炊飯器が壊れました。液晶画面には何も映らず、いまどんな状態なのかがまったくわからない。内釜のコーティングも剥がれてきているし、これはもう寿命か。もう炊飯をやめて麺類だけで過ごそうか……。そんな折、ふとパナソニックのIHジャー炊飯器「ライス&クッカー」SR-UNX101(編集部調べ/実売価格4万2900円 税込・以下ライス&クッカー)の存在を思い出しました。別の記事でごはんを試食したことがあり、とても美味しかったのが強く印象に残っていたのです。
サイズもコンパクトだったし、手が届かない値段なわけじゃない。自動調理鍋、電気鍋としても使えるから、ほぼ100%在宅ワークの筆者だけに、自炊に重宝するはず。もしかしたら、私のような一人暮らしにはぴったりのアイテムなんじゃないか? というわけで、お借りしてレビューしてみました。
家で旅館のようなごはんが炊けたことに感謝
キッチンと玄関がシームレスでつながっている、つまり狭小な筆者の自宅において、ここしかない! というキッチン脇の収納棚の上に設置。設置してみると、改めてコンパクトなのがわかります。白一色で天面には目立った突起物もなく、スッキリしたフォルム。質感は光沢のあるエナメル風で安っぽくなく、高級感のある佇まいです。
ちょうど昼時だし、まずは美味しいごはんを炊きたい! 無料でダウンロードできる「キッチンポケット」アプリを立ち上げ「家電登録」から本機を登録し、アプリの案内に沿って自宅の無線LANに接続すれば準備完了です。
さて、どうやって炊くのかな……? なるほど、アプリ上で3つの「お気に入りコース」を作成・登録しておいて本体に送信。本体でコース1~3を選んで炊飯ボタンを押す、というわけか。アプリの「炊飯コースガイド」を見てみると…炊飯コース多いな! とりあえず、お米は「無洗米」、炊き方は「銀シャリ」、食感は「ふつう」を「お気に入りコース1」として本体に送信し、スイッチオン!
待つこと約50分、炊けました! 炊きたてを食べてみると、うう、やっぱりウマイ……。粒がしっかりしていて硬すぎず、やわらかすぎず。べたつきもなく、一粒ずつに薄い粘りの層がコーティングされているかのような絶妙な食感。甘みは控えめながら、噛むごとにお米の自然な風味が鼻から抜けていきます。まるで旅館の朝食で食べるような、洗練されたごはんでした。実家も含め、家でこのレベルは食べたことがありません。
フタを開けてみたら、ガチの炊飯器だった
それにしても、なぜここまでごはんがウマイのか……? 実は本機、パナソニックの独自技術の「おどり炊き(大火力IH)」を搭載しています。これにより底・底側面IHを切り替え、集中加熱することで強力な泡の熱対流を発生させて均一に加熱。ムラなくふっくら炊き上げるとのこと。さらに、最上位モデルにも採用されているダイヤモンド竈(かまど)釜も搭載しています。1台2役かつ価格も手ごろなので、炊飯機能もそれなりなのかな……? と思っていましたが違いました。ガチです。おしゃれな外観にだまされがちですが、フタを開けてみたら(炊飯器だけに)同社の技術を集約したガチの炊飯器だったのです。
なお、パナソニックの公式サイトにある動画では、本機で1週間分のごはんをまとめ炊きして冷凍で保存。ふだんは本機を調理用として使う方法を提案しています。確かに炊飯と調理は同時にできないので、その方法を取るのが賢明でしょう。筆者もこれにならい、コース2に「無洗米」「冷凍用」を登録し(冷凍用は食感は選べません)、多めに炊いて冷凍でストックしておきました。冷凍用の炊きたてを食べたら、ちょっと硬めで甘味も少なめ。しかし後日、冷凍を経て温めると美味しくなっていたのが不思議です。
手作り風料理に心いやされる
本機が到着した日の夜、晩酌用のおつまみを作るべく、調理機能を試してみました。「自動調理」のメニューを見て、やっぱり惹かれてしまうのが「男の胃袋を掴む」で知られる「肉じゃが」です。準備は食材を切って鍋に入れ、調味料を加えるだけ。あとは自動メニューのプログラムを「炊飯器へ送信」ボタンを押して本体に送信し、本体の「炊飯」ボタンを押せば調理スタート。本当にカンタンです。
