連載コラム「自分会議のススメ」 第3回:ベイビーステップ思考
これまで2回にわたって2018年の目標設定の考え方、取り組む際のスタンスについてお話ししてきましたが、最後に達成のためにいかに行動すべきかについてお話しします。
新年に目標を立てたあと、たいてい人はやる気に満ち溢れ、高揚感に包まれます。トップギアに入った情熱ではじめの第一歩目に力を入れて大きな一歩を目指します。しかし、トップギアに入ったままで年末を迎えられる人はどれだけいるのでしょうか? 多くの場合、途中で目標設定当初の熱は冷め、挫折してしまっているのではないでしょうか?
実は、第一歩目に一番の誤解があります。高いモチベーションで大きな一歩目を踏み出せば目標が達成できるような感覚に捉われますが、実はこれ逆効果なのです。どういうことかというと、モチベーションは必ず上がったら下がる性質を持っており、気持ちのリバウンドを起こします。大きな一歩目を踏み出しても、二歩目、三歩目を踏み出すころにはモチベーションがダウンしてしまって、そのまま失速ということになりかねません。そこで私は必ず“小さな一歩目”を大切にするようクライアントにも説きます。
仮に2018年中が目標達成の期限だったとしましょう。1月から大きな一歩目を踏み出して加速したものの、途中でモチベーションのリバウンドを起こし、「先が長いなぁ」「はじめてのチャレンジなので不安だなぁ」「今日は面倒くさいなぁ」などと負の心のつぶやきに負けてしまうこともあるでしょう。そんなとき、大きな一歩ではなく、小さな一歩に「行動のサイズを変換」することができれば、どうでしょうか。「目の前のことだけに集中すればいい」「小さな一歩なら簡単なのですぐ終わる」「小さな一歩なので特に不安もない」と、ポジティブに腰を軽くしてくれます。
たとえばあなたが英会話の習得を今年の目標に掲げていたとしましょう。まずは英会話学校に行って、移動中はイヤホンを耳に差し込みヒアリングの練習、手には単語帳を持って暗記に励み、帰宅したら字幕なしの映画を鑑賞、そのあとは英字新聞を熟読。これを1日のうちにこなそうとすると、本音では「面倒くさい、苦しい、このままでいいのかな?」と負の感情で疲れませんか? このような大きな歩幅の行動では、すぐに挫折してしまいます。
そこで、思考を小さな行動サイズに変換します。気持ちが乗らないときは、あれこれやらず、まずは今日は単語を10個だけ覚えよう。あとのことは考えない。こう割り切れば、挫折してしまいそうでもすぐに結果を出せます。ここで行動にエンジンがかかり、物足りなさを感じたらはじめて、次の行動を重ね合わせていくという発想に切り替えるのです。
何もこれは1年がかりで取り組む目標達成のためだけではありません。私たちの日常の仕事の場面でも同じことです。来週提出の提案書の作成がto doリストにあるけど、ずっと手つかず状態。どうしようかと考え、気合いを入れ直したところで気乗りしないこともあるでしょう。そこで、「提案書の作成」を小さな行動サイズに変換します。
まずは箇条書きでメモだけつくる、レイアウトだけ考えてみる、それも面倒で着手できないならソフトを起動してタイトルだけ書いて終わる。それでもまだ腰が重いようであれば、パソコンの電源を入れてみる。そんなレベルでOKです。人に話すと笑われてしまうレベルのサイズでちょうどいいのです。あえて行動の第一歩目をまわりに宣言する必要がないからです。
こんなレベルでいいのかな? と思うサイズに変換して踏み出す極めて小さな一歩目を「ベイビーステップ」と呼びます。文字通り、赤ちゃんでも越えられる高さのハードル感というニュアンスです。どんな目標もベイビーステップ思考を持ち、瞬時に小さな一歩目に変換できるなら、常に不安や面倒くささが介在することもなく、目標達成まで行動の挫折を避けることが可能になります。
囲碁の世界では「着眼大局 着手小局」という言葉があるそうです。大きな視点で戦況を見極め(着眼)、小さな一手(着手)を大切にすること。でも私たちは逆のアプローチになるようです。「着眼小局、着手大局」、つまり小さな視点で状況を見てしまい、その割に大きな一歩を気合いを入れて踏み出そうとしてしまうのです。頑張らなくてもいい、気合いも入れなくてもいいから、小さな一歩目に行動サイズを変換すること。これが2018年目標達成への近道となる行動法というわけです。
ただし、小さな一歩といってもゆっくりと踏み出していてはいけません。あくまでも、小さな一歩を高速で積み重ねていくイメージで行動してください。大きな一歩で挫折するリスクを減らし、小さな一歩の高速な積み重ねで挫折せずに目標達成までスピードアップするスタンスです。
特に、挫折してしまうそうなとき、やらなければいけないとわかっていて先延ばしが続くときなどに、このベイビーステップ思考があなたの行動を加速させる特効薬となります。
いかがでしたか? 2018年は残り約10か月。ぜひ、目標や行動の軌道修正をいまのタイミングで行い、最後まで駆け抜けてくださいね。
【著者Profile】
鈴木 進介(すずき・しんすけ)
思考の整理家。経営コンサルタント・(株)コンパス代表取締役。1974年生まれ。思考の整理術を使った問題解決支援という独自の手法をとる。25歳で起業後、「経歴なし・金なし・人脈なし・ノウハウなし」の4重苦からスタートしたため、3年以上まともに給与が取れずに挫折続きの生活を送る。その後、思考を整理すれば問題の9割が解決していることに気づき、思考の整理術に開眼。以来、10年以上にわたり研究を独自に重ねて体系化。近年は「思考の整理家」として講演活動や人材教育などにも力を入れている。
http://www.suzukishinsuke.com/
[近著]
「1日10分 「じぶん会議」のすすめ」(WAVE出版)
http://www.wave-publishers.co.jp/np/isbn/9784866210254/
「1分で仕事を片づける技術」(あさ出版)
http://www.asa21.com/book/b325627.html
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