パナソニックは、全館空調を導入した住宅向けの天井埋め込み型加湿ユニット・AQUA Sitter(以下、アクアシッター)を2024年3月1日から発売すると発表しました。全館空調の弱点である冬場の乾燥に対し、部屋ごとに加湿器を置かずとも、一括で対応できる機器です。
家全体の空気を一括して加湿
全館空調とは、各部屋にエアコンを設置せず、ひとつの空調ユニットによって、建物内全体の空調を行うこと。高気密・高断熱住宅が普及する現代では、住宅に全館空調を導入するメリットが増しています。全館空調を導入する新築住宅はまだ全体の数%ですが、その市場は近年、前年比5〜10%の割合で成長してきています。
全館空調の最大のメリットは、家中の温度を均一にし、すべての部屋に快適な温度環境を提供できる点です。加えて、エアコンの稼働率が高い家の場合、省エネ性にも秀でています。パナソニックの調査によれば、75平米・3LDKのマンションにおいて、全館空調を稼働させた場合と個室のエアコンを全て稼働させた場合とでは、前者のほうが1年を通して20%もの消費電力を抑えられるといいます。
そんな全館空調の難点として挙げられるのが、冬場の乾燥。全館空調は家全体に温風を送るため、すべての部屋の空気が乾燥してしまうのです。各部屋に加湿器を設置すればいい話ではありますが、水の補給やフィルターの掃除などが面倒。どうせなら加湿も全館空調でできたらいいのに…。そんなニーズに応えたのが、今回発表されたアクアシッターです。
アクアシッターは、天井の配管内に埋め込む加湿ユニットです。その内部は、水道水を蓄えるタンクと、高速回転するブレード、空気を送るファンによって構成されています。本ユニットは、タンクの水を回転するブレードの遠心力で外側に吹き出し、壁にぶつけて破砕、水の表面積を増やして気化させやすくする「遠心破砕加湿方式」によって空気を加湿します。
一般的な気化式の加湿器では、フィルターが吸い上げた水に風を当てて気化させる仕組みが使われています。しかしアクアシッターは、水滴を細かく破砕してから風を当てるので、水をより効率的に気化させることができます。
また、アクアシッターの内部には湿度センサーが備えられています。このセンサーが湿度を常に監視しながら運転することで、加湿不足や過度な加湿を防ぎます。洗濯物を部屋干しした場合など、部屋の湿度が上がった場合は控えめに運転。逆に、暖房によって空気が乾燥した場合は、パワフルに加湿します。
お手入れが簡単で、ランニングコストも安い
アクアシッターは、お手入れも簡単です。ユニットが水道と繋がっているため、給排水は自動で行われるうえ、フィルターの清掃も不要です。加湿ユニットが活躍する冬場はもちろん、使用しない夏場でも、新鮮な水で内部を洗い乾燥させる自動清掃が行われるため、清潔性が保たれています。必要なお手入れは、吸気口のフィルター掃除のみで、これも1ヶ月に1回程度ですみます。
省エネ性が高いのもポイントです。アクアシッターを3LDKの住宅に導入した場合、4台の気化式加湿器を運転した場合に比べて、消費電力は32%少なくなります。24時間連続運転でも、電気代は年間4423円、水道代は757円と経済的です。
アクアシッター導入は全館空調が前提。その他の条件も
ただし、アクアシッターを導入できる条件は限られています。まず大前提となるのが、全館空調を導入していること。既築の住宅に全館空調を導入するのは難しいので、新築であることもほぼ必須の条件になります。
加えて、換気で外に逃されてしまう湿度を室内に戻すための全熱交換器の設置、家の気密・断熱性能が一定以上あることも必要です。気密・断熱性能については、ZEH(ネット ゼロ エネルギー ハウス:エネルギーの消費量を実質ゼロにした住宅)レベルと同等のものが求められます。
導入できるケースは限られるアクアシッター。しかし、新築で全館空調の住宅を建てようとしている方にとっては、有効な選択肢になることは間違いありません。工事費別ながら、税別価格は25万8000円と、全館空調ユニットと比べれば安いのも魅力です。これからの住宅向け全館空調は、加湿ユニットがセットになるのが当たり前になるかもしれません。