「足立 紳 後ろ向きで進む」第55回
結婚22年。妻には殴られ罵られ、2人の子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々──それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!
『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本も担当。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。
今月も、足立監督が『それでも俺は、妻としたい』の撮影で多忙につき、妻が代打ちです。
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10月1日(火・都民の日)
撮休。学校が休みのため、娘は朝から友達とカラオケ。息子は午後から保育園友達と遊ぶとのこと。2人とも外出するならばと、昼に夫と『SUPER HAPPY FOREVER』(監督:五十嵐耕平)鑑賞。別府の映画で主演をしていただいた佐野弘樹さんが主演で、素晴らしかった。何か祈りみたいなものを感じた映画だった。仕事が残っていたため鑑賞後はすぐに帰りたかったが、「腹減った腹減った」と夫がうるさいので、新宿・思い出横丁の「岐阜屋」で木耳玉子炒めや餃子で一杯。夫とカメラワークについて話すも、2人とも馬鹿な感想しか出ないので笑ってしまう。
帰宅すると息子と友達が家で仲良く爆音YouTube鑑賞中。リモコンを置いて出てしまったことを軽く後悔。息子はリモコンがあると家から出ないので、友達を無理矢理家に連れ込んだのだろう……。
16時半からレンタル先生(今まで塾の先生にレンタル先生を頼んでいたのだが、息子に緊張感が一切出ないので新しく大学生の先生を頼む)。受験する学校の過去問対策。国語の問題で150文字の意見を書く欄があるが、息子は字を書かず、口頭で意見を沢山述べていた。大学生のお兄ちゃん先生が何度も「そうそう!」と褒めてくれるのがうれしい様子で、結構進んだようだ。
夜は鶏肉タッカルビと大根の煮物。
10月2日(水)
『それでも俺は、妻としたい』撮影11日目。朝一で練馬のBARで撮影。近所なので見学に行く。その後公園に移動。大変蒸し暑くて体力消耗。その後、我が家に移動して室内撮影。撮影に見学に来てくださった脚本家/監督のホン・ソネさんと色々話せて私は楽しかったが、ホンさんは疲れたかも……。
10月3日(木)
撮休だが、ロケハン&諸準備のため夫は朝から外出。子どもたちも無事学校へ。ならばと、朝からポレポレ東中野で『荒野に希望の灯をともす』(監督:谷津賢二)、『あなたのおみとり』(監督:村上浩康)を鑑賞。急いで帰宅し、息子と娘に夕食作り。夫が夕方に帰ることが判明したため、子どものケアを頼み、小雨の降るなか、再度自転車で東中野に戻り『あみこ』(監督:山中陽子)鑑賞。行ける日に行かないと映画が全く観られないが、今日はエネルギー感じる3作品を鑑賞できて幸せだった。
10月4日(金)
息子、最近の寒暖差で風邪をひき、咳が止まらないので早退して病院へ。薬は頑なに飲まないのだが、咳を止めないと撮影現場で子役の鉄太君と会えないので「薬を飲む!」とのこと。病院の待合は満席で、皆ゲホゲホしているなか1時間待っていたら私も具合が悪くなる。気管支を拡張するテープと咳止めの薬をいただき、お薬を上手く飲めるゼリーを購入。夕飯後に息子は薬に挑戦したが、どんなに細かく砕いてアイス、ゼリーなどに混ぜても必ず吐き出してしまう。薬に関しては恐ろしいまでの味覚。難しい。気管支拡張テープだけ貼って早めに寝かせた。
10月5日(土)
撮休だがロケハンがあるため、夫は朝から外出。娘、本日だるいので学校休むとのこと。
息子と受験する学校の入試説明会。行き渋っていたが、帰りに途中の駅にある藤子・F・不二雄ミュージアムに寄る約束をしてどうにか連れ出す。無事説明会を終え、ダッシュで16時に入館。藤子・F・不二雄が大好きな息子はかなり興奮。閉館時間の18時までたっぷり満喫。お土産屋さんで分厚い愛蔵版を購入。今度この学校の説明会来たら、ここに寄ろうと約束する。
帰りにスーパーでお刺身やお肉を買って、20時帰宅。バイト帰りの娘と共に、遅い夕飯。
