ライフスタイル
2018/8/3 20:45

辛口野球解説者・里崎智也の「下克上人生相談」03――10歳以上も年下の部下たちが自分の思うように動いてくれません……。

強打の捕手として千葉ロッテマリーンズで16年間プレーし、2度の日本一に貢献。2006年のWBCでは正捕手として世界一&大会ベストナインも受賞した里崎智也さんが、読者の悩みをズバッと解決する。第3回目は理想のリーダー論について!

 

 

【今回のお悩み】

10歳以上も年下の部下たちが自分の思うように動いてくれません。どのように指導するべきでしょうか?

10人ほどの製作チームのリーダーです。10歳以上も年下の部下に「俺が責任を取るから、こうやってほしい」と指導したら反発されます。かと言って、ある程度任せてしまうと、うまく回らず……。コミュニケーションを取ろうと思い、飲みに誘ってもまったく来ません。どのようなアドバイスをすれば良いか悩んでいます。

(40代・男性・会社員)

 

 

「俺が責任を取る」と言う人間ほど信用できない

上司に対して尊敬や信頼といった気持ちがなければ、部下は従いません。厳しく言うと、相談者さんは部下と意思疎通ができていないし、尊敬もされていないように感じます。最低限、自分がそつなく仕事をこなす姿を見せて、そのうえで部下が困っているときにきちんとサポートする。それができてこそ、信頼を得られるのです。

 

個人的には、「俺が責任を取る」と言う人間ほど信用できません。責任を取るということは、失敗したときの給料の補填と、役職や立場を現状維持させることなんですよ。それを、10人程度の小さなチームのリーダーができますか? 最終的に自身の責任を取るだけです。そんな薄っぺらい言葉で部下を従わせようという人は、無能以外の何物でもないと、僕は思いますね。

 

 

最初に〝ゴール〟を示してそのあとで方針を伝える

プロ野球の世界における“上司”にあたるのは監督やコーチですが、信頼できるコーチは、自身の哲学や論理をしっかり説明できる人。僕が選手時代に出会ったなかでは山中(潔)さんですね。いくつか方針を示しつつ、選択権を選手に委ねて、責任を与えるのです。

 

「Aというやり方がある、Bもある、Cだってある。どうする?」

 

「じゃあBで行きます」

 

「よし。じゃあ、それを徹底的に追求して行こう」

 

なので、Aを選んだりCを選んだりする選手もいる。どれも、それぞれの「正解」なんです。

 

そもそも、この相談者さんは、自分の方針を部下に示せているのでしょうか。チームとしてどうしたいのか、具体的なことを伝えていなければ、迷いを与えてしまう。僕が部下なら「何がしたいんや」って思いますね。最初にチームとしての“ゴール”を示したうえで、自分のやり方、方針を伝える。それを踏まえたうえで、部下がどうやっていきたいのかを聞いていかないと。

 

言ってしまえば、まだ試合すら始められない段階ですよ。試合前のミーティングからやり直し! 自分の方針を浸透させていないから、選手がバラバラに動くんです。まずは枠組みを決めて、その中で部下を自由にやらせてみましょう。困っている部下がいたら、具体的なやり方をいくつか示してあげる。それを部下に選ばせれば良いんです。

 

 

【これで下克上せよ!】

まず具体的な方針を示してから部下に合うやり方を選ばせる」

 

【お悩みスコアボード】

試合に勝つための戦術を共有させる段階

相手投手を打ち崩したり、相手の主砲を抑えたりするための、明確な指示を与える前の状態。しっかりとミーティングを行って、選手全員が同じ考えを共有できる土壌を作ろう。

 

 

今月の野球“知っ得”ネタ!!

選手の長所を伸ばす方針で名捕手を育てた山中コーチ

里崎氏の恩師である山中 潔さんは、現役時代に5球団を渡り歩き、引退後は千葉ロッテなどで17年間コーチを務めた。自分の理論を無理強いせず、各選手に合った方法論を一緒に模索する指導法に定評がある。現在は東京国際大学野球部監督。

 

 

【PROFILE】


里崎智也さん

1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工、帝京大を経て98年ドラフト2位でロッテに入団。05~10年まで6年連続2桁本塁打を放つなど、強打の捕手として活躍した。現在は野球解説、講演活動、執筆などマルチに活躍中。

 

 

里崎さんに聞いてもらいたいお悩み大募集!

人生、仕事、恋愛、お金など、里崎さんに聞いてもらいたいお悩みを募集しています! 詳しいお悩みを次のアドレスまでお送りください。getnavi@gakken.co.jp

 

文/山西英希 撮影/佐坂和也 ヘアメイク/宮田裕香子 スタイリング/佐々木誠 題字/道口久美子

衣装協力/ザ・スーツカンパニー 新宿本店