自宅でも、喫茶店のような美味しいコーヒーが飲みたい――。そう思って、喫茶店のコーヒー豆をよく買って帰りますが、コーヒーメーカーではお店レベルの味が再現できず、「プロが淹れるって、そういうことなんだ」と諦めていました。ところが昨年秋、ツインバードから“世界一おいしい”と謳う「全自動コーヒーメーカー CM-D457B」(実売価格4万1950円)が登場。しかも監修したのが、名店「カフェ・バッハ」(東京・南千住)の店主、田口 護(まもる)氏とのこと。コーヒー好きの筆者としては、これはぜひ使ってみたい! と思い、さっそく自宅で使ってみることに。
ツインバード
全自動コーヒーメーカー CM-D457B
レジェンドがこだわる「均一な豆の粒度」と「湯温83℃」をいかにして実現するか?
田口氏といえば、“コーヒー界のレジェンド”と称され、日本国内はもちろんのこと、海外にも多くの弟子を輩出する、まさにカリスマ的存在。「田口護の珈琲大全」など、コーヒーについての本も多数執筆しています。そんな田口氏がコーヒーを淹れる際にこだわっている2大ポイントが、「豆の粒度(粒の大きさ)を揃える」ことと「湯温83℃で淹れること」。そのこだわりを、どのように落とし込んだのか……実際に使って確かめていきましょう。
じっくり低速で挽く臼式のミルで豆の粒度を揃える
本機を見て、まず気に入ったのがデザインです。スクエア感のあるスッキリしたフォルム、光沢のないマットな質感がオシャレで、インテリアにもなじみそう。操作パネルも英語と図柄表示のみとシンプル。最初は何を表しているか分かりませんが、数回使えば覚えられます。
田口氏がこだわる「豆の粒度を揃える」を実現するのが、ミル(粉砕機)です。ミルがコーヒー豆を粉砕する方式は、高速回転するプロペラ式と低速の臼式の大きく分けて2種類ありますが、本機では臼式を採用。ゆっくり時間をかけて挽くことで、雑味の原因となる挽きムラを抑え、粒度がそろいやすくなるほか、摩擦熱によってコーヒーの香りが飛んでしまうのを抑えられるそう。
さらに、コーヒー豆の挽き加減が「細挽き」「中挽き」「粗挽き」と3種類から選べるほか、湯温も田口氏が推奨する83℃と、熱めの90℃から選べます。
まずは計量カップで豆を計量
では、いよいよコーヒーを豆から淹れてみましょう。まずは、水タンクに分量の水を入れます。水は、天面にあるフタを外して注ぎますが、開口部が広いのでとにかく入れやすい!
ここからは、コーヒー豆の煎り加減や仕上がりの好みに合わせて、挽き方や湯温を選んでいきます。初めてなので、取扱説明書にある表を目安にしました。今回淹れるのは、深煎りのコーヒー豆2杯分。「深煎り」なので、「細挽き・83℃」でセットしました。
ちなみにコーヒー豆の量は、浅煎りか深煎りかによって、1人ぶんの量が変わってくるので、計量は専用のカップで行います。「深」と書いてある目盛りを見ながら2カップぶん入れるのですが、これが見にくいうえ、コーヒー豆の粒が大きいので、どこがラインか判定しづらく苦労しました。
お湯が6本の筋となって注がれるシャワードリップの様子が楽しい!
