(哲学)について説明しました。

 

ダイキンでは、「空気をデザインすることができたら、生活が変わっていくのではないか」という仮説のもとに、「見えない空気を、愛されるものにする」をデザインのフィロソフィとしているといいます。

 

そして坂井氏とタッグを組む経緯として「グローバルで勝てるダイキンのデザイン」という目標があり、そのなかから誕生したのが「risora」であると説明。「一見すると未完成のデザインですが、未完成でよしとするデザイン。未完成だからこそ暮らしに溶け込みます。『さまざまな個性を持つお客様の空間に収まって、初めてデザインが完成するエアコン』というコンセプトで進めています」と語ってくれました。関氏によれば、欧州北米を中心にグローバルでも発売するとのこと。

合わせる壁紙選びがしたくなるソライロ
↑合わせる壁紙選びがしたくなるソライロ

 

【その3 カラーリング】

「いかに暮らすか」を突き詰めたらこの7色が生まれた

最後は「risora」のデザインを担当したテクノロジー・イノベーションセンター 先端デザイングループ 中森大樹氏と、設計を担当した同センター 空調生産本部 商品開発グループ 石川詩織氏により、デザインの経緯を説明とデザイン性と機能性を両立するために苦労した点が紹介されました。

↑中森大樹氏
↑中森大樹氏

 

デザインを担当した中森氏は「スペックで選ばれてしまうものを、インテリアや家具、空間作りを担うアイテムのひとつとしてデザインしました」といいます。

↑丸みを帯びたフォルムと細部にわたるデザインで、やわらかい印象を与えます
↑丸みを帯びたフォルムと細部にわたるデザインで、やわらかい印象を与えます

 

「risora」には7色のパネルにはぞれぞれコンセプトが設けられています。ラインホワイトは「爽やかな質感」、グレイッシュブラウンメタリックは「空間に深みを与える」、ファブリックホワイトは「空間にやさしくたたずむ」、ブラックウッドは「空間を引き締める」、ツイルゴールドは「光で魅せる」、ソライロは「窓のある暮らし」、フォレストグリーンは「緑とともに過ごす」といった具合です。

 

中森氏によれば、これらは「色のバリエーション展開ではない」とのこと。「いかに暮らすかという体験価値を検討した結果、生まれた7色なんです」と説明しました。

↑ツイルゴールドのパネル
↑ツイルゴールドのパネル

 

↑7つのバリエーションによって、空間に溶け込ませる、あるいは空間のアクセントにするといった使い方が可能
↑7つのバリエーションによって、空間に溶け込ませる、あるいは空間のアクセントにするといった使い方が可能

 

↑動作中のブラックウッド。極めて落ちついた印象を与えます
↑動作中のブラックウッド。極めて落ちついた印象を与えます

 

【その4 テクノロジー】

デザイン性と機能性の両立のため苦心した3つのポイント

↑石川詩織氏
↑石川詩織氏

 

本機では、最上位機種「うるさら7」で好評の機能を搭載。 冷房時は天井を沿わせるとともに、暖房時は温風を壁と床を沿わせて風速を抑えることで、人に当たりにくい気流制御を実現しています。また、設計を担当した石川氏は、デザイン性と機能性を両立するために苦労した点として、「人に当てない気流を実現するフラップの形状」「気流を細かく制御するサブフラップの形状」「ファンの設計」の3つを紹介。

 

いずれもコンパクト化を目指すがゆえの苦労でしたが、フラップ(上下の風向きを調節する羽根)は薄さを実現しながら断熱性を確保し、サブフラップには飛行機の羽根に使われている技術をエアコンで初めて採用。ファンには羽根に切り込みを入れて空気抵抗を低減し、美しく静かなエアコンを完成させました。

↑「冷気が触れる部分の樹脂の肉厚を0.5mmまで薄くする必要があった」(石川氏)というコアンダフラップ
↑「冷気が触れる部分の樹脂の肉厚を0.5mmまで薄くする必要があった」(石川氏)と語るコアンダフラップ

 

【その5 先進性】

オプションの無線LANで操作もスマートに

今回の「risora」の各カラバリは、色だけでなく質感も変えており、合わせるインテリアによって大きく表情を変えるのが特徴です。3年前から開発構想があったとのことですが、省エネ化とコンパクト化を同時に実現する技術がそろったのがこのタイミングだった模様。「risora」はダイキンのエアコンのイメージを大きく変えるシリーズとなりそうです。

↑フォレストグリーン。現在のインテリアのトレンドとしては、 白ベースやナチュラルカラーが多いとのことですが、ダイキンでは次のトレンドカラーをフォレストグリーンと見ているようです
↑フォレストグリーン。現在のインテリアのトレンドとしては、 白ベースやナチュラルカラーが多いとのことですが、ダイキンでは次のトレンドカラーをフォレストグリーンと見ているようです

 

なお、本機は無線LAN接続アダプターがオプションで内蔵でき(無線LAN接続アダプターは別売)、スマートフォンのアプリからも制御可能になっています。将来的にはスマートスピーカーとの連携も視野に入れているといいます。美しい空間の構築のみならず、その空間の中でのスマートな操作も「risora」の目指す美しさのひとつといえるでしょう。

↑これまでの無線LAN接続アダプターは、このように壁に露出していましたが、risoraは内蔵できます
↑これまでの無線LAN接続アダプターは、このように壁に露出していましたが、本機はオプションで内蔵できます

 

↑無線LAN接続アダプターを使用すると、このようにスマートフォンからも操作できるようになります(写真は同社の他モデルを使用したイメージ)
↑無線LAN接続アダプターを使用すると、このようにスマートフォンからも操作できるようになります(写真は同社の他モデルを使用したデモ)