元日に発生した能登半島地震を始めとして、台風、豪雨、洪水など、次々と災害が発生した2024年。いつ起こるかわからないからこそ、普段からの備えがもう待ったなしで必要な状況だ。
命と暮らしを守るために知っておきたい知識と備えておきたいアイテムを、防災収納インストラクターで防災共育管理士、防災士の松永りえさんが紹介する。
防災の備えに対する意識はまだまだ低い
何をどれだけやれば十分と感じられるのかは人によって様々なので一概には言えないが“備えていない”と回答している人が4割もいるというのはちょっと問題かも。転ばぬ先の杖、備えはできるだけしたいものだ。
地震や台風、大雨も!日本は災害の危機だらけ
南海トラフ地震や首都直下型地震の発生危険度が増している。ただ、いつ起こるかわからないからこそ、普段からの備えが必要不可欠だ。最近は地球温暖化の影響によって、台風や豪雨による洪水での浸水被害も毎年起こるようになってきているのが実状である。
「50年に一度とも言われる大雨による被害が毎年発生している状況ですし、特に夏季はゲリラ豪雨もほぼ毎日どこかで起こっている状態。これからの日本では、私たちが自然災害に対してうまく対策して暮らしていくしかない時代と言えます」(松永さん)
今後、災害は増えることはあっても減ることはない現在、災害とともに生きていく覚悟が必要だ。
「いつ起こるかがわからないのが災害の怖さ。早めに知識を備え、モノを準備して安心を手に入れるのがベストです!」(松永さん)
<2024年に日本を襲った災害>
1月:能登半島地震
1月1日、16時10分に発生したM7.6(最大震度7)の内陸地殻内地震。地震発生日が元日だったこともあり、帰省や観光客など、普段はそこにいない人も多く、一時は避難所が十分に機能できない、混乱した状況に陥った。7月・8月:日本各地で記録的豪雨
中国・東北地方はもちろん、全国的にゲリラ雷雨が増加。太平洋沿岸から日本海側にかけての広範囲の線状降水帯の発生、動きの遅い台風10号による九州〜関東の大雨など、日本各地が記録的な大雨の脅威に晒された。8月:宮崎県日向灘でM6.1の地震発生
8月8日、日向灘で発生したM6.1(宮崎県日南市で最大震度6弱を記録)の地震。南海トラフ巨大地震との関連から、その運用以来初めての“南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)”が発表され注意喚起が促された。
備えるモノがわからなければ、防災セットから始めてみる
災害時は、命を守るのが最優先。自宅内の安全対策をして避難するための備えを。地震の際は家の中で被災することが多いので、棚は倒れないか、家電は移動しないか、落ちて割れるものはないかなど、室内をチェックして安全対策するところからスタートしよう。
「もし自宅が危険な状態にある場合は『防災リュック』を背負って避難します。備えるモノがわからなければ、避難時に必要なモノが揃っているセットも数多くあるので、まずはここから始めるのも良い方法。定期的に中身をチェックすることが大切です。どのルートで避難するかもシミュレーションしておいてください」(松永さん)
アイリスオーヤマ 防災リュック NBS1-40 1人用 40点
実売価格:1万4500円前後
雨天でも安心のターポリン生地+止水ファスナー採用大容量リュックの中に防災マニュアルから保存食(一日二食3日分)まで計40点をパッキング。厳選された防災アイテムが満遍なく揃っている。質量約6.2㎏。
LA・PITA 防災セット SHELTERプレミアム 2人用
実売価格:2万900円
大きさを感じさせないスッキリしたフォルムの大容量リュックに、必要十分な防災アイテムを詰め込んだコストパフォーマンスに優れたセット。アイテム毎に収納できるポーチが付属するので、リュックの中をスマートに整理できる。セット質量約8.5㎏。
<防災セットを備える際のポイント>
自分が必要なモノが揃っているかチェック
過去の経験を踏まえたうえで吟味厳選されたアイテムがパッキングされているが、必ず中身はチェックしよう。不足やお気に入りがあるのならカスタマイズも必要となる。避難場所まで背負って行ける重さかシミュレーションする
