アイリスオーヤマは、2009年に家電事業に参入して以来、「なるほど家電」をモットーに、思わずうなずくプラスワン機能を持つ製品や、お買い得感の高い製品を発売して業界の風雲児となっています。そんな同社は、2017年のルームエアコンに続く大型家電として、2018年の12月、ついに同社初のドラム式洗濯機を投入しました。それが洗濯容量7.5kgの「ドラム式洗濯機 HD71」(14万8000円・税抜)です。
いったいどんな「なるほど」が用意されているのか…と思いきや、「ドラム式洗濯機なのに、乾燥機能がない」とのこと。思わず「ええっ!?」と耳を疑いました。なぜなら、ドラム式の大きなウリといえば、衣類が固まりにくく、風で舞わせながら効率的に乾燥できること。それを省略した製品とは一体……。というわけで、この冬、アイリスオーヤマが東京支社を浜松町に移転したこともあり、新社屋の見学を兼ねて、実物を見てきました!
幅595mmのコンパクトなサイズに注目
まず、HD71は本体のコンパクトさに注目。排水ホースを後ろから出すタイプで、総外形寸法における横幅は595mm。幅と奥行きが595×595mm以上の防水パンに設置可能となっています。
本機に限らず、ドラム式洗濯機は、洗濯機の前にあまりスペースがない環境だと、きちんと扉が開けるか注意が必要です。扉の径は470mmで、開いたときに洗濯機の奥から1112mmのところまで届きます。また、ラインアップは左開きのみなので、洗濯機のすぐ右に壁が来るレイアウトには向いていません。
「温水洗浄」で汚れを抑え、「部屋干しコース」で衣類が乾く時間を短縮
HD71には、「なるほど」と感じる機能があります。それが「温水洗浄」機能。専用の温水ヒーターを搭載し、洗い温度を常温、20、30、40、60℃から選んで温水で洗濯できます。60℃の温水には除菌効果もあり、洗剤の洗浄効果を最大限まで引き出して、汚れもニオイの原因菌もすっきり洗い落とします。
また、40℃の温水につけ置き30分を加えることで、繊維の奥に染み込んで酸化した皮脂汚れ(黄ばみ)も溶かして落とすことが可能。白いシャツの襟元や袖口が黄ばんだり、黒ずんだりする、あの不快な汚れが気にならなくなるわけですね。
すすぎを50℃と40℃から選ぶ「部屋干しコース」も搭載。最後のすすぎが温水なので、衣類が温かいまま仕上がるため、乾燥するまでの時間が通常の約3分の2に短縮されます。早く乾くということは、部屋干し臭も出づらくなるということ。これはいいことづくめですね!
操作はダイヤルでコースを選択し、好みの調整もカンタン
操作は上部のダイヤルとボタンで操作します。まずはダイヤルで「標準」「大物(布団・毛布)」「手洗い」「羽毛(ダウン)」といった14コースのなかから選択。右のパネルの「洗い時間」「すすぎ回数」などのボタンにタッチして、洗う時間だけ長くしたり、すすぎ回数を増やしたりといった調整も可能です。同じ設定を使うことが多い場合は「おこのみ設定」に登録し、ボタン一発で呼び出すこともできます。
「乾燥機能ナシもアリ」と気づかせてくれるモデル
こうして実際に製品を見てみると、ドラム式といえど「乾燥機能なしでもいいんじゃないか」と思うようになりました。ドラム式洗濯機を使っていても、乾燥時間が長すぎて(うるさくて)、あるいは電気代が思ったよりも高くて、結局乾燥機能を使わなくなった方もいると聞きます。それならば、高い節水性や「洗濯機の上」が使えるなど、タテ型にはないメリットがあるわけだから、乾燥機能を省くのもアリなんじゃないかと。加えて、本機の「温水洗浄」とコンパクトさ、15万円を切る価格を考えると、十分な価値があると思うのです。そこを気づかせてくれるあたり、さすがは「なるほど家電」と謳うだけのことはありますね。
静電モップ付属クリーナーが上重心になって新登場