あとは、ペーパーフィルターをセットしたドリッパーをガラスサーバーに乗せて本体の上に置き、スタートボタンを押すだけ。豆を挽き始めるのですが、その音質に驚きました。何しろ、わが家で今使っているコーヒーメーカーはプロペラ式のため、ガーー! と工事中のような大きな音を立てて短時間で挽くのですが、これはどちらかというと、ゴリゴリゴリゴリ……と静かに手挽きしているような音がします。
そして挽いた豆が、ドリッパーに降り始めると、フワッと漂ってくるコーヒーアロマの香り。それも脳にビビッと来るような強い芳香で、一気に癒しの世界に引き込まれてしまいます。こんなに香りが違うのは、挽き方がいつもと違うから……? それももちろんあるでしょうが、それだけではないようです。
こうして待つこと約2分30分、やっと抽出が始まるのですが、これがまさにプロのハンドドリップ! お湯が6本の筋となってシャーと注がれ、しばらく時間を置いて蒸らし、またお湯を注ぐ……を繰り返しながら、ゆっくりドリップしていきます。その様子が面白く、思わず見惚れてしまいました。
強い芳香の理由は、ドリッパーと本体の間に隙間があるから
ドリップの様子を眺めながら、「ああ、そういうことか」といまさらながら気づいたことがありました。それは、このコーヒーメーカーの構造。一般的なコーヒーメーカーは、ドリッパーを本体にセットするため、コーヒーがサーバーに落ちてくるまで、その様子が見えません。しかし、本機は、サーバーに乗せたドリッパーを差し込む構造なので、ドリップシャワーが落ちてくる部分の間に隙間を作ることができ、コーヒーが挽けたら高い香りが漂うし、ドリップしている様子を目で楽しむこともできるのです。
肝心の味は……やはり格別! いままでのコーヒーメーカーと比べても全く違うことが判明
さっそく一口飲んでみましたが、期待を裏切らない美味しさに感動! まさに喫茶店でプロが淹れてくれた味、家では決して実現できないと思っていた味です。そして、あらためてドリッパーを見てみると、これまたハンドドリップした後のように、中心が窪んでいます。
でもちょっと待てよ…と思いました。実は飲む前に香りを楽しみすぎて美味しく感じているだけなんじゃないの? そもそもコーヒー豆が良かっただけだったりして…? そこで今度は、同じコーヒー豆を使い、わが家で毎日使っている全自動コーヒーメーカーで淹れてみました。こちらは前述のとおりプロペラ式なので、豆挽き時間はわずか20秒程度。2人ぶんのコーヒーは、2分程度で入ります。そして両方を飲み比べてみたところ…やはり色も味も香りも、全然違う!
ちなみに、本機はミルだけ使えるのも特徴。ドリッパーに挽いた豆を落としたら、あとは自分で湯を注いでハンドドリップもできるのです。こうなったら、コーヒーメーカーに負けずに上手に淹れたいと思い、注いでは蒸らし、注いでは蒸らし、を繰り返して淹れてみましたが、これって結局コーヒーメーカーの動作と同じじゃないか、と気づきました(笑)。
その後、浅煎り、中煎りのコーヒー豆でも、設定を変えながら淹れてみましたが、いずれも高い香りが楽しめ、あらためてコーヒーは淹れ方次第で味が変わるんだなぁ…と実感した次第です。
少量のコーヒー豆の飛び散りはあるが、それ以外のメンテはラク
一方、少々面倒に感じたのは、コーヒー豆の飛び散りです。ミルで豆を挽くと、どうしても静電気が起きて粉が周囲に飛び散りやすくなります。それを抑えるために、静電気を取り除く除電レバーが搭載されているのですが、それでも飛び散りは防げません。またミルから落ちてきたコーヒー粉がドリップシャワーの噴出部にくっついてしまうため、キッチンペーパーで拭き取ると、これまた下に落ちてしまうのです。
とはいえ、それ以外のお手入れはラクで、日常的な洗い物は少ない印象。ミルは取り外せるので、定期的に外して内側に溜まった粉を落とせますし、取り外せない水タンクの汚れやミル固定部の汚れは、メンテナンスモードを使えばお手入れしやすくなります。
美味しいコーヒーを探求したくなる一台
実際に使ってみてわかったのが、やはり“コーヒー界のレジェンド”が太鼓判を押しただけあって、「本当に美味しく、ワクワクするようなコーヒーメーカーだった」ということ。ドリップする様子が見られるので、まさにプロに淹れてもらっているような気分も味わえます。同時に感じたのは、コーヒーの奥深さ。コーヒーを美味しく淹れるのは簡単ではないとわかっていましたが、淹れ方次第でここまで味が変わるとは……。そして、その美味しいコーヒーが、自宅のコーヒーメーカーで淹れられるなんて、本当にすごい! 実売価格4万1950円と高価ですが、その価値は十分にある。「ただコーヒーが飲める」のではなく、「もっともっと美味しいコーヒーを探求したくなる」…そんな好奇心を刺激する一台でした。