クオカードを私用に使うのはグレーではなく黒!
――ポイントカードに対して、クオカードはいかがでしょうか?
市野 まず、ポイントカードとクオカードは違います。どこが違うかと言うと、まずポイントはあくまでもポイントであるのに対し、クオカードは「物」に値するものです。ですので、これをなんらかのカタチで自分の懐に入れるとなると、これは横領になります。つまり、ポイントカードを私用で使うことがグレーだとしたら、クオカードを私用で使うのは黒です。
――ただ、例えば地方出張などの際、1泊8000円のホテルに泊まると、3000円分のクオカードをプレゼントしてくれるようなところもあります。こういった場合は会社に申請すべきでしょうか?
市野 申請すべきです。実質5000円で泊まれるところを8000円で宿泊し、会社に経費として請求し、残額の3000円を懐に入れるということですから、一般的な企業でしたら懲戒相当だと思います。
――一方、会社によっては「出張は一泊一律1万円支給」というところもあるようです。この場合は領収書を提出せず、そのまま1万円内で納めれば良いというルールですが、そうなると例えば、ホテルを6千円で済ませてしまえば、残りの4千円を懐に入れてしまうことも可能です。この場合も横領にあたるのでしょうか?
市野 一律支給ということであれば横領にはあたらず、問題ないでしょうね。こういった場合はおそらく会社側の管理コストの側面があると思います。領収書や経費を細かく計算するためにも人件費がかかります。むしろそれを放棄して、一律いくらとしたほうが合理的だと思えば、こういったルールを採用するのだと思います。
同じようにポイントやマイルなどの件も、これを管理するために人件費がかさむのであれば、煩雑な管理は放棄して、「まぁ少々のことはご自由にどうぞ」という場合もあると思います。
グレーなことは「メール」で総務部署に細かく問い合わせる!
――決済にともなう環境が多様化する昨今ですが、特にこれからのビジネスマンがポイントカードなり、マイルなりを正しく扱うためには何をすべきでしょうか?
市野 まず会社の総務に問い合わせるのが良いでしょうね。直属の上司とか同僚ですと無自覚にルール違反をしていたりして、「上司がやっているんだから大丈夫」と思っていたらとんでもなかったなんていうこともありますので。あと、社内でのやり取りであっても、なるべくメールでやり取りをして、経緯を残しておくことも大切ですね。
弁護士にご相談にいただくビジネスマンの方は、会社とのトラブルによる解雇にまつわる話が一番多いんです。解雇に至るまでには、何がしかの経緯があったはずですが、そういったものが証拠として残っていたほうが良いです。残業にしても、勤務記録やタイムカードは自分でもきちんと残しておいたほうが良いでしょうね。
ひと昔前の終身雇用時代と違って、ちょっとしたミスや失態で職を失うこともある時代。もちろんポイントカードやマイルカードの扱いには注意をはらいつつ、それ以外の勤務状況においても、うかつな言動は禁物です。できるだけ長く会社との関係をうまくするためにも、社員個々が自立した意識で働くことを求められている時代と言えるかもしれません。