これまで幾度となく言われてきているが、日本は災害大国である。今や、日本中どこに居ても安全は確保できない。最近では北大阪地震、西日本豪雨。竜巻だって起こる。いまこの瞬間に被災するかもしれない。
だからこそ、日頃から備えておくことが大切だ。
「そんなこと、何百回何万回と言われてるから、わかってるって!」というそこのあなた。では、いざというときに持って逃げるためのバッグに何を入れたらいいか、ご存知だろうか?
命を守るために、バッグに入れておきたい5アイテム
コラムの冒頭だが、いきなり答えを言ってしまおう。
1.スマホや携帯電話
緊急地震速報や情報収集のための必須アイテム。手動タイプの充電器があると、なお良し。
2.ホイッスル
軽く吹いても大きな音が出せて、中に玉が入っていない、壊れにくいものがベスト。子どもたちにも、防犯ブザーより電池要らずのホイッスルを持たせたい。
3.LEDライト
イマドキ電球タイプの懐中電灯はナンセンス。LEDタイプの、できればヘッドライトが◎。
4.ピンセットや小型ナイフなどがついたマルチツール
日常生活の中でも役立つものが多いので、ぜひ携帯を。ただし、銃刀法に触れない刃渡り5.5cm未満のものでも、正当な理由なくしては持ち歩けない。「子どもの爪を切るため」「今からキャンプで使う」などはOKだが、「防災・防犯のため」は正当事由にならないのでご注意を。
まずは、この4点。すでにお手元にあるだろうか。
実は先日、アウトドア防災ガイド・あんどうりすさんの防災講座に参加したのだが、内容が本当に目からウロコというか、「お~!!!!」と感動することしきりだったため、すぐにりすさんの著書を購入。いまご紹介した4アイテムは、『りすの四季だより』(あんどうりす・著/新建新聞社・刊)からピックアップした。
もちろん、自宅に非常用の持ち出し袋を用意、水やレトルト食品などを常備しておくことは大前提だが、それらすべてをバッグに入れたため荷物が重すぎて逃げられないなんて、本末転倒で悲しすぎる。
着の身着のまま逃げるとき、また外出先で被災した場合のために、普段から持ち歩ける防災用のバッグも用意しておきたい。
アウトドア用の軽いリュックを普段使いしてもいいし、スーツに合わないのであれば、ビジネスバッグの中に折りたたんで入れておいてもいい。毎日の外出時から、軽いバッグと上記4点を入れて持ち歩くことがおすすめだ。
何より大切なのが「知恵のある自分自身」!
さて、では最後の1アイテムは何だろうか。答えは5.知恵のある自分自身。
今回りすさんの講座を受け、著書を読み、もっとも大きな気づきだったのが、「マニュアルに頼りすぎていること」を自覚したことだ。
たとえば、東日本大震災以降、スーパーのレジ袋でおむつを作る方法が広まった。私も子育て講座で教えてもらったことがある。レジ袋の左右の端を切って広げ、中に布などをあてるというものだ。けれど、自分の子どもたちが大きくなり、おむつが必要なくなったので、この知識はもう自分には不要だと思っていた。頭の片隅に追いやっていた。
だが、このおむつの知識から得られることは、スーパーのレジ袋がなければ作れない! ではなく、赤ちゃんがいないから関係ない! でもなく、防水素材と吸収素材の組み合わせが非常時に役立つということだ。
おむつの外側はポリエチレンなどの防水素材を探せばいい。それさえ知っておけば、レジ袋だろうがラップやポケットティッシュの外袋だろうが、撥水のガムテープだろうが、すべてOKなのだ。
その防水素材の内側に、吸水できる素材のものをあてればいい。この組み合わせは、赤ちゃんのおむつに限らず、生理用品にだって、非常時のトイレにだって活用できる。
「○○と○○を使って△△を作る」というマニュアルだけを頭に入れるのではなく、仕組みを理解することで、いくらでも自分で活用していけるというわけなのだ。
以前「ツナ缶でろうそくができる」という災害時のアイデアが話題になったが、「ツナ缶とこより」とだけ丸暗記していると、水煮のツナ缶を用意してしまうという事態が起こりうる。「油をティッシュなどのこよりに染み込ませて燃やす」という仕組みを理解していれば、ツナ缶でなくても、オイルサーディンでもいいと気づけるのである。
仕組みを知れば、臨機応変に行動できる。今後、様々な防災のアイデアを目にしたときは、ぜひその「仕組み」に着目することをおすすめしたい
「防災用」をあえて揃えるのではなく、日常でも使えるものをチョイスしよう
もうひとつ、りすさんの教えで気づいたことは、「防災は日常生活の延長線上にあってこそ、役立つ」ということ。
たとえば雨を伴う非常事態の場合、レインウエアがあるとかなり助かる。だが、100均のものでは心もとない。
おすすめは、透湿防水素材でできているアウトドア用レインウエア。普段使いにも便利で、そのまま災害用としても使えるからだ。お手入れすれば10年はもつので、確かに初期投資は必要だが、結果的には良いものを長く使うことの方がお得なのではないだろうか。
さて、ここで迷うのが、子ども用だ。すぐにサイズアウトしてしまうことを考えると、上下セットで6000円は高すぎないだろうか?と悩む人も多いだろう。
そこで、りすさんはこうひらめいた。
アウトドア用レインウエアは、世界中どのメーカーでもYKKのファスナーが使われていることが多い。そのため、製造番号が同じであれば、大人用と子ども用をジョイントできるのだ。
赤ちゃんを前で抱っこするときは、ママと子どものコートをジョイントして、ママコートに。歩けるようになったら、上だけ着せてレインコートに。もっと背が伸びたら、上下で着せる、といったように、120cmサイズの子ども用レインウエアを0~6歳まで使い倒したとのこと! このアイデアならば、1000円程度のすぐに濡れてしまうようなものを成長にあわせて買い換えるよりも、ずっと経済的だ。
災害用をあえて用意するのではなく、普段使いできる自分のお気に入りを揃えておくこと、そしていろいろなアイデアを持って活用することが、何より大切なのである。
「やらなきゃいけない」が「やってみたい」に。楽しみながら防災対策をしよう
『りすの四季だより』には、子どもでも大人を助け出せる古武道を使った救出術や、川遊びに必須の滑りにくい靴の作り方、寒さ暑さに対応する着こなし術、災害直後のトイレ問題、部屋の中の耐震化と家具固定法などなど、ぜひ家族で一度読んでおいてほしい内容が満載である。実際、私も実家の両親に1冊送ったほどだ。
ポイントは、いつ起こるかわからない災害に恐れるが故に「防災対策は嫌なこと」とネガティブに捉えるのではなく、「ちょっと試してみたい、普段から楽しみながら挑戦できるポジティブな防災アイデア」ばかりだということ。
もちろん、この本さえ読んでいれば必ず助かる!のではなく、りすさんから学んだ知識を応用できる知恵を身につけることが最大の目標だ。
備えあれば憂いなし。楽しみながら備えて防災を日常にし、心にゆとりを持って毎日を送りたい。
【書籍紹介】
りすの四季だより 家族の笑顔を守る暮らしの知恵
著者:あんどうりす
発行:新建新聞社
「やらなければ」が「やってみたい」に変わる! 口コミで年間100回以上の講演依頼がある伝説の防災講座、初の本格書籍化! 本書では、防災をマニュアル化するのではなく、アウトドアの知恵と技術を使って「読者と生き延びるための『知恵』を分かち合う」ことを目指しています。