2016年末、いくつものキュレーションサイトが閉鎖になるなど、ネット界に嵐が吹き荒れました。ふたを開けてみれば、企業が1記事300字数百円といった超絶安価な金額で、大量に外注ライターに記事を書かせていたことが発覚。その結果、信憑性の薄い内容だったり、他サイトからのまるパクりだったりと、企業が監修しているとは思えないさんざんなクオリティの記事が大量に出回っていたようです。
今回は検定試験をとおして「WEBライティング」について考えてみたいと思います。
検定で問われるWEBライティングスキルとは?
出版関係で仕事をする場合、校正や用語、著作権について勉強をする機会があります。最近は、WEBライター用の検定がいくつかあるようなので、そのなかの1つ、「WEBライティング技能検定」を受けてみました。この検定では、何冊ものテキストで学んだ後に検定試験(有料)を受けるという仕組みで、合格すると認定書(有料)がもらえます。
テキストは基礎編、実践編というようにわかれており、基礎編は「スパムメールとは」「PCウィルスとは」といった基本的なIT知識やリテラシーから、「納品までの期日が長い場合は途中経過を報告する」といったビジネスマナーを学びます。
IT知識については、普通に仕事をしている人なら知っていることがほとんど。予習せずに受験しても受かりそうです。著作権に関しての記載もあり、これはネット世代には疎い話かもしれないのできっちり読んだほうがいいかもしれません。
ビジネスマナーは、質問として出されれば正解はわかるけど、実践しているかは別ってこともありそう。自分の仕事の振り返りとしても使えます。
実践編は、ライティングの技能です。読みやすい文章を書くためのコツを学びます。文章を簡潔にする方法や、主語と述語の一致、言葉の重複を避けることなど、こちらも文章を書くことに慣れている人ならフツーに理解していることがまとめてありました。WEBライター志望の方はもちろん、ブログで稼ぎたい人にもよさそうです。
で、実際に検定試験を受けてみました。
予想以上に苦戦した300文字の記事制作
基礎編、実践編合わせてテストは90分ほど。基礎編は四択なので特に苦戦しないでしょう。問題は実践編。出題されたテーマにしたがって300文字の記事を制作します。例えば「イルミネーションについて、LEDと節電という言葉を使って書け」みたいな。それが4問あります。
ぶっちゃけこの程度、ちゃちゃっと書いて終了だと思っていました。ライターとして仕事をしていれば、テーマを与えられた瞬間に構成は思い浮かぶし、文字数のコントロールもお手のもの。だけど、真面目にやってみたら4問できっちり1時間近くかかりました。
書くのにたいして時間はかかりません。むしろ、テキストに書かれていたような注意事項に沿って客観的に文章を見直し、まとめていくのに時間をかけます。ライティング時間の8割はこの「推敲」の時間といっていいでしょう。
また、いい記事を書こうと思ったら、それなりに下調べもします。実際、試験でも事実確認のためにあれこれ検索したりしました。これ、真面目にやったら1本1時間くらいかかりそうです。
文章を書くことにどんな能力が必要で、どこに気を遣うのか、どのくらいの時間がかかるのか、といった点は、実際にやってみないとわからないもの。長くもなく短くもない300文字のなかに、どれだけの情報を読みやすく入れられるか。書き手の能力を見るのにとてもいい長さだと思います。200~300文字の文章を綺麗に書けたら、どんな長さの文章も書けるといわれています。
文章は書けば書くほど上達します。テキストを読んであれこれ知識を入れたとしても、それだけでキレイな文章を書けるようにはなりません。知識を積んだ上で、実績を積み重ねる必要があります。紙媒体よりも敷居の低いWEBで経験を積み、別途ライティングの勉強をして、より質のいい仕事を見つけていくのが「稼げるライターになる」ステップなのかもしれません。
昨今の問題はライティングに対する社会の評価が低いことが原因?
一方で、この検定はぜひ仕事を発注する側にこそ受けて欲しいと感じました。1記事数百円という、既存の出版業界ではあり得ない金額を設定できるのは、真面目に文章を書いた経験や文章を見極める力がないからではないでしょうか。読みやすく価値のある文章を書くことは想像以上に技能が必要で、文字数が少ないから短時間に、簡単に書けるというわけではありません。あまりにもライティングに対する社会の評価が低いように感じる今日この頃。実際に自分でやってみて、その上で提案する金額が適正かを見極めていただきたいと思います。
検定の合格ラインがどのくらいかはわかりませんが、とりあえず和久井は無事、合格しました。いちおうはライターとして恥ずかしくないレベルだということが証明されたわけですが、自分の得点の内訳はもらえないようです。検定というのは肩書きを得るためだけではなく、自分の能力を測るのにも役立つものなので、自分の強みと弱みを把握できたらもっといいのになあと思いました。