一般的に男性なら15㎏、女性なら10㎏までがスムーズに背負って歩けるとされる限界。災害時は身軽さも大きな武器、詰め込めば良いわけではない。バランスには気を付けたい。避難時に取り出しやすい場所に保管しておく
玄関近くなど、持ち出しやすい場所に置いておくのが基本。ただ災害時は玄関から出られるとは限らないので、別に避難用出口を決めておいて、そこに保管しておくのも良い。
幸いにも家は無事!「在宅避難」で気をつけること
安全が確保できるのであれば自宅で在宅避難したい、という人が増えている。2023年に積水ハウスが行った「防災に関する調査」によれば、在宅避難を希望する人の割合は84.8%にものぼる。
「様々な人が集まる避難所と違って、プライバシーが確保できますし、住み慣れた安心感があります。自宅の備えもそのまま使えます。在宅避難者が増えれば、避難所など本当に支援が必要な人に支援物資が届きやすくなる効果もあります」(松永さん)
自宅で過ごせるとしても、電気や水道、ガスといったライフラインの寸断は避けられない場合も。そのために多めの備蓄をしておくことが必須となる。
「飲用水や食料などは最低でも1週間以上ぶんを確保しておくことが必要。そのためには普段食べているものを多めに備えながら、食べる→買い足すを繰り返す『ローリングストック』が有効です。常に備蓄を切らさないようにすることが重要になります」(松永さん)
在宅避難で気を付けたいポイント
1 在宅避難ができるよう、普段から家具や家電などの安全対策を行う
在宅避難を考えるならば、まずは家屋の安全性を確かめることが基本。そのうえで自宅内の被害を最小限に抑えるよう、家具の転倒や割れ物の飛散、家電製品の移動を防ぐなど、普段から対策をしておくことが必要だ。
2 ライフライン(電気・ガス・水道)の代替品・備蓄は最低1週間ぶん確保
復旧にどれだけ時間が掛かるのかは地域や状況によって大きく差が出るので、最低一週間ぶんを目安に考えたい。ポータブル電源やソーラーパネル、カセットコンロ、水のペットボトルなど、収納スペースも確保しておきたい。
3 マンション高層階の人は、より多くの備蓄が必要
いわゆるタワマンでなくとも高層階に住んでいるならば、エレベーターが使えなくなることを想定する必要がある。物流が復旧するまでは自力で高層階まで物資を運ばなければならなくなるかもしれない。そんな事態に備えて備蓄には余裕を。
ポイントはまだある!
自宅周辺のリスクを知って家では安全なスペースを作る
まずは自宅周辺のハザードマップで、リスクを知ることが必要。
「川の氾濫での浸水や津波のリスクがある場合は避難しなければなりません。知らないと正しい対策はできません」(松永さん)
そのうえで、家の中の備え(片付けや安全対策、備蓄)を進めることが重要になる。
「特に寝ている場所に倒れたり、落ちてくるモノがあると命に関わるのでいますぐ見直して欲しいです。1995年に発生した阪神淡路大震災では、死因のほとんどが家屋の倒壊や家具の転倒による圧迫死、さらに死亡推定時刻が当日の午前6時までになっており(地震発生は午前5時46分)、ほぼ即死だったと言えます。このような事態を避けるためには、家の中に何も倒れない・落ちてこないような『安全スペース』を作っておくことが必要です」(松永さん)
松永さんが挙げるポイント
1 自宅や職場周辺のハザードマップは必ずチェック!
国土交通省や、各自治体が公開しているハザードマップで、自宅周辺で危険とされている地域はどこなのかを必ず確認しておきたい。またマップには避難場所も記載されているので、把握しておくことが必要だ。
2 ベッドまわりは要注意!
寝室を見渡してみて、倒れてきたら潰されそうなモノ、落ちてきたら怪我をしそうなモノは対策しておく必要がある。就寝中はどんな人でも必ず無防備になる。だからこそリスクはできる限り排除しておきたい。
3 家の中に「安全スペース」を作っておく
倒れたり落ちてきたりするものがない、窓から離れられる、地震が発生したら、ひとまずやり過ごせる、安全なスペースを家の中に持っておこう。防災備蓄品もその場所にあれば本格的な避難にも迅速に対応できる。
防災収納 インストラクター:松永りえさん
防災共育管理士、防災士。思考・モノ・防災の3つを整理して、暮らしの土台をつくる整理収納コンサルタントを務めている。
※「GetNavi」2024月11号に掲載された記事を再編集したものです