首都ローマにカトリックの総本山バチカン市国を擁したイタリアは、言わずと知れたキリスト教の国。どこの街にもいくつもの教会があり、しばしば行われるミサの時間には街中に鐘の音が鳴り響きます。ミサには誰でも参加できますが、残念ながら犬猫は別。中にさえ、入ることができません……。
ですが、年に数回、例外があります。そのひとつが10月4日の聖フランチェスコの日。小鳥と話せたと噂の動物愛護派の聖人フランチェスコが、「動物だって、神の祝福を受ける機会があったっていいじゃないか!」と叫んだかどうかはわかりませんが、この日は、イタリア各地で動物にミサのチャンスが訪れます。
ミサが始まると、静まり返った犬たち…プチ奇跡体験!?
聖人フランチェスコは、イタリア中部アッシジ生まれの修道士(1182〜1226年)。フランチェスコ会(フランシスコ会)の創設者であり、1939年からはイタリアの守護聖人にもなった人気&有名な聖人のひとりです。
人物のみならず神のあらゆる被造物は天とマリアの子ども達であり、平等に愛すべき存在であるという「万物兄弟の思想」を持っていた聖フランチェスコ。伝説の多い人物ですが、動物と話ができたという記録も残されています。小鳥やセミ、ロバ、魚、さらにはオオカミなどに話しかけ、しかも心を通じあわせることができたとか。特に小鳥に説教(教理を説いて導くこと)は、彼を代表する伝説です。
そんな動物愛護精神の真髄、聖フランチェスコの日は、ワールド・アニマルデーでもあり、この日に近い日曜日には、イタリアのみならず世界各地の教会で、動物へのミサが行われています。
ここパレルモでも、10月4日当日に聖フランチェスコ・ダッシジ教会で、また10月7日には、パレルモ市郊外に広がる緑地公園に位置する保護施設、LEGA NAZIONALE PER LA DIFESA DEL CANE(犬の保護全国同盟)のパレルモ支部でミサが行われました。
イタリアには、各街に市営と私営の保護施設がありますが、こちらは寄付のみで飼育・運営しているボランティア団体。パレルモ支部では、約170頭の保護犬達が新しい飼い主を待っています。ミサ当日は、施設内の広場に、オリジナル寄付グッズを売るスタンドやドッグフードや毛布などの寄付コーナーも設置され、ちょっとしたお祭り状態になっていました。
飼い主に連れられた多種多様な犬たちも多数参加し、檻の中の保護犬たちも大興奮。170頭以上の犬たちが一斉に吠える大合唱は、会場の外、数百メートル先まで聞こえるほどで、犬好きですらひるむほど。むしろストレスになっているような気がしないでもないですが、それでも保護犬達を見て知って、万が一には貰い受けてもらう機会を増やすのは、決してマイナスではないはず……。
さて、大狂乱の犬の吠え声の中、本日の司祭、ドン・サルヴォ神父が到着。ひと休みを挟んで、犬舎の片隅でミサがスタートすると、あら、どうでしたことでしょう?先ほどまで、騒いでいた犬たちの吠える声が止まり始めたのです。ワンワンワン!…ワン!……ワン?ってな感じ。ミサも佳境になると、あたりはシーン。それこそ小鳥のさえずりさえ聞こえてきそうです。
「尊い主よ、すべての生き物に食べ物を与えてくださった!」「尊い主よ、日々の暮らしの苦難を助け、仲間となる動物を与えてくださった!」(「家畜の祝福の祈り」より)神父に続いて唱和する人々の祈りが、犬達にも届いたのでしょうか?静粛に聞き入る様子に、会場はちょっとザワつきました。「犬もわかるのね!」と犬好きな参加者たちは感極まりましたが、いやいや、サルヴォ神父の落ち着いた声のトーンや規則さと不規則さが調和した聖書の朗読リズム。1/F揺らぎ効果があったと思われます。
動物ミサで体験した(犬好きにとっては)プチミラクル。聖フランチェスコがオオカミを回心させたり鳥に説教した話も、あながち都市伝説ではないのかも〜。信じるものは救われるのです(笑)。保護犬たちと我が愛犬に幸あらんことを!
ちなみに、家畜の守護聖人は、聖アントニオ・アバーテ(大アントニオ)。1月17日の聖アントニオ・アバーテの日にも世界各地の教会で動物ミサが行われますよ。
おまけ:現ローマ教皇フランシスコ1世の名前は聖フランチェスコが由来。ツイッターもやってます。犬たちも癒された神のみ言葉に、毎日癒されてみては?日本語版:https://twitter.com/chuokyo_pope
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