siroca(シロカ)という新興の家電ブランドをご存じでしょうか。2000年に創業し、現在、急速に知名度を高めているメーカーです。2019年3月にはトークバラエティ「アメトーーク!」の人気企画「家電芸人」で同社の炊飯器「かまどさん電気」が紹介され、高く評価されたのは記憶に新しいところ。
一人暮らしの「鍋おじさん」にぴったりなんじゃないか?
そんな同社が2019年の2月9日に発売したのが「おりょうりケトル ちょいなべ SK-M151」(実売価格1万1880円・以下ちょいなべ)です。
こちらは調理用の鍋としても使える電気ケトルで、インスタントラーメンや鍋料理が卓上でそのまま作れるとか。ちなみに、筆者はひとり用の土鍋を使い、夜な夜な安い食材で鍋をしているいわば「鍋おじさん」です。発表会で見た瞬間、これ、ひとり鍋に便利そうじゃない? と思いました。
おりょうりケトル ちょいなべ SK-M151
第一印象は「コンパクトでデザインがいい」
というわけで、借りてみました。第一印象は、デザインがいいですね。本機はシーズヒーターがある「本体」と「ケトル」、「ふた」で構成されており、すべてがマットなブラックで統一されていて、質感に安っぽさがないです。微妙な曲線を描いたフォルムがかわいらしく、操作部にはレバーがあるだけと、シンプルなのもいい。操作はこのレバーを水平にスライドさせ、温度を選択する仕組みです。電源コードはマグネットプラグなので、誤って足に引っ掛けてもすぐ外れるのが安心。
大きさは…思ったよりもコンパクト。デザインの良さも相まって、小脇に抱えて外出しても違和感がなさそうです。一般的なカセットガスコンロと大きさを比べてみました(下写真)。ああ、もう全然占有面積が違いますね。体感としては、カセットガスコンロの1/4くらいです。
コーヒーカップサイズのお湯が約3分で沸いた
では、いよいよ使ってみましょう。ケトルだけに、お湯を沸かす能力からチェック。水からフタなしでお湯を沸かしてみると、コーヒーカップサイズの150mlが約3分、500mlが約5分で沸騰しました。なお、ガスコンロで沸かした場合は150ml が1分40秒で沸騰。「すぐに沸く」で知られるティファールの電気ケトルはコーヒー1杯分140mlを50秒で沸かす機種もあるので、お湯を沸かす能力は、そんなに速くはないというところ。
基本的に具材をすべて入れてから調理する
さあ、お野菜を用意して、調理していきますよ! 記念すべき1品目は、低価格かつヘルシーこのうえない「野菜と豆腐の寄せ鍋」です。作り方はカンタン、ポーションタイプの鍋の素を使い、野菜や豆腐が煮えたらポン酢でいただくだけ。じゃあ、まずはスープを温めようか…と思ったら、説明書の「使用上のお願い」に気になることが。
「本体にケトルを載せたまま、水や材料を入れない」
「調理中に水や材料を追加しない」
「調理中や調理の直後は移動させない」
どうやらこれを見ると、基本的にすべての材料を入れた状態で加熱しなければならないようです。公式サイトに載っているレシピを見てもそのような感じ。硬いものと柔らかいものを時間差で入れられないのか……。肉や豆腐も硬くならないようにあとで入れたいんだけどな……。調理中に自由に食材が追加できると思っていたので、少々残念です。とはいえ、具材の追加ができないとあまりにも不便なので、今後は自己責任で電源レバーをOFFにしてから適宜具材を追加することにしました。
やや時間はかかったが、食材にはしっかり火が通っていた
気を取り直して、鍋に豆腐を除くすべての具材を入れ、100℃にレバーを設定。水位は1Lの目盛りを指しています。電源を入れてから約7分30秒が経過。ピーという音が鳴って完成! 鍋の様子を見ると、グラグラ沸いているという感じではなく、ポコっ、ポコっと泡が出てくる印象で、じっくり煮えている印象。シロカさんによると、ふきこぼれを防止するため、また具材が煮える前に水分がなくなるのを防ぐために、100℃に設定しても95℃程度で保温に切り替わるそうです。
なお、再加熱するには、いちどレバーをOFFにしてから再度設定すればいいのですが、すぐに保温に切り替わってしまいます。ですから、ビビッドにグラグラ沸かしたい、一気に加熱したい、というときには少々ストレスを感じるかも。
とはいえ、出来上がった鍋を食べてみると、具材はしっかり中まで火が通っていてまったく問題なし。あれ、温度低いのかな? と心配になりますが、けっこうしっかり加熱されているのでご心配なく。とはいえ、7分30秒はまあまあ時間がかかるな……そう思ったとき、あるひらめきが生まれました。…あれ、吹きこぼれがないように加熱・保温してくれるなら、そうか、放っておけばいいんじゃない? …と。
お風呂の前にセット→風呂上りに食べるサイクルを確立
その点に気づいてからは、お風呂に入る前に鍋料理をセットし、お風呂から上がったら食べるというスタイルにしました。これだと、ちょうど風呂上りにいい具合に鍋ができあがるわけなんです。つまり、本機を放っておくだけで出来上がる自動調理器のように使うことにしたわけですね。というわけで、豚バラ肉ともやしの寄せ鍋を基本とし、とある日はキムチ鍋、とある日は粉末の鶏ガラスープとトマト缶でトマト鍋、とある日は鶏つくね鍋といった形で、手を変え品を変え、ほぼ毎日鍋料理を作り続けました。
軽く作りたいなーというときはもやしと豆腐の鍋。今日は作りたくない! という日は、レトルトのおでんを買ってきて温めるだけの日も。たとえレトルトのおでんでも、やはり目の前で温めると気分が違うものですね。あ、あとはいつもの野菜鍋に、コンビニのレジ脇で売っている焼き鳥(つくねやももなど)を串から外して鍋に入れると、いい脂とおいしいおだしが出ておいしいですよ!
