ライフスタイル
2018/9/19 22:00

あのカフェが、お客さんの心を離さないヒミツとは――『自分でカフェを作りたい人の本』

最近、ふと思う。いつまで今の仕事ができるだろうか。座ったままキーボードを叩くという作業が中心のフリーランス生活を25年続けてきた。今さらライフスタイルを根本的に変えようとするのは無理な話だから、できる限り長く続けていきたいっていうのが本当のところだ。だから、70歳を過ぎて第一線で書き続けている偉大な先輩方の姿に、20年後の自分の姿を重ねて見るよう心がけている。

 

80年代がテーマのバー

贅沢を言わせていただけるなら、今の仕事のほかにぜひやってみたいことがひとつある。カウンター10席くらい、4人用テーブル2つくらいの規模のバーだ。一人バイトさんに入ってもらえば、カウンターの片隅や空いているテーブルにラップトップを置いて、原稿を書くこともできるだろう。

 

店のコンセプトは80年代洋楽。“STILL IN 80’s”とか“80’s FLASHBACK BAR”みたいな名前がいいな。アメリカ西海岸の都市の郊外にあるローカルバーの雰囲気を出したい。こういうお店ができるなら、営業時間中はお店にいて、原稿を書きながら意味のある時間を過ごすことができる。

 

 

サッカー元日本代表が働くカフェ

今はまだ完全な夜型人間だが、もう少し年齢がいったら徐々に朝方にシフトしていくかもしれない。それでも、理想として思い描いているのはお店に出ながら原稿を書くというスタイルだ。ならば、どんな可能性があるか。レストランはお客さんの邪魔になるから、店の一角を作業スペースにするのは無理だろう。昔ながらの喫茶店に憧れる部分もあるが、そういう業態はグルメコーヒーを出すチェーン店に太刀打ちできない可能性が高い。

 

少し前、テレビでサッカー元日本代表の加地亮さんの現在の仕事を紹介する番組を見た。ご存知の方も多いと思うが、今は奥さまが経営されているカフェのスタッフとして働いていらっしゃる。

 

このお店の雰囲気、なんとなくアメリカ西海岸っぽい。もっと絞り込むならパサディナとかシアトルっぽくて、インテリアもとてもかわいかった。カップやソーサーなんかにもこだわりが感じられた。

 

あくまでもバーにこだわりたい気持ちもある。でも、窓越しの木漏れ日がやさしくテーブルに降り注ぐような、そういうお店ならいるだけで楽しいだろうなと思った。まあ、当然ながらバーにしてもカフェにしても、妄想の中だけでの話なんだけどね。

 

 

お客さんの心を離さないヒミツとは

そんな筆者が、妄想から一歩踏み出して具体的な行動に出るきっかけを感じさせてくれる本を紹介したい。『自分でカフェを作りたい人の本』(五味美貴子・監修/学研プラス・刊)は、カフェ経営のノウハウだけについて語られたものではない。個性豊かな13のお店の紹介を通じて、13人の経営者のライフスタイルが見えてくる作りになっている。

 

「おいしいコーヒー」「おしゃれなインテリア」「スイーツ」「くつろぎの空間」。それぞれの経営者がこだわり、極めようとするもの。お客さんが求めるもの。いずれもさまざまあるだろう。“はじめに”に、次のような文章がある。

 

この本を手に取ってくださっているあなたは、いつかこだわりを詰め込んだカフェをつくる側になりたいと思い描いているはず。カフェに人を惹き付けるオリジナリティが求められている今、お客さんの心をしっかりとつかんで離さないヒミツを知っておくことがとても大切です。

『自分でカフェを作りたい人の本』より抜粋

 

お客さんの心をしっかりとつかんで離さないヒミツとは、もっと具体的に言うとどんなものなんだろう。

 

 

覚悟とパッション

カフェ経営にしてもフリーランスにしても、そしてほかのどんな仕事にしても、確実な出発点は計算ではなく、パッションと表現されるものだと思う。本書に紹介されている13人の経営者が語る言葉を通じて感じられるのも、まずはパッションだ。

 

 

カフェの経営に必要なのは「忍耐力」と「アイデア」。続けていればしんどいときが多々ありますが、まじめにやっていれば、必ずお客さんが見てくれていて、評価してくれるのです。

何事もポジティブにいることも仕事のひとつだと思って、日々暮らしています。いつもポジティブでいる人が経営しているお店って、空気感や雰囲気に出ると思っています。

オープンしたときからずっと来てくださっていたお母さんと娘さん。成人式の日に「これからも長い付き合いになると思うので、晴れ着を見せに来ました」と母娘でいらっしゃいました。胸が熱くなりました。

『自分でカフェを作りたい人の本』より抜粋

 

お客さんの心をしっかりとつかんで離さないヒミツとは、第一にパッションなのだ。

 

 

ハウツー本というよりも哲学書

13のお店と、その店主のみなさんの人生。ページをめくるたびに、カフェ経営のハウツー本のはずなのに、哲学書を読んでいるような気になってくる。それぞれのお店のアイデンティティがダイレクトに伝わってくる写真も、とても美しい。

 

もちろん、カフェ経営が片手間でできるほど甘いものではないことはわかっているが、筆者の脳裏には、小さなお店のカウンターやテーブルでキーボードを叩いている自分の姿が浮かびつつある。

 

【書籍紹介】

自分でカフェをつくりたい人の本

著者:学研プラス、五味美貴子
発行:学研プラス

日本全国のカフェを取材して伺った、資金計画、物件探しなどの「リアルな話」のほか、カフェ・コンサルタント、カフェ開業の専門学校講師によるオープンまでに必要な資格や役所への届け出、仕入先の見つけかたなどの必須ノウハウを紹介。

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