10月6日(日)
撮影12日目。息子、撮影を覗きに行きたがったが、咳が治まらない。狭い家の中の撮影なので自粛させる。咳以外は元気なので、引きこもっている娘と息子と共に家で『シャイニング』(監督:スタンリー・キューブリック)鑑賞。2回目の鑑賞だが相変わらずすごい映画。息子、興奮。
息子は観終わるとすぐに『シャイニング』の40年後を描いた『ドクター・スリープ』(監督:マイク・フラナガン)を観たいと言う。ただ、私と娘がシャイニング疲れをしてもう観られないので、今度観るという約束をする(1人では観られないようだ)。
10月7日(月)
撮休。夫、諸々準備のため外出。娘、「学校行きたくないーーでも行くんだよ、私すごいでしょ!! 褒めてよ!!」と叫んで家を出る。褒める。
午前中『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(監督:アレックス・ガーランド)鑑賞。ジェシー・プレモンス、キレてたな。映画を観終えると税理士さんから不在着信あり。折り返すと、滞っている帳簿入力の催促。そろそろ言われることはわかっていた。ずっと放っておいたが、もうやらねばならない。自宅に戻り粛々と経理作業。
10月8日(火)
撮影13日目。本日は千葉方面で人数多めの撮影とのこと。夫は時間が足りないことをしきりに気にしていたが無事何事もなく撮れますように。
朝からパソコンを持ってロケ地になっている自宅にて黙々と事務作業(猫が寂しがるため、撮影がない日は自宅で作業をしている。15年以上飼っていても全然なつかなかった猫が、最近は必ず膝に乗ってくる、よっぽど寂しいのかしら)。
お昼休憩の時に、先日ホンさんにお勧めされた『RAW〜少女のめざめ〜』(監督:ジュリア・デュクルノー)鑑賞。これが長編デビュー作なの!? と興奮。『TITAN』も観直そうと思う。興奮さめやらずだが、午後も粛々と事務作業。
夕方から大学生お兄ちゃんのレンタル先生。今日も「そうそう! そうそう!」と褒められて、楽しそうな息子。夕飯時、娘が学校での友人関係のもめごとを唐突に話し始める。限定的な高校の友人関係もなかなか大変だったよな、と聞きながら思う。意見を言うとものすごいキレ味を出すので、ひたすら傾聴。
10月9日(水)
撮休だが夫は諸準備。もはや撮休ではない。
私は息子を月に1回の療育へ。先生とソーシャルスキルトレーニングをしているはずが、廊下には息子が先生に一方的に「バイオハザード」の攻略法を話している声しか聞こえなかった。その中でも先生がちょいちょいメンタルな質問を投げかけているらしく、それに息子は答えているようなので、行かないより行ったほうがいいか、という感じ。
夕方16時半、駅の改札で今回のドラマのプロデューサーの息子さんK君と合流。プロデューサーのGさんはこのままポスター撮りに立ち合い。私と息子とK君は家でお留守番。4歳年下のK君と息子がキャッキャッとゲームをやっていて楽しい時間。無事ポスター撮りを終え、19時半頃、K君とバイバイ。
10月10日(木)
撮影14日目。朝から地元の公園で撮影後、調布のお寺に移動。公園のシーンだけ見学に行ったが、俳優陣も多く、見ていて楽しいシーだった。特にママ友のシーンは面白くなりそう。
お昼に戻り、またまたせっせと苦手な事務作業。昼休憩に『TITAN』(監督:ジュリア・デュクルノー)を見てしびれる。初めて見た時より細かいところも楽しめて、1回目より面白く感じた。
10月11日(金)
撮影15日目。朝から自宅にて撮影。
私は8時50分から学校のスクールカウンセラーと面談。この2年大変お世話になったが、来週から転校する経緯を話し、感謝の意を伝える。「学校として力が及ばずすみませんでした」と言われるが、全然そんなことない! 我々夫婦のまとまらない気持ちを聞いてくれただけでどれだけ助かったことか。転校が息子にとって吉と出るか凶と出るかわからないが、息子にとって良い経験になればよいと思う。
