アリの身体を乗っ取るキノコ、花そっくりに化けるカビ……そのしたたかさには目を見張るものがあります。彼らの変幻自在な生態を、ちょっとだけのぞいてみましょう。
4月11日、アリを操るキノコや花に擬態するカビなど、キノコとカビの変幻自在な生態を綴った「奇妙な菌類~ミクロ世界の生存戦略」が発売されました。
この本によると、菌類は、わたしたち人間と同様、自分で養分を作り出すことができず、人間も菌類も、栄養をほかの生物に頼って生きるしかないと説明しています。キノコは、カビや納豆菌、病原菌などと同じく菌類のなかの「真菌」に分類され、これら菌類の生態は、非常にユニークなのにも関わらず、一般にはほとんど知られていないといいます。
上の写真は青色の珍しいキノコ「ソライロタケ」。直径が2~3.5cmと小さく円錐形の中央が尖ったような形状で、表面に傷がついたり触ったりすると黄色に変色します。(提供:大江友亮)
こうした菌類が、他の生物から養分を得る戦略はまさに知性的。本物の花そっくりに化け、アリの身体を乗っ取って操り、罠を使って狩りをする……こんなことができるキノコとカビ(真菌)があるのです。しかもこれは、さまざまな菌のなかのごく一部。その他、こうした菌類には以下のように驚くべきエピソードがあるようです。
●ある地衣類(菌と藻の共生生物)は、10日間の宇宙空間にさらされても生き残った
●植物は、土中の菌根菌を通してコミュニケーションしている(害虫に襲われたとき、その情報を伝達して防御物質を放出するなど)
●航空機の燃料タンクにジェット燃料を糧としているカビがいた(燃料タンクに小さな穴が開いたことから判明)
●プラスチックを食べる菌がいる
宇宙空間は-270℃で湿度はもちろんゼロ。そのような環境で10日間も生き残るとは驚きですね。一見、食料にはならない燃料やプラスチックまでも栄養にする点からも、とにかくタフな生物だというのがわかります。なお、進化的にみると、菌類は植物よりもずっと人間を含む動物に近いとのこと。アリの身体を乗っ取り、擬態を行う例のほかにも、まだまだ知られざる能力がまだありそうです。菌類は、私たちが考えているよりずっと頭がいいのかもしれません。
【URL】
NHK出版 https://www.nhk-book.co.jp/
「奇妙な菌類~ミクロ世界の生存戦略」の紹介ページ https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000884842016.html