SNSなどを通じて手軽に周りの同世代とくらべられるようになった情報社会では、「個性」や「自分らしさ」が重視されているように感じます。
・あの人は自分らしい働き方をしていて羨ましい
・サラリーマンでも、自分らしい仕事がしたい
・周りに囚われず、私らしく生きたい
など思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんななか、とても自分らしく生きている松浦 弥太郎さんの『「自分らしさ」はいらない くらしと仕事、成功のレッスン』(松浦 弥太郎・著/講談社・刊)という本を見つけました。自分らしく生きる方が正しいと思っていたのですが、一体どういうことなのでしょうか?
「自分らしさ」がいらない理由
正直、自分らしく生きているか? と聞かれても「うーん」としか答えられません。好きな服も着られているし、お仕事もさせてもらっているし、食べたいものも食べられている。でも、「もっとお金があれば!」とか「休みたい!」とか人生に不満はいっぱいあります(笑)、今の自分が自分らしいかはちょっと疑問…。早速、松浦さんに聞いてみましょう!
つまるところ、自分らしさとは、結果論です。
自意識を捨てて、精一杯やったとき、他人が「あなたらしい」と言ってくれるもの。それが本当の自分らしさだと思うのです。
そうであれば、自分が思う「自分らしさ」は邪魔者にすぎません。
(『「自分らしさ」はいらない』より引用)
なるほど。最初から「私は自分らしいのよ!」と決めつけてしまうと、それが邪魔して本当の自分らしさが出てこないということなんですね。羨ましいな〜と思っているあの人も、「よし、自分らしく生きるぞ!」と意気込んだ結果、自分らしい生き方をしているのではなく、自意識を捨てて、精一杯やっているのを見た周りの人が「あの人らしいね」と言ってくれているということなのですな。
では、どうしたら変なしがらみに囚われることなく、生きていけるのでしょうか? まずは仕事において、どんな意識をしたらいいか教えてもらいましょう。
アイデアを生み出すためには「無知な自分」になる
30代ともなると「知っていること」が増えてきますし、自分のキャリアを活かしてお仕事されている方も多いでしょう。そうなってくるとどうしても働き方も固定されがち。
また、30代で役職が上がってくると新しいアイデアを求められることも多いでしょう。「この企画、どう思う?」とか「新しい企画について考えて欲しい」と言われた時には、自分のキャリアをベースに考えてしまうように思いますが、松浦さん曰く「どんなに知識が豊かでも、無知な自分になることが大切」とのこと。どのような気持ちで向かい合うのが良いのでしょうか?
それにはプライドを捨て、自分らしさを捨て、自分をゼロにすることです。
アイデアというのは、とても幅が広くて、すべてが新発明で特許が取れるようなものとは限りません。
(『「自分らしさ」はいらない』より引用)
「俺のアイデアは最高だから!」と思って企画を考えるのではなく、あくまでも目線と腰の位置を低く、使う人や参加する人に合わせることが大切なんですね。アイデアも「俺が考えた、俺が最高だと思うコト」ではなく「世の中のみんながうれしいコト」にしていくことが大切。確かにヒット商品を思い浮かべて見ても、制作者の「俺が!俺が!」という商品より、「使う人」が喜ぶものばかりですもんね。
成功できる人に共通しているのは、頭の良さより心のクオリティ
では、どんな人を目指せばいいのか。仕事で成功したいならどんな心持ちでいたらいいのか、迷ってしまいますよね。再び、松浦さんに成功している人に共通していることを教えてもらいましょう!
成功した人、すごい人というのは、心を人一倍働かせようと意識し、コンディジョンを整え、精一杯の努力を続けている人だと思います。成功する人は、体だけではなく、頭だけではなく、心が働いているということです。
(『「自分らしさ」はいらない』より引用)
ポイントは「心」なんですね。心の使い方は、授業で教えてもらっていないため「わからないよぉー」という方がほとんどだと思いますが、最終的に意思決定をする時に「心」が使われているんだとか。普段意識しないと休業状態になっているので、今日から意識して「頭」を使っているのか、「心」を使っているのか考えてみてはいかがでしょうか?
心がざわついた時には、「はじめて」に挑戦する
とは言っても、すぐに心を使う! なんてことはなかなかないと思うので、「なんだか最近、仕事が行き詰まっているな〜」「なんとなく最近うまくいかないな」という人は、あえて「はじめて」にチャレンジしてみるのがオススメなんですって。
何もわからない。自分ではどうにもできない。ただ受け身になって教えてもらい、未知なることをスポンジのように吸収して、動いてみる。
何も知らない、すべてわからない。自分らしさを発揮しようにも手がかりすらない。
(『「自分らしさ」はいらない』より引用)
先ほど「自分をゼロ」にするというキーワードも出ていましたが、初めての経験は何事も「ゼロ」からのスタート。威張らずに、できない自分を認めて、教えてもらう・吸収する姿勢でいることで素直になることができ、心の使い方も少しずつわかってくるようになるそうです。
行ったことのない街に行く、いつもと違う帰り方で帰ってみる、飲んだことのないお酒で乾杯してみるなど、ルーティンになりつつあることに「はじめて」を追加してみるとヒントが見つかるかもしれませんよ!
自分らしさを超えていくこととは?
最後に『「自分らしさ」はいらない』で紹介されていた素敵な言葉をご紹介させてください。暮らしの手帖社の創業者、大橋鎮子(おおはししずこ)さんが、松浦さんによく話ししていたことがあるそうです。
「あなたがうれしいことではないし、あなたにとってすてきなことではない。読者にとってうれしいことなのか、読者にとって素敵なことなのか。それをいつも心で考えなさい」
(『「自分らしさ」はいらない』より引用)
これは「読者」の部分を変えれば、すべての仕事、生活において共通している言葉だなと思いました。例えば、家族(お子さんや両親、旦那さん)で考えてみれば今日の夕飯の食事も変わりますし、仕事(上司・部下、クライアント、顧客)で考えてみれば仕事のやり方も変わってくるでしょう。
「自分らしく働けているのかな?」とウダウダしているのであれば、自分を一旦ゼロにして、自分の心に耳を傾け、時には新しいことにチャレンジしながら、相手のために精一杯頑張ってみる。そうすることで、周りの人から「●●さんらしいね」と言われることがあるかもしれません。『「自分らしさ」はいらない』には松浦さんの優しい言葉で、ヒントがたくさん掲載されているので、仕事やプライベートで心がいっぱいいっぱいになっている方は、一読してみるのをオススメします!
【書籍紹介】
「自分らしさ」はいらない くらしと仕事、成功のレッスン
著者: 松浦弥太郎
発行:講談社
人気エッセイスト、前「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんの書き下ろし最新作、ついに完成!最新作のテーマは、くらしと仕事を充実させるためのレッスン。キーワードは「こころで考える」。そして、こころで考えたら、「何かを始めたいなら、『自分らしさ』など捨てたほうがいい」頭で考えることの限界を打ち破る方法ーー「自分らしさの捨て方」のレッスンを初めてみましょう。