帰宅後、仕事。昼休憩中に『籠の中の乙女』(監督:ヨルゴス・ランティモス)鑑賞。ぶっ飛んでいて頭がガンガンする。ちょっとぼうっとしてたら15時半に。朝、息子が「いつもボッチで帰ってくるから最後の日だけお迎え来て」というので、近くの門で待っていたところ、友達数人と一緒に帰ってきた。私と目が合うと「先に帰ってて」と合図。先に帰って待っていたら、涙ぐんで息子帰宅。クラスメイトから「またな」「がんばれよ」などと言われた様子。ずっと無視されていたと言っていた級友は、わざわざ一度家に帰ってからお金を持ってきて、自動販売機でコーラを買ってくれたと感動していた。
息子が「今の学校が死ぬほど嫌だ、耐えられない」と言っていたが、転校するまでではなかったのではないか……とまた悶々。悩んだことの堂々巡り。正解などわからない。その後、息子はケロっとして撮影現場に顔を出して、休憩中の鉄太君と遊ぶ。私は息子のランドセルから転校書類を引っ張り出し、大慌てで17時ギリギリに区役所へダッシュ提出。
10月12日(土)
撮影16日目。朝から自宅にて撮影。
娘、朝からバイト。なんだか楽しそう。私は8時、息子の元学校に行き、段ボール2箱分の教科書やら習字バックやら音楽バックやらを持ち帰る。11時から、新しく行く学校の運動会に息子と顔を出す。元の学校より児童数も多く、騎馬戦、組体操、フラッグなど、見ごたえある競技を堪能。大変暑いなか子どもたちが頑張っている姿に胸が熱くなる。息子、感動しながらも、「俺、これだったらできなかった」と少々プレッシャーに感じている様子。
お昼休憩中に撮影現場に顔を出し、皆様に挨拶。息子は鉄太君と連日会えてうれしそう。13時半から地元の公立中学の説明会に参加。元気で前向きな生徒会の生徒4人の挨拶がまぶしかった。
終了後、ダッシュで仮住まいに帰宅、15時からママ友2人と打合せという名の飲み会。転校のこと、中学のこと、子どもたちの今の状態などつかの間の情報交換。言葉が追いつかないくらいしゃべり通し。ピッタリ18時に解散し、各自夕飯を作りに帰宅。
ママ友が帰宅すると、2階から娘も息子も居間に降りて来て「腹減った腹減った」の大合唱。つまみの残りをあてがいながら、大急ぎで鶏肉を大量に焼く。
10月13日(日)
撮影17日目。8時に練馬駅の料理屋「鳥ふじ」で撮影。店長に挨拶に伺う。撮影で出してくれた焼き鳥などをいただく。美味しい!今度、絶対来ようと思う。9時半に撮影が終わり、撮影隊は移動。私は息子と映画に行く約束をしていたため、帰宅。
帰宅と同時に、試験1週間前の娘が、勉強に向き合いたくなくて、しきりに「買い物行こー、なんか食べに行こー」と誘ってくる。息子と『ビートルジュース2』(監督:ティム・バートン)に行くけど、一緒に行く? と誘うがすぐに出られないから無理、とのことで息子と出発。
映画鑑賞後、息子と昼ごはんを食べていると、娘から「気分転換したい!」「美味しいもの食べたい!」とラインが何通も届く。「今、サイゼリアにいるけど来る?」と返信すると娘がすぐ来た。息子と楽しく食べていたが、娘が来るなり色々息子へのダメだしが始まり、息子は江古田のブックオフへ逃避。
その後、流れで娘と『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(監督:ドット・フィリップス)鑑賞。仕事がたくさん残っていたなか、映画2本鑑賞して心が落ち着かなかったが、子どもらと映画館に行ったのは久しぶりだし(だいたい映画は夫が連れて行く)、映画は面白かったのでまぁいいか。
帰宅し、夕飯を作っていたら夫帰宅。娘、息子、夫と昨日録画していた「キング・オブ・コント」を見始める。娘、勉強したくないモード全開。なんかバタバタとして、仕事は何一つできなかったが、まぁいい日でした。
10月14日(スポーツの日・月)
撮影18日目。本日は府中方面で撮影。私は娘と息子と買い物に行く。
10月15日(火)
カラッとした快晴。息子は新しい学校へ転校初日。不安と期待の入り混じった顔つき。新しい担任の先生は、25歳位の若い男性の先生。どうか、相性良く、いい関係性を保てますように。
娘は開校記念日のため、休み。朝から配信ドラマを見ている様子。どうにも勉強スイッチが入らない様子。
本日は撮休のため、夫は朝ジムに行った後に、スーパー銭湯で仕事をするとのこと。私は相変わらず、たまりまくっている経理系の仕事をやらねばならないため、パソコンを持って自宅へ。ラジオを聴きながら、ひたすら事務作業。進んだ気がする。昼ごはんを食べながら本日は『ロブスター』(監督:ヨルゴス・ランティモス)鑑賞。面白い。
