たばこを吸う人も吸わない人も最近なにかと話題の「加熱式たばこ」のことは耳する機会が多くなってきたと思います。一番有名な「IQOS(アイコス)」は知っているけど他にはなにがあるの? という声も少なからず筆者に寄せられます。そこで、まず加熱式たばことはなんなのか? どんな製品があるのか? など、今さら他人に聞けない加熱式たばこのキホンをご紹介したいと思います。
フツーのたばこと加熱式たばこの違いって?
旧来から「たばこ」といえば、乾燥させたタバコ葉に火をつけて燃焼させた時に発生する煙を吸引するものが一般的でした。キセルなどの器具を用いて喫煙するものも含まれるため、本来は「燃焼式たばこ」と呼ぶのが妥当なのですが、近年では市場のほとんどが、タバコ葉を紙に巻いて筒状にした製品のため、燃焼させて発生した煙を吸引するたばこ全般を「紙巻きたばこ」と呼んでいます。燃焼時の温度は約600~900度といわれています。
これに対して、電気で発生させた熱により、水分を含ませたタバコ葉を熱することで発生した蒸気を吸引するのが「加熱式たばこ」です。詳しくは後述しますが、加熱温度は約30℃から350℃。タバコ葉を詰め込んだカプセルやペースト状にしたスティックなどの消耗品のほかに、それらを加熱するための本体(デバイス)が必要なのが特徴です。
紙巻きたばこと加熱式たばこの最大の違いは、火を使って「燃焼」させるのか、電熱を使って「加熱」するのか差です。どちらも似たようなものでは? と思うかもしれませんが、まったく別モノと言っても過言ではないくらい大きく違います。
まず、タバコ葉に限らず、なにかを燃焼させるということは、タールや一酸化炭素を発生させることなります。また、元々の物質が化学変化を起こし、他の物質に変化することもあります。これらの物質は人体に悪影響を及ぼす場合が多く、たばこの健康被害が問題視される原因にもなっています。
一方、加熱式たばこは何かを「燃やす」ワケではないので、ニオイや煙、有害物質の発生が燃焼式たばこに比べて極端に少ないのが特徴です。喫煙所で加熱式たばこを吸っている人が、白い煙のようなモノを吸ったり吐いたりしているのを見かけますが、アレは燃焼させているワケではないので「煙」ではなく、水分を加熱して発生した「蒸気」なのです。なので、タバコ葉を燃やした時のニオイはせず、タバコペーストを温めた独特のニオイがほんのりと漂います。
燃焼式たばこと加熱式たばこも、ニコチンを摂取して嗜好するという目的は同じですが、両者の違いをザックリまとめると以下のようになります。
燃焼式たばこと加熱式たばこの主な特徴比較
燃焼式たばこ | 加熱式たばこ | |
方式 | 火で燃焼 | 電熱で加熱 |
温度 | 約600~900℃ | 約30~350℃ |
煙 | 燃焼による煙が発生 | 加熱による蒸気が発生 |
有害物質 | 比較的多め | 比較的少なめ |
ニオイ | 比較的多め | 比較的少なめもしくはほぼナシ |
ニコチン | 含まれる | 含まれる |
喫煙の満足感 | 大満足 | 物足りない場合も |
三国志さながらの群雄が割拠する「加熱式たばこ天下三分の計」
加熱式たばこの具体的な製品について見て行きましょう。日本国内では、たばこ製品として認可を受けているブランドは大きく分けて3ブランド。つまり、3つのメーカーが加熱式たばこ市場のシェアをめぐり、熾烈な争いを繰り広げています。この様相を、かの三国志の有名な登場人物「諸葛孔明(しょかつこうめい)」が唱えた、3つの国がお互いににらみを利かすことで軍事バランスをとる策略になぞらえて、「加熱式たばこ天下三分の計」と筆者が勝手に提唱しています。(あくまでも勝手に言っているだけですので、ご了承下さい)
では、その加熱式たばこの3大ブランドの概要を比較してみます。
ブランド | IQOS(アイコス) | glo(グロー) | Ploom(プルーム) |
メーカー | フィリップモリス | BAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ) | JT(日本たばこ) |
主な現行デバイス | IQOS 2.4 Plus IQOS 3 IQOS 3 multi | glo glo series 2 glo series 2 mini | Ploom TECH Ploom TECH+ Ploom S |