スピード重視なら生めんのそば・うどんが便利
なお、インスタントラーメンも調理できるということですが、個人的にはあまりおすすめはできません。というのは、筆者は麺硬め、野菜多めが好きなのですが、この条件に合うラーメンを作るのが難しいから。鍋の余熱で麺がすぐ柔らかくなってしまうという点と、野菜をゆでるとお湯が多くなり過ぎて、一回お湯を捨ててから粉末スープを投入する手間が必要になるのです。鍋には深さがあって、鍋底の隅に麺があると引き上げづらいのも惜しいところ。というというわけで、筆者とは正反対の方=少ない具で作る柔らかめのラーメンが好きな方ならよいでしょう。
一方で、生めんのそばやうどんの調理には便利です。インスタントと違い、加熱が終わった瞬間に食べられるのは大きなメリットですね。
また、本機は油を使った揚げ物、焼き物、炒め物はできません。やはり「ちょいなべ」だけに、本格的に火力をコントロールして調理する料理には向かない印象。その使い方なら、卓上コンロや卓上IHヒーターのほうがいいと感じました。その意味で、本機は「調理鍋」というよりは、「1回加熱の保温鍋」と捉えたほうが、より正確なのかもしれません。
発表会でも押されていたチーズフォンデュに挑戦
…そして、ついに、本機でもっとも我が家に向いていない料理を作る日がやってきました。そう、チーズフォンデュです。発表会でも前面に押し出されていたメニューだけに、避けては通れません。…ところで自分、チーズフォンデュって、いままでやったっけ? 記憶をたぐったのですが…あれは茶色いからチョコレートファウンテンだったし、そういえばないかも……。
では、調理開始。市販のピザ用チーズに片栗粉を混ぜたものを、本機で温めた白ワインに混ぜ合わせていきます。そして、この工程が長い! ドバっと一気にやろうとするとチーズが分離してダマになりますので、決して軽い気持ちでやってはいけません。「チーズフォンデュをなめるな」と言いたいです。
温度管理は「ちょいなべ」まかせでラクラク
というわけで、できました! 実はレシピに「白ワイン」とあったのを、間違えてスパークリングワインを買ってきてしまい、沸騰時にやたらシュワシュワした以外、調理工程には問題なし。頂いてみると、うん、いい意味で予想通りの味。おいしいです。チーズはクセがなく、まろやかで、鍋肌近くのチーズがちょっと焦げた感じもいいですね。合わせる具はブロッコリーやソーセージが鉄板ですが、コンビニで買ったハーブのサラダチキンがバツグンに合いました。
温度管理は「ちょいなべ」まかせで放っておけば固まることもなく、温かさを保ってくれるので、いったん作ってしまえばあとはラクラク。余ったスパークリングワインとともに、おいしくいただきました。ただ、量がかなり多かったので、一人で食べきるのは難しいかも。このレシピに限っては、一人より複数で楽しむのを前提にやるべきです。もし、週1でチーズフォンデュやるんだよ、というパリピの方であれば、本機を専用機として購入してなんら損はないでしょう。
世界の「鍋おじさん」たちに大いに活用してもらいたい
というわけで、シロカのちょいなべ、最初のイメージとは違っていましたが、「時間はかかるが放っておける保温鍋である」という本質を理解したうえで使うと、極めて便利なのがわかりました。とにかく(自己責任ですが)目を離していてもOK、というのがいい。オシャレで卓上で場所も取らないし、火を使わないから安全性も高いです。取っ手つきでケトルは洗いやすいし、注ぎ口がついていて、おだしを注ぎやすいのも地味にうれしいところ。もちろん、休日にチーズフォンデュを楽しむリア充の方にもオススメですが、鍋料理を多用する一人暮らしには、このうえないツールではないでしょうか。ぜひ、本機を世界の「鍋おじさん」たちに、大いに活用してもらいたい。心からそう思えるモデルです。
おりょうりケトル ちょいなべ SK-M151