15時半、仮住まいに戻ると顔を真っ赤にした息子帰宅(今日も9月並みに暑かった)。「新しい学校はどうだった?」と聞くと「昼休み、いつもだったら絶対やらない外遊びした」とのこと。息子なりに新しい環境に適応しようと一生懸命なのだな、と思う。どうか無理しないでほしいと願うが、友達が欲しいのだから仕方ない。
16時から大学生のレンタル先生が来て、過去問などをやってもらう。隣の部屋で仕事をしていたが、息子は勉強よりもいかに外遊びが疲れたか、という話をずっとしていた。もはや勉強ではなくカウンセリングになっている感じ。
レンタル先生が帰るなり、「腹減った」と娘が居間に。最近トッポギにはまっており、毎日キノコや鶏肉を入れたトッポギばかり作っている。
18時、スーパー銭湯からサウナ三昧の夫が帰宅。撮影に入ってからダイエットが成功しているようで8キロやせたらしくて、テンションが高い。夕飯も秋刀魚の塩焼きとぶりと貝の刺身のみ。突然意識が高くなりすぎて驚く(ちなみに痩せたら、いびきがかなり減りました)。
夜、息子と『ルーキーズ』鑑賞(最近、一話ずつ見ている)。もう何周も見ているだろうに、同じところで涙ぐむ。
10月16日(水)
撮影19日目。本日は清瀬市方面で撮影。
夫も娘も息子も無事、出発。私も本日は8時半に仕事開始‼ 色々と滞っているものを全て終わらせる勢いで自宅に来たが、猫たちがまとわりつき、かまってアピール甚だしく(パソコンの上からどかない、手足を甘噛みしまくる)、電話も多かったため、結局そこまで進まず(全て言い訳)。しかし、昼休憩はきちんととって、『聖なる鹿殺し』(監督:ヨルゴス・ランティモス)鑑賞。好きじゃないのになぜか観てしまう。午後も粛々と仕事していたが、別府映画の英語字幕を大至急作らねばならない連絡を受け、いろんな方に連絡。電話やメールに追われ、頭の中が大パニック。
そこへ息子が矯正の装置が取れたと言って、口から針金を出して帰宅。見た目がホラー映画のよう。今日は習い事が2コマあるが、当日キャンセルは受け付けてくれない。歯医者に電話したところ、今すぐ来るならできるが、今来れないと月曜の夜まで満杯で予約が取れないとのこと。
学校で疲れ果てて動けない息子をどうにか叱咤激励し、歯医者に放り込み、無事針金を切ってもらって、重い足取りの息子の手を引っ張って駅まで送る。どうにか1時間遅れで習い事に送りこめた。動かない小6男児は抱きかかえることもできず、全身から汗が噴き出る。
仮住まいに戻って仕事をしていると娘が帰宅。今晩もどうしてもトッポギが食べたいらしく、大変うるさいので、夕食の買い物もあるし、近くのOKストアでトッポギを大量購入して調理をしていると、息子も夫も帰宅し、夕飯やら一方的な話への相槌やらになんか疲労蓄積。またやりかけた仕事を放置したまま、気力なく本日終了……。なんて時間の使い方が下手なんだろう……。頭の中がとっちらかり過ぎている……。
10月17日(木)
撮影20日目。本日は足立区方面で撮影。朝5時出発なので娘のお弁当を作ろうか? というと「俺が作る!」と言い張り、インスタに上げている。すごいこだわり? 使命感? 相変わらず承認欲求が尋常じゃない。午前中は昨日の続きで英語字幕制作会社と連絡。無事データを納品し、作業に取り掛かっていただく。
午後、知り合いが撮影の見学にいらっしゃるので、練馬の公園に向かう。話しながら撮影見学。夕方撮影が終わった後、息子の元の学校に行き、元担任と元通級指導の先生と面談。「足立君が楽しんで行けているのであれば、それ以上望むことはない、あんまり頑張りすぎないと良いけど……」と言われる。さんざんお世話になったのでお礼を沢山言ってお別れした。
10月18日(金)
撮影21日目。本日は自宅にて撮影。長丁場になりそうとの事で7時前には夫、仮住まいを出発。
朝からシトシト小雨で、低気圧。息子、なかなか起きられず。7時半過ぎ、ふうふう言いながら「今日無理かも。1か月に1回のお休みデイを今日使いたい……」とのこと。「転校4日目でもう使うの? 朝はいつもダメだけど、10時位には復活するんだから遅刻して行ったら?」というも無反応。これはダメそうだ。
