5月16日から17日にかけて行われ、日本では初めての開催となったレッドブルエアレース。決勝の17日には、なんと約6万人の観客が訪れ、そのダイナミックさと美技で大興奮のまま幕を閉じました。結果は、多くのメディアで伝えられている通り、ポール・ボノム選手が51.502秒の好タイムを叩き出し、アブダビ大会につづき優勝の栄冠を獲得。今回は決勝当日の各チームの「ハンガー」を取材しましたので、その模様をお伝えします。
決勝数時間前とは思えない和やかな雰囲気!
そもそも「ハンガー」とは、機体の整備や補給を行う格納施設です。これは自動車レースで言えば「ピット」にあたるもの。場所は、会場からすぐ近く、千葉県浦安市の海に面する公園内です。各チームはここに司令塔を置いてレースの作戦を練り上げ、パイロットが競技へと飛び立っていきます。今回のレースでは予選前に続いて決勝当日もメディア向けに「ハンガーウォーク」を実施。決勝前の様子を間近に見ることができました。
ハンガーウォークがスタートしたのは午前9時半ごろ。すでに一部の機体は練習のために滑走路上にいましたが、各ハンガーには機体が並び、パイロット達はそれぞれのハンガーでメディア取材に応対。驚いたのは現場があまりにも和やかな雰囲気であったことです。決勝前だけに、さぞかし緊張感に包まれているのかと思い込んでいましたが、どのパイロットも笑顔を見せながらインタビューや撮影に応じ、これから決勝が始まるとはとても思えない和やかさを感じさせてくれました。
この日の一番人気は、唯一の日本人選手・室屋義秀選手のハンガー。地元だけに当然と言えば当然ですが、取材がスタートすると、多くのメディアが真っ先に室屋選手のハンガーへと向かい、室屋選手の周りには人だかりができました。メディアからの質問で「初めて日本で開催されることへの感想やレースの手応え」を聞かれると、室屋選手は「空から見ると海岸が人で真っ黒になっていて、これには感無量。日本で開催できて本当によかった!」と史上最多の観客を集めたことへの感想を述べてくれました。
柔和な人柄がにじみ出ていたのはポール・ボノム選手(イギリス)。前回の開幕戦を制し、通算16勝を獲得していただけに、その自信のほどが注目されたが、「これまでやって来たことを続けるだけ」と笑顔を見せながら淡々と回答。関西のテレビ局が視聴者向けにローマ字で書いたカンペにも嫌な顔一つ見せず丁寧に対応していた。その余裕とも撮れる様子は、さすがブリティッシュエアウェイズでB747の現役機長を務めているだけのことはある、と感じさせられました。
一方、和やかなムードとは裏腹に緊張感に包まれていたのが機体の整備や点検を行うスタッフ達です。前日の予選では1秒間に7人が入るという僅差での戦いになっているだけに、少しのミスも許されません。各ハンガーではモニターを睨みながらコンピュータの設定を見直したり、機体を懸命に手を入れしたりするスタッフの姿が見られました。その姿からはパイロットが最良の状態で競技に臨めるよう最善を尽くす意気込みがヒシヒシと伝わってきました!
ちなみに会場内のやりとりは、ほぼすべて英語。一応、ハンガーには通訳が待機していましたが、現れた選手にいち早くインタビューしたいなら、英会話に堪能な人が圧倒的に有利。エアレースの取材には語学力が必要だと実感させられたハンガーウォークでした。