ライフスタイル
2018/12/11 18:00

いま注目の「モダンカリグラフィー」って何? カリグラファー・島野真希さんに聞く魅力と上達のコツ

モダンカリグラフィーの道具と上達のコツ

まず、島野さんが普段使っている道具を見せてもらった。

まずは島野さんも最もよく使うという定番のペン先とペン軸。ペン先はポインテッドペンだが、ペン軸は本体からペン先をセットする位置が少し離れている「オブリークホルダー」と、通常のものの2種類ある。

↑上がストレートホルダーで、下がオブリークホルダー

 

↑拡大したところ。慣れは必要だが、オブリークホルダーのほうがペン先に角度がつくため、傾斜のある文字を書きやすい

 

↑ペン軸群。素材によって、ペン軸の価格も異なるという。このなかで最も安価なのは1番下の黒いもので、500円程度で購入できる

 

こうしたカリグラフィー専用の道具がある一方で、島野さんは「筆圧が調整できれば、どんなペンでも使えますよ」と言う。

 

そうした手軽に導入できるペンとして、今回はぺんてる「筆タッチサインペン」、ぺんてる「アートブラッシュ」、サクラクレパス「ペンタッチゴールド」、トンボ鉛筆「ABT」を紹介してもらった。

↑筆ペンのようにペン先がしなるものであれば筆圧が調整できるため、線のコントラストを表現可能。ただし、このなかでペンタッチゴールドのみそれができないため、後から太さを出すために線を書き足している

 

「オブリークホルダーも安く手に入るので、もちろんそれでもいいんですが、やはり道具に慣れるまでにもそれなりの時間がかかります。なので、もう少し手軽に始められるブラッシュペンはおすすめ。わたしが監修したテキストをぺんてるのHPから無料ダウンロードできますよ!」(島野さん)

 

とはいえ、「できれば、一度は講座などで知識や技術を教わるようにしてもらいたい」と島野さんは言う。「独学だと、自分の方法が正しいかどうか見極められず、上達するスピードがスローに。オンライン動画でも、手元だけ映しているものだと、姿勢やペンの向きを確認できないから、何かが間違っていてもそのまま練習を続けてしまう。いったん正しい方法を確認できると、ある程度自己流でも練習を重ねるほどどんどん伸びていきますから」とのこと。島野さんのその言葉は、現在でも、書道の先生に師事しているだけあって、含蓄がある。

↑正しい姿勢も上達のための重要な要素

 

「楽しい、もっとうまくなりたい、もっと学びたい、という意欲があればその気持ちはすごいエネルギーになります。好きな気持プラスアルファで正しい方法を教えてもらう。あとは努力次第ですね」(島野さん)

 

デジタル全盛の時代だからこそ「手書き」の価値を高めたい

モダンカリグラフィーの第一人者でありながら、個人のウェディングアイテムも手掛け続けている島野さん。作品作りで大切にしていることは? との問いに「空気を壊さないこと」と語る。

↑「文字が主張しすぎても主張しなさすぎてもダメ。うまく調和することがポイント」(島野さん)

 

「ウェディングプランナーをしていたときから気になっていたのが、インビテーションカードや会場のプレート、デコレーションがトレンドを意識した洋風でとても素敵なのに、席札がかっちりした漢字だったり、筆文字だったりすると、その部分だけすごくアンバランスだったこと。どこか統一感に欠けるなぁという思いがありました。招待状から式当日まで、統一された素敵な世界観をモダンカリグラフィーで作れたら、と思うんです」(島野さん)

 

最近では、その考えが広まりつつあり、頼まれることも増えた。「式が決まったらモダンカリグラフィーを習いはじめるという花嫁さんも増えているんですよ」と島野さん。いわゆる「花嫁DIY」の一環なんだそうだ。

 

ブランドロゴであれば、そのブランドのコンセプトや世界観を、パッケージであれば製品の持つイメージを、ウェディングであれば主役となる新郎新婦の人柄などを考えて、文字をデザインしていく。

 

「ささっと書いているように見えますけど、カリグラファーってそこに至るまでかなりの時間を費やしているんですよ」と島野さんは言う。

 

「手書き文字のカリグラフィーは、とても価値のあるものだと思います。デジタル全盛の時代にあって、ひとりひとりが時間をかけて生み出した手書き文字自体の価値が上がれば、こんなに嬉しいことはないと思っています」(島野さん)

↑今回、特別に「GetNavi」(getnavi)をモダンカリグラフィーで表現していただいた

 

 

撮影/我妻 慶一

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