アイリスオーヤマは2022年に売上高1兆円の目標を掲げています。2018年計画である売上高5000億円の2倍。その目標に向け、商品の開発・生産体制を強化する計画を打ち立てており、その試金石となる新工場「つくば工場」が4月24日に茨城県稲敷市にオープンしました。同社にとって初めての自動工場とのことですが、それはいったいどのようなものなのか? 同日に行われたメディア向けお披露目会に参加して確かめてきました。
関東圏のLED需要に対応すべく新工場を建設
アイリスオーヤマつくば工場は、圏央道・阿見東インターチェンジから約2kmの阿見東部工業団地内に建設されました。同工場はLED照明の生産と、家電製品および法人向け建築内装資材の物流倉庫として機能します。これまで、日本国内市場向けLED照明は中国大連工場で8割、佐賀県鳥栖工場で2割を生産してきましたが、今後はつくば工場2割、鳥栖工場1割、大連工場7割と、国内生産率を拡大します。
つくば工場では、特に関東圏の需要増に対応していくとのこと。首都圏では2020年の東京オリンピックに向けて都市開発が進み、大型商業施設、オフィス物件の新築案件が目白押しで、LED照明の需要も急増しています。さらに、既設物件でも照明のLED化が年々進行しているため、同社では2020年以降も需要は衰えないと判断し、つくば工場を新設。大山健太郎社長は、つくば工場建設の目的について次のように説明しました。
「売上の50%は首都圏が占めています。現在、関東市場をカバーする物流倉庫は埼玉県と静岡県にはあるが、供給量は現状でめいっぱいのところまできています。売上高1兆円を達成するために、つくばに大規模な物流倉庫併用の倉庫を建設しました」
工場内の物流倉庫の能力は約5万2000パレットと、同社としては国内最大級。生産能力は、シーリングライトとオフィス・商業施設向け一体型ベースライトそれぞれ最大週7000台。つくば工場の販売計画は初年度200億円ですが、「5年以内には400億円に倍増します」(大山社長)とのこと。
3ラインすべてが自動化され、スタッフは各ラインに一人だけ
つくば工場の最大の特徴は自動化です。これまで多くの家電製品の国内工場を見学してきましたが、ほとんどが人力を前提とした生産ラインでした。1mごとにスタッフがならび、ベルトコンベアの上を流れてくる本体に、自分が担当する部品を手仕事で次々と装着していくのです。それに対して、このつくば工場は、LED基盤の実装、一体型ベースライト、シーリングライトの生産の3ラインすべてが自動化されています。
床をAGV(無人搬送車)が走り回り、部品のピッキング、組み立て、エイジング(実負荷試験)、梱包までをロボットが行います。スタッフはシステム監視のために1ラインに1人だけ。つまり、現在は3ラインなので3人だけなのです。「国内の人手不足はさらに深刻化していくでしょう。当工場では今後、大量生産型の汎用品を人手をかけずに生産していきます」と大山社長。
中国からの建築内装部品の物流倉庫としての機能も兼備
物流倉庫も自動化しています。奥行き110m、高さ30m、幅80mの巨大倉庫内をコンピューター制御された台車が縦横無尽に動き回り、商品の入出荷を自動管理しています。
さらに、本工場は、LEDや家電製品だけでなく、昨秋から参入した建築内装部品の物流倉庫として機能するとのこと。「新築ビルでは、LEDライトだけでなく床から天井まであらゆる資材が必要になります。大手ゼネコン関係者に当社の大連工場を見学してもらったら、『あれも作れる?』『これも作れる?』とたくさんの要望をいただきました。そのため今、OAフロア、タイル、壁材、消火栓ボックス、天井の点検口、階段の手すりなど、ありとあらゆる建築内装資材の新製品を揃えているところです。建築資材関係は流通が複雑ですが、当社はメーカーベンダーでありながら流通機能も持っています。つくば工場の完成を機に、大きな流通改革ができると考えています」(大山社長)
いままで、アイリスオーヤマは、「ユーザーインの製品開発」という信念のもと、機能てんこ盛りで高額な家電製品は作らず、シンプルな製品をリーズナブルな価格で提供し続けることで、ユーザーの支持を得て家電分野で成長を続けてきました。さらに今回、つくば工場に自動生産・自動倉庫システムを新設したことで、コストを抑えながら大量生産と安定供給が図れるため、今後も低価格で質の良い製品が安定的に作ることができるとしています。他メーカーにとっては大変な脅威ですが、ユーザーにとってはうれしい限り。同社がさらなる支持を得て、1兆円企業となる日もそう遠くはないのかもしれません。