バルミューダが韓国のビジネスモデルを変えた!
さて、バルミューダはこの韓国でどのような仕組みでビジネスを展開し、受け入れられることとなったのでしょうか?
バルミューダが進出した当初、韓国市場における空気清浄機の販売形態は、“本体は安くリースしてフィルターで儲ける”システムでした。しかし、バルミューダは当初から、現地代理店として協業するリモテック社とともに日本のような“本体売り切り”方式で展開。それが、美意識が高い韓国人の嗜好に、バルミューダのシンプルなデザインは見事にマッチしたことで、従来のリースでサービスだけを買うのではなく、気に入ったモノを手に入れる、というスタイルが受け入れられたのだといいます。
先述したように、今では日本の10倍(全世界の出荷台数は累計24万台)の販売台数を誇るまでに急成長。この成功を見て、サムスン、LGといった現地メーカーは本体販売ビジネスを取り入れ、さらにダイソンやブルーエアなど他の海外メーカーも参入することに。バルミューダが、韓国の空気清浄機ビジネスに変革をもたらしたわけです。
バルミューダの世界観を伝える店頭展開で韓国ユーザーの心をキャッチ
ではバルミューダの家電は、韓国で実際どのように販売されているのか、現場を確認してみましょう。これまで同社は、韓国ではテレビショッピングとインターネット通販に力を入れており、リアル店舗は現代(ヒュンダイ)グループの百貨店「Hyundai Pangyo dept」とインテリアショップ「THE CASHMERE」の8店舗のみでした。さらに韓国市場での売り上げ拡大を目指して、昨年12月からロッテグループの家電量販店「Hi-mart」の2店舗でも取り扱いをスタート。ハイマートは韓国全土に450以上の店舗を持つチェーン店で、バルミューダでは今後取扱店舗数を増やしていく計画だとか。
“家電ベンチャー”からの飛躍を誓う
バルミューダの2017年度の売上高は89億円。2018年度は100億円を見込んでいます。「2003年創業年度の売上高600万円から15年で1850倍に拡大したことになります。私は小さい頃から母に“一度できたことはもう一度できる”と言われて育ちました。それなら、今後15年でさらに1850倍にできるのではないか。そうなると日本有数の企業になるのではないか。という夢がやまない今日このごろです」と、意気込む寺尾社長。
それには、商品ラインアップと販路の拡充が不可欠。「今年夏頃には、皆さんをアッと驚かせることができる製品を発表できるのでは。その次は秋頃かな。来年にもたくさんの計画がありますよ」と寺尾社長は明かします。近年立て続けにリリースされたキッチン家電シリーズに連なるものか、まったく新しいジャンルへ挑戦するのか……。今から楽しみです。
販路に関しては現在、アジアでは韓国、中国、香港、台湾、欧州はドイツ、オーストリア、スイスがメイン。パン文化である欧米でいずれ「BULMUDA The Toaster(バルミューダ ザ・トースター)」を販売したいと考えているが、欧州の品質規制が厳しいため、まずは北米への取り組みを先行しているそう。「将来的には売上高の6〜7割が海外売り上げになることを目指します」と、寺尾社長は海外展開を積極的に取り組んでいく考えです。
かつて隆盛を極めた日本の家電メーカーが、今では光を失ってしまい、寂しく思っているのは筆者だけではないでしょう。バルミューダの韓国での快進撃は、もう一度、世界で輝く日本メーカーの姿を見られるのでは、そんな期待を抱かせるものでした。
写真/近藤克己、GetNavi web編集部