完成した肉じゃがを食べてみると、うん、これはうまい! 小料理屋で出されてもおかしくないレベル。チューハイとの相性も抜群で、とにかく酒が進みます。ちなみに今回、肉じゃがは4人分で作ったので、余ったぶんはタッパーに入れ、冷蔵庫で保存することに。こうしておけばいつでも食べられるし、味もしみ込むので一石二鳥ですね。
翌日は「鶏肉ときのこのおろし煮」を作り、その翌日の昼食は以下写真のような形に。画面が茶色いのが難点ですが、タッパーに保存しておいた肉じゃがときのこのおろし煮、冷凍ごはんをレンジで温めただけで充実した食卓になりました。この日も例によって在宅ワーク。仕事のプレッシャーで気持ちに余裕はなかったのですが、この昼食を食べたおかげでちょっと心が軽くなりました。手作り(風)の料理って、やっぱりいいですね。お腹にたまるのに、違和感なく身体にしみこんでいく感じ。先ほどまでの不安が減って、「何とかなる」という気持ちになれました。
洋風のおしゃれな料理も失敗せずに完成
このあたりで趣向を変えて、洋風のおしゃれな料理にも挑戦してみました。「牛肉とかぶのトマト煮込み」。一人暮らしだと、かぶなんてほぼ使わないのですが、たまに食べるといいですね。みずみずしく、きめ細かなかぶの身にトマトと牛肉の旨みがしみこんで美味しい! 本品をトマトソースに見立てて、とろとろの炒り卵に添えてみたら、こちらも完璧にマッチしました。
なお、こんな赤いどろどろした料理を調理して、お手入れは大変じゃない? と思われる方もいるかと存じますが、お手入れはカンタンでした。洗うのはふたの内側にあるふた加熱板と内鍋(ごはんの場合はしゃもじ)だけ。気になるときは水を入れて加熱し、汚れやニオイを取る「お手入れ機能」もあります。しかも、鍋の周囲は凹凸がなくフラットなので、サッとひとふきすれば汚れは一瞬で落ちます。さらに鍋の内側は先述の「ダイヤモンドハードコート」仕様なので、そもそもごはんはくっつかず、調理の汚れもスルリと落ちます。
食のセレクトショップ監修のメニューでハーブを学ぶ
ライス&クッカーは自動調理メニューの調理レシピがどんどん追加配信され、調理できるアプリが増えていくのも魅力です。追加メニューのなかでも注目は、食のセレクトショップ 「DEAN & DELUCA」(ディーンアンドデルーカ)監修のメニュー。「牛肉のエストファド」「さばのトマト味噌煮込み」「アボカドのライムスープ」などなど、アプリでひねりの効いたメニューを見かけたら、たいていこの 「DEAN & DELUCA」監修のメニューです。筆者は同店との接点がほぼないので、これを機に雰囲気を感じてみたい。でも常備していない材料を大量に使うのはやだな、というわけでハーブだけ買い足せば作れる「豚肉とじゃがいものハーブ蒸し」をチョイス。豚バラ肉とじゃがいもの薄切りを層にして加熱し、ドライオレガノやローズマリーで香りづけをする料理です。
完成品を食べてみると、これもウマイ! 豚肉のうまみがしっとりとしたじゃがいもにしみこんで、ほどよい酸味とオレガノの香りが食欲を刺激します。チューハイとも合いましたが、料理酒としても使用した白ワインと合わせてみたら、相性は抜群でした。しかし、オレガノというハーブはあまり使ったことがないですが、食べてみるとなじみのある香りなのがわかります。ライス&クッカーのメニューを通して様々な食材と出合い、自分のものにする過程もなかなか面白いですね。
ポトフが「通っちゃうレベル」の味だった
さて、そろそろトリとなるメニューを作ろうか。アプリでメニューを選んでいると、筆者の大好きなフランスの煮込み料理「ポトフ」を見つけました。えっ、じゃがいもは2等分となってるけど、デカすぎない? 火が通るのか? 作る段になり、鍋に材料を入れたときは不安で仕方なかったですが、完成したポトフを食べて納得。全ての食材が柔らかいのに、それぞれの食材の風味がしっかりと引き出されている! 芯までほくほくのじゃがいも、くたくたなのにどこか香ばしい野菜、ほろほろの鶏肉、全てが絶品で、お店で出されたら通っちゃうレベルじゃないか……? と思うほど。これなら寒い季節はもちろん、冷房に冷えた身体にもしみいるはず。
