大量生産できるパーツは機械で完全自動生産
ひとくちに分電盤といっても、住宅によって必要とする機能は異なります。このため、パナソニック スイッチギアシステムズではなんと現在3万6000種類の分電盤を生産しているそう。これだけ種類があると一種類につき多くの在庫は抱えられません。そこで、同社がとっているのが「需要連動生産」という方式。これはあえて少量ずつの在庫を確保し、在庫が出荷された分だけ随時生産するという方式です。しかも、生産オーダーが入ってから完成品となり、在庫が補充されるまでの時間はなんと120分。分電盤という複雑な製品が、これだけ短時間でできるのは驚きです。
短時間で3万6000種類の分電盤を作り分ける秘密は、一貫自動化生産と人の手による組み立てを使い分けているところにあります。分電盤は住宅によってカスタマイズする必要がありますが、分電盤に配置されるブレーカーなどは仕様がほぼ統一されています。そこで、大量に生産できるパーツは機械による完全自動生産が行われているのです。機械による完全自動化によって、主力であるコンパクトブレーカーの生産スピードは一個につきわずか1.1秒!
ブレーカー完成品はすべて「過電流に即時反応できるか」「規定範囲の絶縁耐力があるか」といったテストを受けます。この試験機もすべて自動化。人の手によるうっかりミスがないため、なんと歩留まり(素材の投入量に対し、実際に得られた生産数量の割合)は99.7%! つまり1000個の製品を作って不良品は3個しなか出ない計算です。
組み立てではヒューマンエラーを防ぐ仕組みを採用
さて、完成したブレーカーなどの部品は在庫としてストア(備蓄)されます。工場でストアされる部品は約2000種類。これらの部品の組み合わせにより、3万6000種類の分電盤が作り出される仕組みです。もちろん、これだけの種類があると部品のピック間違いや、組み立て手順の間違いなどのヒューマンエラーも発生しかねません。そこで、パナソニック スイッチギアシステムズでは組み立てる分電盤のデータをコンピュータで管理。作業員はタブレットで指示された部品をピックアップし、バーコードリーダーに通すことで部品のピック間違いを阻止。さらに、組み立て手順などの指示も製品ごとにタブレットでチェックできるようになっています。
分電盤は家庭の安全を守る製品でもあるため、完成後のチェックにも抜かりはありません。組み立てた分電盤はひとつひとつカメラで撮影し、注文した通りの内容で組み立てられているかを機械が自動的に判断してくれます。さらに、ここで撮影したデータは一定期間保存されるので、万が一分電盤を設置したあとに問題が起きた場合はすぐに「組み立てた製品」の写真データを工場側がチェックできるようになっています。
今回の工場見学で、普段あまり気にしたことのない分電盤の重要性がわかりました。しかし、社団法人 日本電機工業会(JEMA)の調査によると、実はこの家庭の安全に不可欠な分電盤の寿命はなんと13年ほどなのだそう。もちろん13年たったからといって、すぐに交換が必要という意味ではありませんが、15年以上大きなリフォームなどをしていない家なら一度チェックしてみるのも良いかもしれません。
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