夏休みの宿題に必ずあるといっても良い、自由研究。毎年、何をテーマにすれば良いのか、はたまた「研究って何?」と親子で頭を悩ませてはいませんか?
『学研キッズネット』では、500種類以上の研究テーマを無料で閲覧でき、小学校低学年から中学生まで幅広い年齢層の自由研究テーマのサポートをしています。
そんな『学研キッズネット』の編集長、梅崎洋さんと編集部員の望月美香さんに「自由研究のテーマの決め方」について、お話を伺ってきました。
――まず、今年おすすめの自由研究はあるのでしょうか?
梅崎 今年のおすすめとして、身近にあるもの、たとえば塩やペットボトルを使った研究、くすりや昆虫のなぞを観察して調べる研究などがあります。でもまず「自分は何をやりたいのか、何が好きなのか」という問いかけから始めてください。
「料理かな?」「スポーツかな?」と子どもに聞いていけば、それをもとに自由研究ができるんです。たとえば新しい料理を作ろうと思ったら「素材は何でやるの?」「そこにどんな工夫を付け加えるの?」と、どんどん深めていけば立派な自由研究になります。自分の好きなことを扱っている以上、主体的に取り組めますし、やっていて面白いから、しっかり取り組むと思うんですね。好きなことをやっている姿を見れば、まわりも応援したくなるはずです。
――好きなことを研究するのが大前提ということですね。子どもの頃、「研究になるもの」と「ならないもの」の差が分からなかったのですが、何をもって「研究」というのでしょうか?
梅崎 たとえば貯金箱を作って「これは自由研究になりますか?」と質問されることがあります。何かを「作った」「実験した」だけで終わりではなく、「何故それを作ろうと思ったのか」、「工夫・苦労した点はどこか」など、相手が見たときに、それを作った背景が伝わるように形にすることが「研究」です。
https://kids.gakken.co.jp/jiyuu/idea_db/934.html
――そもそも自由研究って、「作る」ことなのでしょうか?
梅崎 我々『学研キッズネット』は、自由研究を「作る」「実験する」「調べる」「観察する」という4つのジャンルに分けています。「作る」では、欲しいものを作るのが一番。作りたいものを考える上でやりやすいのは「お母さんに小物入れを」など、誰かにプレゼントするものを作ることですね。
望月 今年のおすすめ工作のひとつは、野菜の断面をスタンプにしてアート作品を作ったものです。
――普通にアーティスティックですね! 「これは何の野菜でしょう?」ってクイズにしても楽しそう。同じ「野菜」をテーマに取り上げても、切り口はいろいろなのですね。
梅崎 スタンプなら、絵を描くことが苦手な子でも関係なくできるし、いいですよね。
https://kids.gakken.co.jp/jiyuu/idea_db/933.html
――絵が得意な場合、漫画を1つ描いて、工作とするのはありでしょうか?
梅崎 もちろん、ありです。ただ、作るだけではなく、ストーリー展開をどういう考え方で作ったとか、工夫や苦労した点など「漫画ができるまで」をまとめてあれば、それは立派な研究です。作って終わりではなく、なぜそれを作ろうと思ったか、どう考えたかといったことが相手に伝わるようにすることです。
望月 自由研究の提出物となるまとめでは、伝えたい人の顔を思い浮かべながら書こうと提案しているんです。好きなことをテーマにして何か発見できたら伝えたくなりますよね。
――なるほど! それは大人顔負けのプレゼンテーションですね! では「実験する」について教えてください。
梅崎 「実験」は書籍やウェブサイトを見たり、何かしら参考になるものが必要です。そこから自分の生活と結びつくものがあると良いですね。たとえば「確か前に野菜を洗っていて、浮くものと沈むものがあったな」とか、ちょっとした疑問から発想して、「塩水で浮き沈みを試したらどうか、塩水の濃度を変えたらどう変化するか」など条件を変えて実験していくと、深みのあるものになりますよね。
――データをいくつか揃えて並列にするといいのですね。では次に「調べる」について教えてください。
梅崎 調べたいテーマについて、とにかくたくさんの資料を集めたり、調べていくことを「調べ学習」というのですが、たとえばテニスについて調べるとしますね。テニスの歴史を調べるのか、旬な選手のデータを集めて比較するのか。実験は、目の前で何かしらの現象が起きますが、調べ学習はある程度予想して、どこに着目するか方向性を定める必要があります。今年おすすめの調べ学習のテーマに「自分の住む町のいろんな写真を撮って、自分の理想の町を作ろう」があります。なにも予想せずにただ写真を撮ってもまとめるのが大変なので、自分の理想を思い描きつつ写真を集めに行くとか、先の結果を見据えつつ進めると良いですね。
――私の大学の卒業論文での体験談ですが、好きなことを熱意だけでテーマにしてしまって、調べたはいいけれど、何を述べればいいのかわらかなかったことがあります。
梅崎 たとえば「私はこう考えました」と仮説を立ててから調べていって、「10パターンまで調べたけども、結果が出る確率としてはどれも同じくらいで、結果よく分からなかった」でもいいんです。何通りものパターンを調べて示せたというだけでも、貴重な研究結果ではないでしょうか。白黒つけるだけが研究ではないんです。
――わからなかったことを次の課題として来年研究してもいいですね。では「観察する」とは?
