観測史上初めて、都心で6月に2日連続の猛暑日を記録するなど、夏の暑さはエスカレート。気象庁の発表によれば2022年の夏も、北日本から沖縄・奄美まで日本全国的に平均気温より高い見込みだそう。そんな暑い夏に立ち向かうには、高性能のエアコンが欠かせません。ところが、電機メーカー各社が発売するエアコンは年々多機能になっており、選ぶのが難しくなっているのが現実。そんな中、コロナ禍の影響でいま“換気機能付きエアコン”が注目されているのです。
新型コロナウイルス感染症の蔓延を機に、対応するメーカーも増加傾向。消費者も急速に「換気」を重要視するようになっています。そこで今回は、エアコンの基本的な仕組みとともに、換気機能付きエアコンについて、家電ライターのコヤマタカヒロさんに解説していただきました。
知っておきたい、エアコンの基本の仕組みとは?
私たちの生活にとって、なくてはならないものとなったエアコン。エアコンとはそもそも、どのような仕組みで動いているのでしょうか?
「エアコンは、室内機と室外機がセットになっており、このふたつがパイプでつながっています。室内機の中にも室外機の中にも“熱交換器”があり、冷房の場合、室外機で冷やされた“冷媒”=ガスが室内機に送られ、熱交換器を冷やします。そこを室内機のファンが取り込んだ室内の空気が通ることで冷たい風が出てくる仕組みです。室外機には熱くなった冷媒が戻され、大きなファンで熱風を放出して再び冷やされるというわけです。
つまりエアコンは外の空気を取り込んだりするわけではなく、部屋にある空気を冷たくしたり、温かくしたりしているのです」(家電ライター・コヤマタカヒロさん、以下同)
さらに「部屋の中の空気を常に循環させているということは、フレッシュな空気が循環するわけではないため部屋の中の二酸化酸素濃度が高まっていくということ。部屋の二酸化酸素濃度については、新型コロナウイルス感染症の影響で話題になりましたが、少し前まではエアコンの換気ができるかどうかについては重視されることはありませんでした」
そこへ、新型コロナウイルス感染症が蔓延しはじめ、部屋の中の二酸化酸素濃度が高まるとリスクが増えることが話題になり、換気機能への消費者のニーズが高まったというわけです。
換気機能付きエアコンの始まりと、イチオシモデル
もちろん換気機能は、どのエアコンにもついているわけではありません。新型コロナウイルス蔓延を機に、この機能に注目が高まりましたが、そもそもいつから販売されていたのでしょうか?
「これまでも、換気機能付きエアコンを販売していたメーカーはありました。僕の記憶だと、シャープのエアコンでは換気機能付きエアコンは10年以上前から販売されていました(※1996年に冷房・暖房・除湿・加湿・換気のついた『5空』エアコンがシャープから販売)。現在では、ダイキンはもちろん、ハイセンスやパナソニックなども換気機能付きエアコンを発表しています。ダイキンに加えて、パナソニックも、換気しながら加湿も除湿もする商品を昨年発売し、話題となりました」
新型コロナウイルス蔓延を機に、換気機能付きエアコンに各社が力を入れ始めています。今年注目の換気機能つきエアコンのなかから、コヤマさんにおすすめのモデルを教えていただきました。
・AIが人の存在を感知する
パナソニック「Eolia LXシリーズ」
オープン価格 / パナソニック
「どの性能を重視するかはもちろん好みによって選び方はもちろん変わりますが、私は風が直接当たることがとても苦手なので、できる限り風が当たらないものを選びます。そういう意味では、パナソニックのエオリアがおすすめです。換気機能はもちろんですが、AIが人の存在を感知し、風を直接当てないなど部屋で過ごすときの快適さを追求した商品です」
ナノイーXも搭載しており、カビや花粉、PM2.5など空気中のさまざまな有害物質を抑制し、空気を清潔に保てるのも魅力。家庭用エアコンのシェア首位を走ってきたパナソニックの誇るべきモデルです。
・給水なしで加湿ができる
ダイキン「うるさらX」
オープン価格 / ダイキン工業
「もう1台はダイキンの『うるさら』という商品です。家庭用エアコンでトップシェアを誇るメーカーであり、信頼性も高いです。換気機能はもちろん搭載、『うるさら』という名前が表す通り、加湿と除湿もできるモデルです。
