ヨシムラヒロムの一階通信 第一階:学研ホールディングス
企業のエントランスは、その企業を表す顔だ。
磨かれた床、座り心地の良いソファー、美人な受付――360度、客人に見られても恥ずかしくない空間を作り上げる企業の最も洗練された場所。クルマ会社だったらクルマ、飲料メーカーなら飲み物と、企業の核となる商品がキレイに展示されている。取引先や関係者は、1Fのディスプレイで企業の最新情報を知ったり、商談の掴みのネタにしたりするものだ。
企業の1階のエントランス部分はお客さま、従業員、不審者を含む、多くの人々が行き交う人間交差点。この連載「一階通信」ではエントランス部分から見える企業の顔を取り上げる。1階にエントランスがない企業も多々あるが、それはご愛嬌。受付や入口があるフロアを総じて「1階」と呼び、エントランスから企業を紐解く。
【一階通信001】 株式会社学研ホールディングス 学研ビル一階
「まだかな~♪ まだかな~♪」は流れていなかった
五反田駅から徒歩5分にある学研の本社ビル、見るからに立派な建物である。学研といえば子どもの教育に力を入れている企業。「なんか、子どもの声がするなぁ」と思って様子を伺うと、半地下にこども園があることがわかった。この情報だけで、学研の企業カラーがイメージできるだろう。「あんな、風俗街、ラブホテル街が多い五反田でこども園なんて大丈夫?」という親御さんもいるだろう。学研があるのは西側。歓楽街は東側なので大丈夫なんです!(担当編集補足:西側にも実はあります)
学研と云えばアラサー世代の僕にとってはCMが印象的な会社である。
「まだかな〜♪ まだかな〜♪ 学研のおばちゃん、まだかな〜♪」
というCMソングが僕同様に脳にこびりついて離れない人は多いはずだ。個人的には、1階のエントランスフロアで「まだかな〜♪ まだかな〜♪ 学研のおばちゃん、まだかな〜♪」のBGMがネバーエンディングで流れていて欲しかったがそうもいかない。実際には有線も流れていない(当然だ)。
学研の1階は、想像以上にこざっぱりとしていている贅沢な空間作りが特徴。中央には何もない広いスペースがある。ずっと観察していると、ここでは主に立ち話をする際に使用されている。立派なソファーが用意されているので、座って話せば良いと思うが、誰も座らない。
そういえば「一階通信」の担当編集がオススメしたのがソファーだったことも思い出す。「学研のソファーは変わってますよ!!」と飲み屋で強烈にアピールされた。実際に座ってみて、その意味がわかった。異常に低い。一般的なソファーの場合は40センチほどの高さがあるが、学研のソファーの場合は30センチしかない。成人男性の場合、足が収まりきらずケツの座りは悪いのだ。「学研だから子ども用に作られているんですか?」と聞くと「子ども、基本は来ませんよ」と担当編集。(担当編集補足:たまにこども園や近くの保育園の園児たちがやってきます)
立ち話をしている人は、ソファーの座り心地を熟知しているのかも。
奥に見えるのが学研の創業者、古岡秀人の銅像だ。仕事柄、様々な企業に足を運んだが銅像は初めてみた。たぶん、原寸大なので、それなりに大きい。目をジーっと合わせると、つい背けてしまいたくなるほどにリアルな造形。髪の毛一本一本、おでこのシワまで再現している。メガネが若干右に傾いているのがリアルさゆえか、それとも何かのトラブルでズレたのかが気になった。銅像を支える台座には「初心不可志」と書かれたプレート。創業者のメッセージなのだろう。
創業者の像より目立っていたのが……巨大なぬいぐるみ
1階エントランスで、いちばん目立つのが大人気絵本シリーズ「ぴよちゃん」の巨大なぬいぐるみ。本や図鑑などの展示物を圧倒する存在感を放つ。なんといってもデカく、子どものころの貴乃花くらいデカい。横のプレートには「写真撮影OK」と記載。スーツ姿のサラリーマンが行き交うエントランスで、ぴよちゃんと一緒に撮影した猛者がいるのか教えて欲しい(※担当編集補足:結構人気です)。
僕も初めて知ったが、このぴよちゃんは学研のキラーコンテンツ。絵本シリーズ累計発行部数270万部を突破しているそう。又吉直樹の「火花」ですら223万部だから、すごいよ。ぴよちゃん。
学研の1階を見て大きさこそが重要度のベクトルだと気づく。当然いちばん売れっ子のぴよちゃんはいちばんデカい。次点は創業者古岡秀人の銅像。学研は、案外と物理的なデカさを大切にしているのかも知れない。
【株式会社学研ホールディングスの一階通信見どころまとめ】
①妙に低いソファー
②創業者古岡秀人の銅像
③ぴよちゃん