覗けば深い女のトンネルとは? 第9回「女の萌えはかくもか細い」
以前、知りあいの女性が「キュンとした」といっていた男性の話です。
女性と男性A、男性Bとでランチをしていたときのこと。
男性A「お前、食欲ないならヨーグルトでも食っとけよ」
男性B「ええ、そうですね」
女性「Bさん、体調悪いんですか?」
男性B「(シレっと)ああ盲腸で、今日、仕事終わったら手術なんスよ」
女性はこのとき、体中に電撃が走ったそうです。
わかります、いい話だ……。
この話、おもしろいなと思って、ラジオに出演した際に再現ドラマを作ってもらったんです。そうしたら制作スタッフの方が男性Aと男性Bを一人にまとめちゃったんですね。
再現ドラマはこんな感じでした。
男性C「俺、今日、ヨーグルトだけにしとくわ」
女性「体調悪いんですか?」
男性C「(元気よく)盲腸で、今日、仕事終わったら手術なんスよぉ~!」
全然ダメです。「うわっ! 面倒くさい!」って感じです。
この違い、わかりますでしょうか? まあ、まずは解説いたしましょう!
1.自分から言わない
Cさんがダメなのは、自分から「俺、体調悪い」っていっちゃってるところ。それ、単にかまってちゃんです。「どうしたんですか?」って聞いて欲しいんですかね。ちょっと子どもっぽすぎです。
一方でリアルBさんのほうは、人に聞かれるまで黙ってるところが萌えです。
2.シレっとしてる
Cさんは、けっこう元気よく「手術なんスよぉ~!」と主張してますが、これも「俺、可愛そう?」「俺、すごい?」みたいなアピールに見えて、ぜんぜんステキじゃないです。
一方でリアルBさんは、シレっとしてるところが萌えです。盲腸といえど手術ってちょっとたいへんなことだと思いますが、それを「仕事が終わったら」と淡々といってるところがいいんです。仕事を優先させるところも社畜といわれればそうですが、ちょっとステキ。
というわけで、ここはぜったいにAさんとBさんを合体させて一人にさせてはいけないんです(力説)!
申し訳ないのですが、スタッフさんに、
「済みません、これだとぜんぜん萌えになりません! むしろ逆効果です!」
といって、作り直してもらいました。「女の萌え」について語る企画だったので、譲れなかったんです。このときに、しみじみ「ああ、女の萌えは男性には伝わらないのだな……」と思いました。
「いいこと」とか「好感度の高いこと」って、地味な行動の場合が多いですよね。Bさんだって、Aさんや女性が振ってくれなかったら、これから手術だなんていう機会がなかったわけで。
いや、そうだ! そうなんですよ!! 「チャンスがなければ誰にもいわずじまいだったかもしれないのに、それが実はけっこうでかい話だった」からこそ萌えるんです!
「えっ!? そんなたいへんそうなこと、黙ってるの?」みたいな。
「恋なんて謎があるうちよ」とかいいますが(古い)、「表に出るかわからない、不発になるかもしれなかった情報」だから価値があるんですね。「そんな大きなこと、黙ってたの?」って。
だからこそ、その奥ゆかしさに女たちはキュンとするのだと思います。モテる男子は、不発のネタを実はいっぱい持ってるのかもしれません。