梅崎 「観察」はやっぱり昆虫や植物が一番身近で、昆虫ではアリやセミが観察しやすいですね。あとはカタツムリや、チョウも良いですね。どんな1日を送るかを調べるのが基本になります。
望月 まずは数日観察していると、何かに気づいたり疑問が湧いてくるでしょう。これは私の経験ですが、3匹を同じ入れ物で飼っているカタツムリでも、2匹だけはいつも一緒にいる。この2匹はいつも同じ個体なのか調べるために殻に印をつけたことがあります。でもどうしても印が消えてしまい、結果が分からなかったことがありました。
――殻に印がつかない、消えてしまうのも1つの発見ですね。
望月 そうですね。カタツムリの殻はどんな仕組みなのか疑問に思えば調べてもいいし、何時ごろエサを食べるのかなど、立派な研究になります。親が「虫が気持ち悪い」などと言ってしまうと、子どもの興味まで奪ってしまうかもしれません。まずは何事も、やりたいことをやらせてみるのが大事だと思います。
梅崎 あと昆虫の羽化。サナギから成虫になる時期は夏休みより少し早く6月中旬から7月の夕方や明け方なので、「今年の自由研究はこれ!」と決めておけば、自由研究に向けて少し早く活動できますね。
――なるほど。親御さんは、いつも子どもが好んでやっていることを、見守ってあげるのが大事なんですね。
望月 『学研キッズネット』は親向けのコンテンツもあるんです。学びのコラムで教育者である陰山英男(かげやまひでお)先生は「自由研究では、研究という名前に引きずられず、自由にやってみましょう」と言っていました。
梅崎 今話題の棋士、藤井四段は、毎日ひたすら将棋の研究をしていると言えますよね。好きなことに没頭するのは、それだけで研究です。星が好きで研究者や先生になった人は「自由研究でやってた」という人も多いです。宿題だからということではなく、好きなことだから年がら年中やっている場合が多いようですね。
――確かに「研究」という言葉が難しくさせている気がします。たとえば親御さんが子どもに「自由研究なにしたらいいか分からない」と言われたら、何てアシストしてあげるのがいいのでしょうか?
梅崎 まず本人に興味のあることを聞いてみる。普段の様子を見ていて、サッカーが好きならサッカー、ファッションが好きならファッションについて、「これテーマにできるんじゃないの?」と聞いてみてください。第三者や親が、本人に興味がありそうなものを気づかせてあげることも大事です。『学研キッズネット』には500種類以上のテーマがありますが、普段やっていることでも視点を少し変えてあげるだけで、何通りにも広げられます。テーマ自体は何でもいいんです。深く考えすぎないでほしい。普段の食事に注目して「美味しいご飯の炊き方」について調べてもいいんです。
――ハンバーグが好きならハンバーグをテーマにしてもいいんですね!
梅崎 「美味しいハンバーグを作ってみよう」でもいいですね。そこで、こねる回数に着目して「今日は50回、明日は300回こねたハンバーグにした」とすると研究になります。もしかしたら家族で好みが分かれるかもしれない。家族で取り組むのもいろいろな発見があって面白いですよね。連日ハンバーグになったとしても家族はきっと「いいよ、いいよ!」って協力してくれると思うんです。自由研究を通して家族の思い出を作ってもらえたら、我々も嬉しいです。
https://kids.gakken.co.jp/jiyuu/idea_db/932.html
――もし先生に「こんなのは研究じゃない」と言われたら、『学研キッズネット』に何でも研究していいって書いてありました!」って言ってもいいですか?
梅崎 もちろん言ってもらってもいいですし、何かを参考にすることはいけないことではありません。どこかに書いてあった「研究」でも、本人の発想や視点を入れていくことが重要です。悩んでいたら、子どもの興味をよく知っている親が少しアシストをしてあげることで、それは独自の自信の持てる自由研究になりますよ。
学習や研究というのは「楽しい」「面倒くさくない」ことに気づいてほしいです。場合によっては「よく分からなかった」という結論もありです。そう言うためには、最低でもいくつか自分で調べる必要があるからです。
普段、子どもたちは興味のないことを無理矢理やらされることもあるかもしれません。けれども自由研究は、自分の好きなものに思う存分取り組めます。昆虫、スポーツ、料理など、好きなテーマを取り上げていい上に、研究の方向によっては科学、数学、社会など、あらゆる分野の研究につながります。毎年同じ素材を研究し続けてもいいのです。そうして1つのことを極めていったら、偉大な科学者になれるかもしれません。夏休みの宿題で、子どもたちの可能性を大いに広げることができるんです。
『学研キッズネット』に会員登録すると、自由研究のやり方やまとめ方をサポートしてくれるワークシート(PDF)をダウンロードすることができるようになっています。自由研究が苦手な方は、こういったものを利用してみても良いかもしれませんね!
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『学研キッズネット』夏休み! 自由研究プロジェクト
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