4人前で作ったのですが、気づいたら2人前くらいを夢中で食べていました。…しかし、筆者もポトフを作った経験はあるのですが、鍋をコンロにかけて調理しても、こんなにウマくはならない。ほかの料理もそうですが、ライス&クッカーで調理すると、どうしてこんなにもウマくなるのでしょう? ダイヤモンド竈(かまど)釜の効果か? 密閉して専用のプログラムで炊いているからか……? いずれにせよ、放っておいてこれだけの味が出せるなら、絶対こっちのほうがいいですよね。
そして記事を書いているいま、このポトフのさらなる可能性にも気づいてしまいました。もしもこの絶品ポトフに、カレーのルーを加えたらどうなるのか……。ああ、想像しただけでも恐ろしいッ! 通常メニューのカレーと同様、ルーを溶かして5分置けば完成するはず。よし、次回は絶対にやってみようと心に決めました。
炊きたてごはん+保存したおかずというパターンもオススメ
複数のおかずを作って保存するうちに、通常の「冷凍ごはん+作り立ての料理」という組み合わせの逆パターンもアリだと気づきました。すなわち、「保存したおかず+炊きたてごはん」という方式です。この利点は何といっても、ライス&クッカーの絶品ごはんを炊きたてで食べられる点。例えば筆者は作り置きのポトフを温めて主菜とし、炊きたてのごはんを味わいました。この粒立ちと上品な味わい……改めて幸せを感じます。
もうひとつ、筆者の場合、炊きたてごはんは卵かけごはんで食べるのも楽しみ。特に、粒立ちのよいごはんで食べると最高です!
ライス&クッカーで一人暮らしの食生活が大きく変わった
ライス&クッカーを使ってみて、自分の食生活が大きく変わったと感じました。いつも、昼食はインスタントラーメンだったのに、美味しいごはんと手作り風のおかずが並ぶ食卓に変わりました。ほぼみそ汁を用意するだけで豪華な定食が完成すると思えば、調理のハードルが一気に下がります。それに、この食卓を前にすると、ありがたいなぁ、しっかり生きているなぁ……と、感謝と誇りが持てるというか。
さらに、一人暮らしといえば晩酌が最大の楽しみですが、ここで本機で作った、あるいは保存しておいたメニューがおつまみとして使えるのが大きい。ライス&クッカーが来てくれたおかげで、「今日の肉じゃがに合わせて、どんな日本酒を選ぼうか」とか、「ああ、今日の夜のおつまみがない…あっ、昨日作ったアレが残っていた!」 ……と、こんな感じで晩酌の満足度がとんでもなく上がるのです。
とにかく美味しいごはんが炊けるだけでも価値があるというのに、ごはんのお供とおつまみ作りにも大活躍。コンパクトでおしゃれなので、一人暮らしの限られたスペースにもぴったりです。新たな自動メニューや新たな炊飯コースもどんどん追加されていくし、工夫しだいで自動メニューのアレンジもできそう。今回は試しませんでしたが、鶏ハムなど手動メニューでも様々な料理が作れるはず。強いて難点を挙げるとすれば、料理とごはんが美味しくて太るのが心配、ということぐらいか……?
さあ、炊飯器が壊れた自分よ、買うのか? 買わないのか……? その答えは……ご想像にお任せします。筆者の場合、レビューした後に製品を自腹で購入することも多いのですが、今回は「かなりヤバイ」とだけ言っておきましょう!
ちなみに、「ライス&クッカー」は欲しい機能を後から追加できるIoT対応「マイスペック」シリーズのひとつ。同シリーズからは、IoT対応オーブンレンジ「ビストロ」NE-UBS5A(編集部調べ/実売価格6万9300円・税込)も発売されています。こちらはレンジとオーブンの基本機能を搭載しながら、 「キッチンポケット」アプリと別売アタッチメントで、 後から自分仕様に機能をアップデートできるとのこと。こちらも機会があればぜひ使ってみたいですね。