お手軽な旅行先として日本でも人気が高い香港ですが、最近旅行客の間で自然豊かで高低差の高い地形を活かしたトレッキングが流行っているとのこと。本稿では、ライターの末吉太郎さんに、そんな香港トレッキングの魅力について紹介してもらいました。
高低差が少なく気軽に楽しめる
アグレッシブに人とモノが行きかう大都市、香港。そんな香港を訪れる人々の間で徐々に人気が高まっているのがトレイル、つまり大自然を満喫するトレッキングです。香港は、国土の約半分に緑豊かな自然が残されています。また火山が隆起してできた土地なので、高低差がかなりあります。1970年代からトレイルコースが整備されてきました。
中でも4大トレイルが有名。九龍半島を縦断するマクリホース・トレイル、香港島を縦断するホンコン・トレイル、空港のあるランタオ島のランタオ・トレイル、香港島から九龍半島を南北に通じるウィルソン・トレイルの4つです。それぞれは50~100キロメートルと長いのですが、歩きやすいように5~15キロメートルほどで区切られているため、気軽に楽しめます。
身近でトレッキングを楽しむことができるだけあって、トレイルコースでは老若男女、あらゆる国籍の方々を見ることができます。在香港日本人は、一度はトレイルに行くぐらい一般的です。トレイルコースといっても、ウォーキングに近いコースから急勾配を上り下りする本格コースまで多種多様なコースが存在します。ここでは、気軽に楽しめるコースを中心に紹介します。
風光明媚なホンコン・トレイル
香港島を縦断する全長50キロのコースが、ホンコン・トレイルです。ここは特に欧米人に人気のコースです。名物は、龍背(Dragon’s Back)のあるセクション8。稜線を歩くコースで東西両側を海の絶景が見られる香港きっての風光明媚なコースです。アメリカの「Time」誌のアジアベストトレイルにも選ばれたこともあります。
東側は対岸には紅山半島(Red Hill Peninsula)や赤柱半島(Stanley Peninsula)が望め、西側は石墺(Shek O)を眼下に見下ろすことができます。ゴールはなんと大浪湾(Tai Long Wan)のビーチです。香港のトレイルは、標高が500メートルを越えることはめったにないため、山と海の両方を楽しむことができるのがポイントです。
スタート、ゴールともにミニバスやタクシーが近くまで来ているので、気軽に楽しめるのが人気。香港島に宿泊していれば半日で楽しめます。ホンコン・トレイルは、高層ビルを眼下に見下ろすセクション1、階段地獄のセクション7、など名物セクションがあります。2日をかけて全セクションを制覇してもいいかもしれません。
人気の高いマクリホース・トイレル
四大トレイルのうち、最初に開通したコースが、マクリホース・トイレルです。香港の自然保護とトレイルの発展に寄与した、第25代香港総督マレー・マクリホース卿の名前が冠されています。九龍半島の東から西へつながり、4大トレイルの中で最長距離で、コースには香港で最高峰の大帽山(Tai Mo Shan、957メートル)もあり、非常に人気のあるコースです。
100キロにも及ぶコースなので、大自然あり、都会の風景ありとさまざまな景観を楽しむことができます。その中で今回は、北潭涌(Pak Tam Chung)から浪茹湾(Long Ke Wan)というステージ1~2の途中(約1キロ)をご紹介します。スニーカーで十分なウォーキング感覚のコースです。そのため老若男女、またさまざまな国籍の人たちがこのコースを楽しんでいます。時折日本語であいさつしてくる人もいるくらいです。
このコースは、萬宜水庫(High Island Reservoir)という貯水庫を左側に見ながら歩きます。貯水庫は、島と半島をつなげてつくった珍しいタイプで、ダム部分の構造も日本のものとは違い、表面が石造りで変わった構造となっています。コース右側は、香港の島と海が織りなす景観を楽しめます。
ステージ1終盤はGeo Parkといい、ユネスコに認定された地質学的に珍しい流紋岩の六角柱状節理があります。また眼下にみえる浪茹湾の風景は絶景です。その浪茹湾のビーチは白く美しい砂浜で、ここでひと泳ぎするのもいいでしょう。
帰りは海鮮中華で有名な西貢の街に寄り、疲れた体に美味しい料理とビールを一杯! 海鮮は自分で水槽から選んで調理してもらうスタイルです。多くのレストランがありますが、中にはミシュランで星を獲得しているレストランもあります。
マクリホース・トレイルは、陸と海の景色を楽しめるステージ2、香港の名峰や太平洋戦争の激戦地であったステージ4・5、香港最高峰である大帽山のステージ8など、さまざまなコースがあり、各々の目的に沿って楽しめるコースです。強者は秋に行われる100キロトレイルレースに参加してみるのもいいでしょう。
(文/末吉太郎…日本人ライター。初の香港生活を楽しんでいます)