本日、私は朝から小輝日文さん(撮影機材のレンタル会社)で、元東京国際映画祭の久松猛朗さんが主宰するカメラやレンズの実地勉強会があったため8時20分には家を出なければならなかったので、まずは家じゅうのデジタル機器を隠し、昼ご飯&夜ご飯を用意して、「17時45分から塾だから行くんだよ」と塾バッグに手紙を貼って出発(口で言っても忘れてしまうため、メモは字で残している)。
16時過ぎまで実り多い勉強会を終え、スマホを確認すると夫からLINE。息子は撮影現場にいる様子。17時半に塾に送り出してよ、と夫にLINEするも既読にならないため、急いで帰宅。案の定、息子の塾バックは仮住まいに放置されたまま。塾バッグをもって撮影現場に向かう途中、超チンタラ自転車をこいでいる息子と遭遇。「もう完全遅刻だよ!! ダッシュで行きなよっ!」と言うと、「は? 完全余裕っしょ!」と馬鹿にした言い方をしたので、「お前、学校もいけねえくせにイキってんじゃねーよ‼」と吐き捨て、塾バッグを投げつけた。
あーーー、また塾行く前に脳調を悪くしてしまったと思ったが、私もイラついたので仕方がない。息子に「必ず行けよ!」とだけ言って、仮住まいに戻る。なんだか、どっと疲れて仕事をやる気がしなかったので、風呂に入りながら『小山田圭吾 炎上の嘘』を読む。
夜、撮影で余ったお弁当をいただく。疲れた身体に沁みた。塾後の息子に「私、言い過ぎたね、ごめん」と言ったら「ほんとだよ!」と言われた。
※夫の一言
撮影現場から塾に息子を送り出すのが今日は一番疲れた。
10月19日(土)
実景撮りのため、夫6時頃出発。
最近、夜中1時ごろ、夫のうめき声や息子の体をボリボリ貪りかく音で目が覚めてしまい、それ以降4時くらいまで眠れない日々が続いており寝不足。なのに本日早朝夫が準備している時に、わざわざ私の頭上で屁をかましたため、怒りでとび起きてしまった。なんで部屋が4つもあるのに、わざわざ人の頭上で屁をかますのか!「やめてよ‼」と言っても「だって出ちゃったんだもん」と、自分の緩み切ったケツの穴のせいにするため、余計頭にくる。奴は絶対に直さない。ハラスメントを訴えても平気で「だって仕方なかったんだもん」という輩だ、あいつは。
で、結局、早朝に起きてしまった。本日朝は19度だが、日中は30度の真夏日になるとのこと。洗濯機を回しつつ、たまっていた仕事に着手。
※夫の一言
どうしてこれがハラスメントを訴えても「だって仕方なかったんだもん」という想像につながるのか。しかも想像でしかないそのことで彼女は怒りを増幅させるからたまったものではない。
※妻より
日頃、溜まりに溜まりまくっているヘドロみたいなオリが、想像力をどんどん増幅させます。
10月20日(日)
撮休。息子志望校の体験授業。今日は塾友と一緒に行く約束をしていたのでスムーズに出発できて、ストレスがなかった。理科の体験授業をし、説明会を受け、個別相談。文字を読む、文字を書くことがこの学校に入ったら重要視されると言われる。息子は話は得意なのだが、文字の読み書きがとても苦手で苦戦していると伝えると、「慣れです。わからなくてもいいから、まずは文字を見ることを癖づけてみては?」などと言われる。
帰り道、とりあえず寝る前15分は本を読んでみない? と提案。息子「考えてみる」とのこと。とりあえず、Amazonでスティーブン・キングの『IT』を購入(息子の希望)。夕方、脚本家/監督のホン・ソネさんと、夫の伊藤さんが来て、飲む。2人ともゲーム好きなので、息子と話が合って楽しそうだった。
10月21日(月)
撮影22日目。昨日より気温差が激しい。朝は10度。とても寒い。息子、なかなか起きられないが、金曜日休んでしまったので、どうにか気力を振り絞って起きる。娘は今日から定期テスト。ぴりつく朝が過ぎ、私は無人の家で、仕事モード全開。でも13時には娘が帰宅し、いろんな怒りや愚痴を話すので手が止まってしまった……。その後、息子も帰宅。鉄太君に会いたいとのことで撮影現場に顔を出す。結局13時までしか仕事ができず……心がどんどん焦る。
10月22日(火)
撮休だが、編集があるため夫は朝から外出。お天気も良く、娘も息子も良い感じで学校へ行ける。送り出しと同時に、粛々と仕事。今日は捗った。夕方、スタッフの方々と中打ち上げ。本当にボリュームのある撮影のなか、皆様たいへん気持ちよく、丁寧にお仕事をしていただき、本当に感謝の一言だ。いつかビッグになって、必ずや恩返ししたい!
