家電
2019/7/2 18:00

なぜ、家電メーカーがここまで…? 人気沸騰のバルミューダ、操作音の「音作り」から見えてきた「モノづくりの哲学」

空気清浄機の音はシートベルトサインの音から着想を得た

――空気清浄機の「BALMUDA The Pure」の操作音は、航空機の中のシートベルトサインに似た音ですよね。これにはどんなこだわりがあるのですか。

 

髙野 「BALMUDA The Pure」のコンセプトは「空気をきれいにする箱」。空気がきれいになっていく作用感をユーザーに感じてほしかったのです。そのために光をコンセプトにしていますが、では音で何ができるかと考えまして。最初は医療現場の中の音を探したのですが、医療現場の音は緊張を感じる場所なのでちょっとしっくりこなかった。

 

次に清浄感を感じるのはどこかと探したら、空港が思いついたんです。空港や飛行機の中は、多くの人が行き交いながらも落ち着きがあり、清浄感がある。なかでも、シートベルトサインの音は、航空機の中で最も記憶に残りやすい音なので、ここから着想を得ました。「BALMUDA The Pure」には強力に空気を吸い込むジェットモードがあり、内部の整流翼は航空機のジェットエンジンのテクノロジーを参考にしているため、相性が良いというのも一つの理由です。ジェットモードの音は他のモードよりも1オクターブ高い音を使っており、より作用感を強調しています。

 

【動画 BALMUDA The Pureの操作音】
シートベルトサインから着想を得た音が清浄感を醸し出す。ジェットモードの音で、さらに作用感を強調している。

 

納得の音が出るまで何度もトライ&エラーを繰り返した

――「BALMUDA The Pure」の音に関して苦労したところはありますか?

 

岡山 空気清浄機という性質上、スピーカーのための穴を開けてそこからホコリが入るのはふさわしくないので、スピーカーを完全に内部に埋め込み、外部からは全く見えないようしました。そのため、当初は音がこもったり、ファンモーターの回転で音がビビったりと、なかなか思うようなクリアな音が出せませんでした。スピーカーボックスの大きさ、スピーカー筐体内部での配置、スピーカーの固定の方法など何度もトライ&エラーを繰り返したものです。音の調節だけで実働1か月くらいかかっていて、音質自体も7パターン作り、ハードの設計に合わせて組み合わせを何度も試しました。最終的にはプロの音楽プロデューサーに監修してもらい、今の音が出来上がっています。

↑商品設計部機構設計チームの岡山 篤さん。高野さんらクリエイティブ部から上がってきた製品の設計など、技術面から物づくりを行う

 

↑指を差しているところにスピーカーボックスが埋め込まれている。外見からはスピーカーの存在は分からないが、音がこもったり、割れたりしていない

 

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