強打の捕手として千葉ロッテマリーンズで16年間プレーし、2度の日本一に貢献。2006年のWBCでは正捕手として世界一&大会ベストナインも受賞した里崎智也さんが、読者の悩みをズバッと解決する。第6回目は仕事でチャンスが訪れたときの心構えについて。
【今回のお悩み】
新規プロジェクトメンバーに抜擢されたものの、いまの仕事もあるため本気で取り組めません。迷惑をかけるくらいなら辞退すべきでしょうか。
社内で新規に立ち上げられた、大きなプロジェクトのメンバーに抜擢されました。選ばれたことはうれしいのですが、元々携わっている業務も佳境を迎えており、なかなか本気で取り組めなさそうです。ほかのメンバーに迷惑をかけるくらいなら辞退するべきでしょうか? いまの仕事に愛着があるだけに悩んでいます……。
(30代・男性・会社員)
〝他人の成功〟だけは取り返しがつかない
僕は、質問者さんのようにチャレンジをしない人を見ると、本当に勇気があるなと思います。というのも、ほとんどの仕事って9割はその人じゃなくていいんですよ。能力が高い順、期待されている順に声がかかっているので、その人がいなくなったらほかの誰かが代わりに入るだけ。大げさに言ってしまえば、誰でもいいワケです。つまり、辞退することは、次の人にチャンスを与えるということなんですね。
“自身の失敗”は、たとえ時間がかかろうとも取り返すことができます。でも“他人の成功”は、取り返しがつかない。質問者さんの代わりにプロジェクトメンバーになった人が活躍したら、あっという間に手の届かない存在になるかもしれません。あなたがいくら努力しても、埋められない差をつけられてしまうでしょう。だからこそ、「チャレンジしない人間は勇気がある」と言うワケです。指をくわえて他人の成功を見ているくらいなら、自分が失敗するほうが1000倍マシだと僕は思います。
失敗をカバーするためにチームが存在している
質問者さんは一緒に働くメンバーに迷惑をかけることを心配していますが、しょせんは自分がプロジェクトで失敗したくないための言い訳に聞こえます。失礼ですが、僕にはつまらない人生に見えますね。人間なんて、成功より失敗のほうが圧倒的に多いんです。プロ野球の打者は7割失敗しても一流ですよ。
他人に迷惑をかけない人間なんていません。誰でも多かれ少なかれ失敗をして、その結果、誰かに迷惑をかけています。それぞれが失敗しても、ほかの人がカバーするためにチームを組む。ほとんどの仕事でチームが存在するのはそれが理由です。
プロ野球選手に「迷惑をかけるから試合に出ない」なんて発想をするヤツを見たことがありません。良いか悪いかは別として、ケガをしていてもそのことを隠して出続ける選手が多くいるくらいですから。だって、代わりに出場した選手がホームランを打つなどしたら、その後も使われ続けますよね。さらに活躍が続けば、自分の出番は完全に失われてたちまち補欠ですよ。何度も言いますが、他人の成功は取り返しがつかないんです。4打数ノーヒットの試合があっても、次の試合で3安打すれば取り返せるのとは違うんです。
どうしても自信がないのなら、「迷惑をかけたくない」なんてごまかさずに、「能力がないので辞退します」と言いましょう。ただし、二度とチャンスは訪れないかもしれません。選ぶ側の人にしてみたら、メンバーは誰でもいいんですから。
【これで下克上せよ!】
「迷惑をかけない人間なんていない。失敗したらカバーしてもらえ!」
今月の野球“知っ得”ネタ!!
肩の痛みを押して出場し史上最大の下克上を実現
千葉ロッテマリーンズが「下剋上」を起こした2010年。里崎さんは、日本シリーズ前に茶碗を持てないほど左肩を痛めていた。しかし、正捕手の座を譲ることなく、痛み止めを飲んで強行出場。7試合すべてで先発のマスクをかぶった。
【PROFILE】
里崎智也さん
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工、帝京大を経て98年ドラフト2位でロッテに入団。05~10年まで6年連続2桁本塁打を放つなど、強打の捕手として活躍した。現在は野球解説、講演活動、執筆などマルチに活躍中。
里崎さんに聞いてもらいたいお悩み大募集!
人生、仕事、恋愛、お金など、里崎さんに聞いてもらいたいお悩みを募集しています! 詳しいお悩みを次のアドレスまでお送りください。getnavi@gakken.co.jp
文/山西英希 撮影/佐坂和也 ヘアメイク/宮田裕香子 スタイリング/佐々木誠 題字/道口久美子
衣装協力/ザ・スーツカンパニー 新宿本店