除湿はほとんどのエアコンについている機能ですが、除湿量も季節や暮らしに応じて制御ができる業界初の除湿制御つき。また、もうひとつの特徴は給水なしで加湿ができること。外から取り込んだ空気中から水分のみを取り出して、加湿に利用する仕組みです。ちなみに換気機能はないのですが、ダイキンの『スゴ暖』シリーズは、寒冷地モデルも充実。昔はエアコンが必要なかった地域も、今は気温変化の影響などでエアコンを利用する人が増えています。除湿機能、空気清浄機能などはついており、注目しています」
・お手頃プライスで機能充分
ハイセンス「Gシリーズ」
オープン価格 / ハイセンスジャパン
「価格を少し抑えつつも換気機能がついたものを希望するという場合は、ハイセンスのGシリーズもおすすめです。Wi-Fiや熱交換器の解凍洗浄機能など機能も充分。ぜひ検討してみてください」
換気機能つきエアコンはまだまだラインナップは限られています。しかし、換気機能がなくとも、デザインが優れていたり、人感センサーにこだわっていたりなど、エアコンの機能は年々さまざまになっています。ぜひ自分の好みやニーズに合わせて選びたいですね。
今後のエアコンの進化の行方と選び方は?
基本の冷暖房機能のほか、換気機能をはじめ多機能を極めてきたエアコンですが、今後はどんな進化を遂げるのか、コヤマさんに聞いてみました。
「どんどん“空気の質を高めよう”という動きになるのではと見ています。これまでのエアコンは温度管理がメイン。ですので、加湿や除湿するには加湿器や除湿器、空気清浄するには空気清浄機も併用するなどが必要でした。しかし、今後はエアコン1台ですべてができる、オールインワンがどんどん増えていくと思っています」
ですが、多機能すぎると選び方も複雑になり難しくなってくることも考えられます。そういった場合、どのような点に注目して選べばいいのでしょうか?
「どこの部屋で使うかによっても選び方は変わります。例えば、リビングは最上位のエアコンにするけど、寝室はそこまで多機能じゃなくてもいいなどの考え方もあります。また、冷房は基本的にはエアコンでしか機能がカバーできませんが、暖房はストーブやヒーターなど代用できるものがいくつもあります。ですので、ほかの暖房器具を使うからエアコンの暖房機能は使わない、という場合は、冷房機能だけがついた一番安価なものでもいいなど、自分のニーズを理解したうえでセレクトしてみてください」
猛暑下、エアコンの賢い使い方は?
電気代の上昇が著しい昨今ですが、夏はエアコンが必須です。だからこそ、できるだけ効率のいい使い方をしたいですよね。最後に、コヤマさんはどのようにエアコンを使っているのか、その秘訣を教えていただきました。
「エアコンで電気代がもっともかかるのは温度を上げ下げするとき。ですので、決して瞬間的なハイパワーでエアコンを使わないことがキーです。例えば室温25度をキープしたいと思ったら、短時間のお出かけ時にはエアコンを切らないほうがいいのです。一度止めて室温が30度まで上がってしまうと、また25度に下げるエネルギーが必要になるからです。つまり、電気代がもったいないから暑くてたまらなくなるギリギリまで我慢しよう、というのはNG。日中気温が上がることがわかっているのであれば、朝方の涼しい時間からつけて、室温を一定にキープしておくといいでしょう。
また、空気が動いていると涼しさを感じやすいので、エアコンと同時に扇風機やサーキュレーターなどで空気を回すと、設定温度以上に体感温度は涼しくなりますのでおすすめです」
エアコンの仕組みを正しく理解してうまく使いながら、自分にあったエアコンをゲットして猛暑の夏も健康に過ごしましょう。
【プロフィール】
家電ライター / コヤマタカヒロ
1973年生まれのデジタル&家電ライター。大学在学中にファッション誌でライターデビュー。その後、25年以上デジタルガジェット、白物家電を専門分野として執筆活動を展開。家電の情報サイト「カデスタ」も運営。調理家電のテストと撮影のための空間「コヤマキッチン」を用意。執筆以外に企業のコンサルティングやアドバイザーなども務める。