新入社員として会社に入ると、誰かしら「教育係」と称した先輩が仕事のノウハウを教えてくれることが多い。一言も聞き漏らすまいと、先輩の言葉ひとつひとつを真剣にメモした人も多いだろう。
けれど、仕事以外のこととなると、なかなか教えてもらえる機会ってないものだ。
敬語やビジネスマナーだったら、さまざまなハウツー本が溢れているから、独学で学べる。でも、そんなスキルやマナー以前に、身につけておきたいことがある。
それが、「仕事のルール」である。
たとえば、仕事中の服装のこと、夏休みのとり方、会社の先輩との距離感、歓送迎会での振る舞い方。
同期が同じ部内にいれば相談できるが、新人の配属は各部署に一人だけというケースも多いだろう。そうなると、先輩たちの様子や雰囲気を見ながら、手探りで正解を探していくしかない。
配属後の服装、どうする?
大学を卒業するまで地元で実家暮らしだった私は、就職で初めて上京した。
初めての都会。初めての社会人生活。初めての一人暮らし。何から何まで初めてづくしで不安だらけだったが、こと服装に関しては本当に困った。
営業職ながらも割と服装は自由な職場だった。が、だからこそどんな服装がベストなのかがわからない。男性は皆スーツだが、女性の場合はそれぞれだった。ある先輩は、カッチリとしたジャケットを常に羽織っていた。ある先輩は、比較的カジュアルなスタイルが多かった。隣の部署に目を向けると、完全にラフなスタイルの人が多い。
もちろん、担当している仕事内容やその人のキャラクターによって違うのだとは思いつつ、研修を終えて本配属されたばかりの私は、何を着たら良いものか頭を悩ませる日々だった。
手持ちの服も少なかったため、かなり長い間リクルートスーツにシャツやカットソーをあわせてしのいでいた。あのスタイルが間違っていたとは思わないが、華やかなクライアント相手の打ち合わせだってあったのに、なんとも地味な田舎者と映っていただろう。
実際、入社して数年が経ち、仲の良い取引先の方と食事をしていたとき
「それにしてもさ、水谷さんって入社したての頃は『どこで買ったの?』って服装してたよね~」などと笑い話をされたほどだ。自分でも「よくあんな服装で出社してたな…」と赤面してしまう。
もし、ここまで読んで「実は私も同じです!いろいろと悩んでます!」という人がいたら、ぜひおすすめしたい本がある。『入社1年目女子 仕事のルール』(平原由紀子・著/日本能率協会マネジメントセンター・刊)だ。
今回は、本書の中から「必ず役立つ仕事のルール」をいくつかピックアップしよう。
リクルートスーツはいつまで着ればいい?
いわゆるリクルートスーツをいつまで着ていたらいいかは、素朴な疑問であり、明確な解答が得られにくい。前述したように、私自身が迷っていたことのひとつだ。
平原さんのアドバイスは、「リクルートスーツは、最初の研修期間に着るのが一般的。研修期間が特にない場合は、初日や挨拶回りの日はスーツを着るのがおすすめ」なのだとか。
加えて、ジャケットやスカートとしてバラバラで着られるような、薄い素材のスーツがあると便利だ。もしも黒のリクルートスーツを持っていたら、次は薄い生地の紺のスーツを買い足すことがおすすめなのだとか。
また、「オフィスカジュアル」という定義に悩む人も多いだろう。この服は絶対にNG!というライン引きは難しいが、露出が多いもの、生足、極端に派手なデザインのものは避け、あくまでも「清潔感のある服装」を心がけると◎。
そして、ジャケットは常に会社に置いておき、いつ取引先に出向いても恥ずかしくないような服装を目指すのがおすすめだ。
ああ、これらのアドバイスを、タイムマシンに乗って入社1年目の私に教えてあげたい!
夏休みは自由にとってもOK?
もうすぐ夏休みがやってくる。会社として一斉休暇をとるところもあれば、「7月から9月までの間に○日休みがとれる」いう会社もあるだろう。
自由に休んでもいい場合、本当にいつでもいいのかというと、決してそうではない。本当に好きなときに勝手に休みを取れば、「常識知らずの新人」というレッテルを張られてしまうかも。
「誰かが休みをとると、その分ほかの人が仕事をカバーしなくてはいけない」ということを念頭に置くべきだと平原さんは語る。新入社員の間は、上司や先輩が休みをとった後で、バランスを見ながら休みを決めると失敗が少ない。繁忙期があれば、その時期も避けるべきだろう。
入社して数年経てば、取引先の休みに合わせて休みをとることも必要となってくる。夏休みをとること自体はとても大切で楽しいことだが、「自分本位で休みを決められないことが多い」と肝に銘じておくていいかもしれない。
初めての出張で気をつけるべきことは?
入社して少しずつ仕事に慣れてくると、出張に行く機会も出てくるだろう。上司に同行して出張する場合、あらかじめ気をつけておくべきことがいくつかある。
たとえば、新幹線のチケットを頼まれた場合、上司と隣の席にするのか、前後など少し離れてとるのがいいのかは、上司に確認すべきだと平原さん。そして、移動時間の過ごし方にも少し注意が必要だそうだ。
移動時間が長い場合、車内で打ち合わせをしたいと考えている上司もいる。そんなとき、乗ってすぐに眠ってしまったら、打ち合わせができないまま現地に到着することになってしまう。
また、出張先に知り合いがいる場合、つい夜に会う約束をしたくなるものだが、もしかしたら取引先と食事になるかもしれない。「旅行気分で気を抜かないように」ということが重要だ。
先輩たちの失敗談こそ最大のアドバイス
ほかにも、『入社1年目女子 仕事のルール』には、上司が任せたくなる仕事のコツや周りと差がつくちょっとした気くばり、そして10年後に後悔しない働き方についても、丁寧に教えてくれている。
著者の平原由紀子さんは、老舗広告代理店に勤めた後、国内外の有名ブランドをクライアントとした広告代理店を立ち上げた女性。現在は、ファッション業界を主とした企業向けのコンサルティングやアドバイスを行うと同時に、「手みやげコンシェルジュ」としてメディアでも活躍されている。
本書には、そんな平原さん自身の、そして彼女の周りで活躍している各方面の女性たちの体験談・失敗談をもとに、新入社員のときに知っておきたかった社会の常識や仕事のルールが取りまとめられている。
自らの失敗を通じて学ぶことはもちろん大切。だが、本来の仕事以外でつまづくことが少ないようにという平原さんのアドバイスとメッセージは、新入社員ならずとも一読の価値あり。女性向けの内容ではあるが、男性が読んでも気づきが多いのではないだろうか。就職祝いにもピッタリの一冊である。
【書籍紹介】
入社1年目女子 仕事のルール
著者:平原由紀子
発行:日本能率協会マネジメントセンター
学生から社会人になるのは、誰だって不安がたくさんあるもの。「ビジネスマナーや敬語を勉強しなければ」と思う方も多いかもしれませんが、じつは働き始めてから失敗してしまうのは、マナーや敬語以前のことです。また、ビジネスの社会は、まだまだ男性が中心なのも現実。とくに女性は、そうした特有ルールを知らないせいで、努力が報われないことがじつは多いのです。本書は、先輩たちが失敗した経験談をもとに、同じ失敗を繰り返さないための仕事以前のルールをまとめた一冊。女子だからこそ知っておきたい「社会人の基礎の基礎」を紹介します。