10月24日(木)
撮休。午後、息子の新しい学校の担任と面談。息子の取説を諸々伝える。大変親身になっていただき、とても心強く感じる。新しい小学校でも週に1回、通級に通えるそうで良かった。
※夫の一言
撮休だったのでようやく息子の転校のバタバタに少しだけ付き合えた。忙しさにかまけて子どもたちとの時間がなかなかとれず非常によくない状況。
10月25日(金)
撮影23日目。本日は江古田のライブハウスで撮影。エキストラさんも多く、武正晴監督や大崎章監督、上海国際映画祭の徐さん、中国から来日している俳優のタンタンさん、韓国のプロデューサー鄭さんがいらしてくれて、挨拶をする。沢山お話しできて楽しかった。
10月26日(土)
撮影24日目。本日は早朝駅前路上からの撮影。エキストラさん大勢のなか、私もエキストラで参加。主演のお2人の演技は迫力があって素晴らしかった。重機の上からの撮影は大掛かりで見ていて迫力もあった。どんな仕上がりになるのか楽しみ。その後、自宅付近と自宅で撮影。
テストが終わった娘が毎日「麻辣麺食べたい!」と言うので、バイト終わりに待ち合わせ。結局麻辣麺屋が見つからず、びゃんびゃん麺を食す。大変美味しかった。その後、また粛々と仕事。
10月27日(日)
撮影25日目。本日は東銀座→自宅にて撮影。午前中息子を新学校のPTAイベント(地域班での遊び)に送り出し、粛々と仕事。午後、息子と韓国映画『破墓 パミョ』(監督:チャン・ジェヒョン)鑑賞。息子、大興奮。
10月28日(月)
撮休。放課後、夫と息子は息子の誕生日プレゼントを買いに中野まんだらけへ。そのすきに『プリズナーズ』(監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ)鑑賞。めちゃくちゃ面白い。夕方、息子と夫はゾンビTシャツとETを買ってきた。あとは祖父母から貰ったお祝い金でバカでかい筋トレグッズ(懸垂機とベンチプレス)をAmazonで注文。益々家が狭くなる。
10月30日(水)
撮影26日目。朝から自宅にて撮影。夜まで続く。本日のお昼はMEGUMIさん差し入れのケータリングカー。暖かいトムヤンクンスープとカオマンガイが美味しかった。追いパクチー! 昼過ぎに別府ブルーバード劇場の真帆さんと大樹さんが陣中見舞いに来てくれた。ありがたい……。夜遅くまで撮影は続く……。
10月31日(木)
撮影27日目。朝から公園で撮影。無事、クランクアップ! タイトなスケジュールのなか、皆様事故もなく無事撮影が終わって、ほっと一安心。これからは粛々と編集作業。
午後、私は家の美術バラシに立ち合い、夕方から東京国際映画祭のパーティーへ。いろんな方との出会いがあり行けて良かった。
それにしても怒涛の撮影が、終わった……明日からまた元の家に戻るために毎日1人片づけの日々が続く……。やらねばならないことが多すぎて、頭がいつも沸いている感じ。とりあえず、腰を壊さないようにだけ気をつけようと思う。
【妻の1枚】
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【プロフィール】
足立 紳(あだち・しん)
1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作『百円の恋』が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品『佐知とマユ』(第4回「市川森一脚本賞」受賞)『嘘八百』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『こどもしょくどう』など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が東京国際映画祭最優秀脚本賞。最新作は『雑魚どもよ、大志を抱け!』。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『春よ来い、マジで来い』(双葉社・刊)。