ダイソンと言えば、英国発の掃除機メーカー。羽なし扇風機など、掃除機以外のジャンルでも革命的な商品を数多く生み出している同社は、掃除機に留まらない家電メーカーへと進化を遂げています。
ですが、その主力はやはり掃除機です。今回特集するのは、強力な集じん力と快適な操作性で大ヒットした傑作商品、Dyson コードレスクリーナ―DC62 モーターヘッド。ダイソンは、同機によってコードレス掃除機の市場を切り拓き、日本国内市場における地位を不動のものとしました。その開発秘話を、ダイソン マーケティング部の矢田 俊さんと、家電コーディネイター 戸井田園子さんの対談形式でお届けします。
課題はパワーと小型化を両立するモーターの開発だった
戸井田 開発時、日本市場は意識しましたか? 意識したのなら、日本向けに変更した点は?
矢田 創業者のジェームズ・ダイソンをはじめダイソンの開発陣は、日本の市場を強く意識しています。そのため、日本の家庭で綿密なモニター調査を行い、製品に反映させました。取っ手を斜めに傾け、トリガーを軽くしたのも日本人の使いやすさを考えた結果です。
戸井田 開発で困難だった点は、やはりモーターでしょうか?
矢田 その通りです。「大きさはそのままで、パワーを倍に」というのが課題でした。11年にスティック型の初号機、DC35を発売した際は、某メーカーが「コードレスでパワーが出るはずがない」と言い放ちましたが、それだけパワーと小型化の両立は難しいんです。
戸井田 当初から、それらを両立できる目算はあったのですか?
矢田 エンジニアは「できる気がしなかった」と告白しています。しかし、「大きさがそのままなら速く回せばいい」と思い立ち、毎分最大11万回転する「ダイソン デジタルモーター V6」を完成させました。結局、2層サイクロンも含め、すべての開発を終えるまで要した期間は3年半。その間に約100個ものプロトタイプを作っています。
戸井田 100個も! 開発の中止は考えなかったのですか?
矢田 ダイソンの社内には、「現実的にはムリ」といわれても、「最後にはできる」という楽観的なムードがあるんです。元々、当社は創業者のジェームズ・ダイソンが、自宅ガレージで、いつ完成するかわからない研究を5年間、続けたことに始まった会社ですので……。
戸井田 みんなが「ムリ」だと思うことを諦めずにやった。だからこそ“傑作”が生まれたんですね。
対談者プロフィール
ダイソン マーケティング部
矢田 俊さん
2008年にダイソンに入社。ブランドマネージャーとして同社の掃除機部門全般の販売戦略を担当する。
家電コーディネイター
戸井田園子さん
雑誌、テレビなどで幅広く活躍。GetNAvi本誌にもしばしば登場し、ユーザーの視点に立った実用的な製品評価で、高い支持を集める。
商品情報
ダイソン
Dyson コードレスクリーナ―DC62 モーターヘッド
実売価格5万6150円
毎分最大11万回転の「ダイソン デジタルモーター V6」を採用し、キャニスター型に劣らぬ集じん力を実現したスティック型コードレスクリーナー。2層サイクロンで微細なチリも分離する。13年8月の発売から1か月で掃除機全体のトップシェアを占め、コードレス機普及の立役者となった。