「犬がかかる病気」というイメージの強いフィラリアですが、近年、犬以外の動物でも発症することがわかってきたのをご存知でしょうか? もともとフィラリアは、蚊を媒介として犬に寄生する虫で、別名を「犬糸状虫」といいます。蚊の体内で育った幼虫が刺し傷から犬の体内に侵入し、血管を移動しながら成虫へと成長。そして、心臓や肺動脈に寄生することで、「フィラリア症」という病気を発病します。
犬の場合、フィラリアが寄生すると血液の流れが悪くなるほか、心臓が腫れたような状態になるため、肺につながる気管が圧迫されます。重症化すると「咳が出る」「呼吸が苦しくなる」などの症状を引き起こし、最悪の場合、死に至るケースも。暖かくなると増えてくるフィラリア症ですが、今回はあまり知られていない猫の「フィラリア症」にスポットを当て、予防方法などを解説します。
犬ではすでに予防方法が確立されている
フィラリア症の予防は、動物病院で処方される予防薬を毎月1回、1か月間隔で摂取させることで簡単に行えます。投薬期間は、気候や地域によって異なりますが、蚊が発生する4月ないし5月から、出終わってから1か月後の12月くらいまでが一般的です。
その際、注意しなければいけないのが最後の投薬です。ノミやダニの予防薬とは違って、フィラリア症の予防薬は体内への侵入を防ぐものではなく、体内に侵入したフィラリアを幼虫の間に駆除するためのものです。そのため、蚊が出なくなったからと言ってすぐに投薬を止めてしまうと、最後の最後で体内に侵入した幼虫がそのまま成長するのを許してしまうことになってしまいます。動物病院の指示通り、最後まできちんと投薬を続けましょう。
猫のフィラリア症は犬よりも診断が難しい
そしてフィラリアは、実は猫にも感染します。猫への感染はここ10年ほどでわかってきたことで、最新の調査では10頭に1頭は感染履歴があるというデータが発表されています。
猫のフィラリア症も、予防が非常に大切です。というのも、フィラリアは成虫が出すある種の物質を血液から検出して感染の有無を調べるのですが、猫に感染した場合、犬の体内にいる時と違ってうまく成長サイクルが回らず、成虫まで成長しない、もしくはごく少数の成虫のみの寄生のことがほとんどだと言われています。つまり、感染の診断が犬以上に難しいわけです。
突然死の発生率が約10%とのデータも
また、フィラリアにとって猫は本来の宿主ではないため、感染すると過剰な免疫反応を引き起こす危険性もあります。咳や呼吸困難といった症状に加え、犬とは違って突然死が10%くらい症状として起き得るとも言われています。なので、なおさら予防の重要性が高いのです。
猫用の予防薬も動物病院で処方されています。投薬の期間やペースは犬と同じ。薬自体は首筋に垂らすタイプなので猫への負担もないですし、子猫にも使えるものも出ています。近くの動物病院で相談ください。
フィラリア症は、きちんと投薬すれば確実に予防できる病気です。また、予防率が高くなっていけば、皆さんが暮らす地域のフィラリアを減少させることにもつながります。大切な愛犬・愛猫を守るために、飼い主の責任としてフィラリア症の予防は必ず行いましょう。
聞き手:井上ダイスケ