レッドドット・デザイン賞とiFデザイン賞、世界的に権威ある2つのデザイン賞を獲得した、画期的なLED製品が日本に上陸する。その名も「Beam」。オランダのキックスターターでは、もっとも成功したプロジェクトとして知られ、スタートからなんと2日で2000万円を集めたとか。
Beamは、ペンダントライトとしての使用はもちろん、スマホやPCからの映像を映すプロジェクタでもあり、単体でAndroidアプリを動かせるデバイスでもある。今回は、この製品の魅力と、なぜ日本ではソフトバンクの新規プラットフォーム「+Style(プラススタイル)」でクラウドファンディングを開始したのか? Beam日本進出にあたり、全面的なサポートを行っているBlueGreenGroup社の協力のもと、Beam LabsのCEOであるDon Molenaar氏に伺った。
まず目を引くのはそのスタイリッシュなカラーリング。家庭用の電灯というと白を基調にした製品が多いなか、敢えて黒をセレクトしデザイン性を強く打ち出している。
「最初の頃は白にしていたんですが、いろいろとお客さんの意見をフィードバックして黒に変えました。白だとテーブルの上に置くと紛れてしまって目立たない。黒であれば、はっきりと存在感が出ますし、インテリアとしてもフィットする」(CEO・Don氏)。
しかも自然で気付きにくいが、プロジェクタのスクリーンのバックも黒になっていて、時計や天気予報を壁に映し出せば、その情報自体が部屋を飾るアートのようになるのも洒落ている。
一方で機能面はどうかというと、傘のリングを回せばスクリーンが360度回転し、非常に使い勝手がいい。キッチンの壁に料理のレシピを表示させたり、作業用の机に仕事の資料を投影したり……。
「Beam Actionsというアプリを使うことで、誰かが部屋に入ってきたらライトをつけるとか、YouTubeが流れるとか、そうした設定にすることもできます。毎週月曜から金曜の朝7時に天気予報を映すなど、自分の好きなように何万通りにもカスタマイズ可能です」(Don氏)
これだけ機能的にいろいろ盛り込まれていると技術的な面で苦労が多かったのではないかと思うが、「特に、技術的には問題なかったです」(Don氏)との答えがさらっと返ってきた。
動作音は非常に静かだし、触ってみたところ熱もほとんどこもっていない。よくよく聞いてみると「ちょっと大きめのファンをゆっくり回して、熱を感知するとすぐに逃がすようにしている」(Don氏)という工夫を話してくれた。製品としての存在感はありつつも、プロジェクタとしてはさりげなく部屋に調和し、面倒という意識なしで使えるのは素晴らしい。
さらに、拡張性にも優れている。まず、追加パーツとして制作中のアームは、インテリア性が高まるだけでなく、映像を投影する場所の選択肢も広げてくれる。上向きにして天井にネットフリックスの動画を映して寝ながら見る、なんて自堕落な贅沢もアリだ。このアームもキックスターターのバッカー(支援者)がDIYで作成したのを面白いと思って公式でも作ったとのことで、アイデアの採り入れ方が非常に柔軟で素早い。
さらに、個人ユースに限らずBtoBへの拡張も期待されている。
「家電の展示会にも出展しましたが、そこではたくさんのレストランや、バー、ホテルの方々から、Beamを使ってみたいという声をいただきました。そうしたニーズを踏まえ、新たなソフトウェアを開発したいと思っています」(Don氏)。
たとえばアパレルショップで店頭にロゴを映し出すといったベーシックな使用法から、博物館で上から展示品を説明するといった使い方、さらには複数のBeamを同調させて大きな映像を表示することも可能になるという。個人のシーンだけでもかなり幅広い使用法が考えられるが、商用まで視野に入れるとその領域と可能性は無限大だ。
この製品は、日本国内では、ソフトバンクが3月30日に提供を開始した+Styleという、ものづくりを支援する消費者参加型プラットフォームでクラウドファンディングがスタートした。もともとは、米ラスベガスで行われた世界最大級の家電展示会・CESで出展されていたのをソフトバンクの担当者が見つけ、声をかけたのがきっかけだという。
クラウドファンディングというと、形になっていないアイデアを製品化するために開発費を募るというケースが多く、そうなると必然的に高額な目標金額が設定される。だが、今回の日本での目標金額は50万円と非常にコンパクト。
その50万円の内容については、「技適マークやPSEマークを取るなど、日本でのローカライゼーションに必要な費用です。また、こういった+Style(プラススタイル)という場で、日本人からのいろいろな評判を見て、それをフィードバックしたいというのもあります」(Don氏)。この地に足の着いたスタンスに本気度を感じた。
たとえば、海外では人気ながら日本ではなかなか正式発売されないスマートウォッチの機種がある。それはやはり、電波を扱う製品の場合、技適マークの取得がネックになる部分が大きいからだろう。だが、通信企業のソフトバンクにとっては専門分野。製品を日本で展開するときの障壁を+Style(プラススタイル)と組むことによって軽減する、そんな狙いもあるのかもしれない。今後も特に海外企業にとっては、似たようなケースで+Style(プラススタイル)の存在は非常に心強いものとなりそうだ。
Beamの取材を終えて感じたのは、+Style(プラススタイル)の懐の深さ。あらかじめ有望な製品をリサーチして開拓したり、ソフトバンクのバックグラウンドを活かして支援したりと、土台がしっかりしているという印象が強い。これは、レッドドット・デザイン賞とiFデザイン賞を獲得するほどの製品を引っ張って来たという今回の例でもわかる。今後も+Style(プラススタイル)からは、現実的で面白いものがたくさん出てきそうだ。
【URL】
+Style(プラススタイル) https://plusstyle.jp/
LEDライト型スマートプロジェクター「Beam」 https://plusstyle.jp/funding/item?id=20