今回はドラム式洗濯機だけでなく、いくつかの新製品も見せてもらいました。筆者が気になったのは、静電モップ付属で注目を集めたスティッククリーナーの第2弾、2018年の12月に発売された「KIC-SLDCP6」(実売価格2万8940円)です。本機は従来機種と同様、付属のモップが帯電しているので、家具の上や本棚、エアコンの上やブラインドの隙間など、ホコリがたまりやすい場所もサッとひとなして掃除できます。使用後はモップを充電スタンド下部の吸い込み口に突っ込めば、クリーナーでモップに付いたゴミやホコリをキレイに吸引。本機があれば、お部屋全体の掃除がはかどるというわけですね。
なお、従来機の「KIC-SLDCP5」はモーターや集じん部がヘッドに近い下重心でしたが、新製品のKIC-SLDCP6はモーターと集じん部を手元に配置。方向転換やヘッドの上げ下げがしやすしています。また、上重心ながらスタンドを使わなくても自立するので、掃除中にちょっと床の上のモノを片付けたいときに便利です。
ほこり感知センサーでゴミが取れているかがわかる
重量は従来機より0.2kg重くなっていますが(それでも1.6kgですが)、ブラシが回転する力でヘッドの自走を実現する「自走式パワーヘッド」採用しており、軽々と操作できます。実際に使ってみると、スルスルと勝手に前に進んでいく印象でした。
柄の中ほどには、ほこり感知センサーも搭載。掃除中の床にゴミが残っていればLEDがオレンジに光って知らせるので、微細なゴミまでキレイに取れているかどうかわかります。さらにゴミやホコリの量に応じて自動的にパワーを調節するので、ゴミのない場所では省電力になり、バッテリーを効率良く利用できます。軽量で扱いやすく、3万円を切る手ごろな価格ということもあって、ワンルームの一人暮らしや、こまめに掃除したい家庭にオススメですね。
「スマートスピーカー対応LEDシーリングライト」も登場
もう一つ触れておきたいのが「スマートスピーカー対応LEDシーリングライト」です。Google HomeやAmazon Echoなどのスマートスピーカーと連携させ、音声操作で照明のON/OFFや明るさなどが調整可能。実売価格は、~8畳用の調光タイプで1万5980円。
新オフィスは外部にも見せられる「ライブショールーム」
最後に、アイリスオーヤマの新しいオフィスをご紹介。広報の松下さんによると、新オフィスのコンセプトは「ハブ」とのこと。羽田空港行きモノレールの始発駅である浜松町駅近くということもあり、海外から戻った社員が宮城の本社に行く前に寄れる場所を意識しています。
また、顧客をつなぐ場、社員同士をつなぐ場、リクルーティングで人をつなぐ場としても機能するように考えており、オフィスが稼働しながら外部にも見せられる、「ライブショールーム」となっています。そこかしこに緑(フェイクではなく、本物の植物です)があってこれは気分がいい!
デスクはフリーアドレス制で、PCは基本的にWi-Fiを利用。そのときの仕事の内容に合わせ、集中したいときは区切られた席、チームのみんなでミーティングしたいときは大きいテーブル、アイデア出しなどの考え事のときはリラックスできるソファなど、そのつど好きな場所を選んで作業できる仕組みです。また、商談ルームも内装の異なる8室を用意しています。
家電・家具から内装まで、オフィスには自社製品を使用
これらの部屋を含め、オフィスで使われているLED照明、イスやテーブルなどのオフィス家具、壁掛けテレビなどの家電、床材や壁紙などの建築内装材は、ほぼすべてアイリスグループの製品を採用しています。なるほど、製品の使用例を実際に見られるというわけで、文字通りのショールームでもあるわけですね。
17時になると社員が自社のクリーナーで清掃を開始
最後に、取材中に驚いたことをもう一つ。我々が取材のため見学していると目の前でアイリスオーヤマの社員達が唐突にフロアを掃除し始めました。「せっかくの新しいフロア、キレイなまま使いたい」と考える手の空いている社員達が、17:00になると自発的にフロアを掃除するのだそうです。これは素晴らしい! 自社製品を知るという意味でも、大きな意義がありそうです。さすがは勢いのある会社だけあって、製品と社屋、働く人にも驚きがありました。今後はどのように成長していくのか、引き続き、その製品や取り組みに注目したいところです。