ライフスタイル
2017/7/1 4:00

美しいサンゴ礁で不思議な魚が暮らす別世界――夏休みは奄美の海にGo!

今年も7月となり、暑い夏がもう目の前。夏休みにはぜひ、美しいサンゴ礁が魅力的な奄美の海に潜ってみてはいかがでしょうか。ということで今回は、自然科学系の書籍を手掛けてきた安延尚文さんに、奄美の海の楽しみ方を伝授してもらいます。

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↑シュノーケリングなら、気軽に海の中を覗くことができます

 

亜熱帯の自然が溢れる奄美の島々。その中でも、訪れる人を惹きつけて止まないのが、白く輝く砂浜と、青く澄み渡るサンゴ礁の海でしょう。奄美大島や加計呂麻島には美しいビーチがいくつも点在しています。その景色を眺めるだけでも感動ものですが、せっかくですからシュノーケリングに挑戦して、海の中を覗いてみてください。シュノーケリングは、シュノーケル、マスク、フィンの3点セットがあれば、誰でもトライできます。未経験で不安があれば、ガイドツアーなどのサービスを利用することもできます。準備をして海に入れば、そこは別世界。色とりどりのサンゴ礁の魚たちが出迎えてくれるはず。

 

サンゴの周りでは、スペードのような体形をしたチョウチョウウオの仲間、流線型の体形で複雑な色彩と模様を持つベラの仲間、長く切れ込んだひれを広げ優雅に泳ぐミノカサゴの仲間などを見ることができるでしょう。その中でも、種類が豊富なのがスズメダイの仲間です。枝サンゴの間に群れているエメラルド色の魚は、デバスズメダイ。光の当たる角度によって、色彩はライトブルーにも見えます。白地に3本の黒い縞があるミスジリュウキュウスズメダイも、レモンイエローのネッタイスズメダイも、枝サンゴが大好き。少し大きめで、体に5本の縞と、尾びれに黒い筋があるのは、ロクセンスズメダイ。全身が鮮やかなコバルトブルーで特に目立つのは、ルリスズメダイです。

 

スズメダイの仲間でも、特に注目したいのがクマノミの仲間です。クマノミの住みかは、触手に毒を持ち、魚を捕らえることもあるイソギンチャク。クマノミは、幼魚のころからイソギンチャクに触れて毒に体を慣らし、また特殊な粘液で体を覆ってイソギンチャクに刺されるのを防いでいます。そのおかげで、セキュリティ万全の家に住めるという訳です。

 

そんなクマノミをよく観察すると、大抵の場合、1つのイソギンチャクに1ペアの成魚が見られます。体の大きい方がメス、小さい方がオスで、外敵が来たとき、住みかや卵を守るために戦うのは、体の大きいメスの役割。そう、クマノミは“かかあ天下”なんです。さらに、イソギンチャクには、ペア以外に小さな幼魚がいることもあります。しかし、勘違いしてはいけないのが、この幼魚と成魚ペアは親子ではありません。この幼魚は血縁のない、オスの予備軍。もしも、ペアのメスが死んでしまうと、残されたオスがメスへと性転換し、幼魚の中の一番優位なものがオスとなって、新しいペアになります。もちろん、オスが死んでしまった場合も、予備軍の幼魚が格上げになるのです。こんな生態を知っていれば、クマノミを見る目も変わるはずです。

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↑クマノミのメス。卵を守る姿が見られることもあります

 

サンゴ礁の魚たちに魅了されたら、将来的にはスキューバダイビングにも挑戦してみましょう。海中に潜れば、見られる魚の種類も数も、ずっと多くなります。そこで、ダイビングでしか見られない魚を1種類、最後に紹介しましょう。それは、奄美で発見され、2014年に新種として発表されたアマミホシゾラフグ。星空のような斑点模様をしたこのフグ、体長はわずか12センチほどですが、オスは繁殖期の春から夏にかけて、海底の砂地に直径2メートルもの“ミステリーサークル”を作るのです。オスは、多大な労力を払ってサークルを作り、メスの気を誘います。メスはサークルが気に入ると、その中心部に卵を生むのです。このようなサークルを作る魚は、世界でも例がありません。こんな不思議で魅力的な魚がすむ奄美の海を、あなたもぜひ訪れてみませんか。

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↑アマミホシゾラフグ(中央)と、“彼”の作ったミステリーサークル

 

文/安延尚文さん…自然科学系の書籍や雑誌の編集、執筆を主に手掛けています。南の島も大好き

写真提供:DIVING&PENSION RIKI

協力:学研プラス図鑑編集チーム

※本記事は航空会社・バニラエアの機内誌「バニラプレス 2017年7-10月号」に掲載された内容の完全版となります
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