主なフレーバー | マルボロ ヒートスティック HEETS | KENT neostiks neo | メビウスたばこカプセル ピアニッシモたばこカプセル メビウスたばこスティック |
どのブランドもメーカーも一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。それだけ話題になっている加熱式たばこですが、実はよく知らないという人のために、それぞれのブランドをザックリ解説してみたいと思います。
世界でトップシェアを誇る「IQOS(アイコス)」
加熱式たばこといえばIQOS。世界中でトップシェアを誇り、日本でも「キングオブ加熱式たばこ」という位置づけ。三国志で言えば、「曹操孟徳(そうそうもうとく)」が率いる強大国「魏(ぎ)」に該当します。もし、IQOSが世に出ていなければ現在の加熱式たばこの流行はなかったと言っても過言ではないくらい偉大な存在といえます。
その理由としては、これまでも「電子たばこ」と呼ばれる製品で、蒸気を吸引する類似品は存在しました。しかし、あくまでもニコチンを含まない禁煙グッズの域を出ず、とても喫煙者が乗り換えるほどの満足感が得られないものでした。結局は、禁煙どころか燃焼式たばこからの移行すら促せないまま、出ては消えの繰り返し。
IQOSも発売当初は、それらと類似したものだろうという先入観があり、あまり話題にならなかったのですが、フタを開けてみると、イメージとは真逆に喫煙の満足感の高さを得られることから、「これなら紙巻きたばこやめられるんじゃね?」という口コミで話題が拡散し、一気に普及しました。もし満足感がなければ、「なんだ、またいつものアレか……」と、喫煙者にそっぽを向かれていた電子たばこでしょうが、IQOSの喫煙感、満足感は想像以上で、先行者有利も相まってトップシェアを獲得。今では、加熱式たばこ界の絶対王者として君臨しています。
そして、昨年11月に第三世代となる、従来型の後継モデルの「IQOS 3」と、シリーズ初となる連続喫煙が可能なオールインワンタイプ「IQOS 3 multi」を発売し、加熱式たばこ市場での地位を盤石なものにしました。
多彩なフレーバーが楽しめる「glo(グロー)」
次に、KENTやラッキーストライクという銘柄で有名なブリティッシュ・アメリカン・タバコという海外メーカーが展開するglo。三国志でいえば、ドンピシャでは当てはまりませんが、「孫権(そんけん)」や「周瑜(しゅうゆ)」が率いる「呉(ご)」に相当するイメージでしょうか(個人的見解です)。
IQOSの大ブレイクを受けて、IQOS本体が極限の品薄状態に。自分のIQOSが故障でもしようものなら、紙巻きたばこに戻らざるを得ないユーザーまで出る始末。デバイスが欲しくても買えない「IQOS難民」が大量発生するなか、勢力を伸ばしてきたのがgloです。
IQOSを入手できない飢餓状態の加熱式たばこ難民を救ったのがgloという救世主でした。味わいに関しては、IQOSに比べて若干クセがあり、ユーザーの好みが分かれるところですが、本体に直接スティックを差し込んで加熱する仕様を採用し、連続喫煙を可能にしたことが功を奏し、IQOSのライバル機として急浮上しました。
現時点では、「glo」「glo series 2」「glo series 2 mini」の3モデルをラインナップ。デザインやサイズ、フル充電での喫煙可能本数に相異はあるものの、喫煙の味わいや性能などは同一。
ただし、フレーバーが全18種類あり、これはライバル機含めた3ブランドのなかでも最多。多種多様な味わいが楽しめるのがgloの最大の特徴といえるかも知れません。
唯一無二の低温加熱式を採用する「Ploom(プルーム)」
最後は我が国が世界に誇るたばこメーカーJTこと日本たばこ産業がリリースする「Ploom」シリーズ。三国志でいえば、三国志演義の主人公でもある「劉備元徳(りゅうびげんとく)」や「諸葛孔明(しょかつこうめい)」が率いた「蜀(しょく)」で間違いないでしょう(しつこいようですが個人的見解です!)。
IQOSやgloが数百度の温度でタバコペーストを加熱する「高温加熱タイプ」なのに対し、Ploomシリーズの「Ploom TECH」と「Ploom TECH+」は約30~40度で加熱する「低温加熱タイプ」を採用しています。この低温加熱タイプは、国内の加熱式たばこ市場ではPloomが唯一無二の存在であり、ライバルメーカーにとっては未踏の分野。低温加熱タイプのデバイスはJTのアイデンティティともいうべき強みでもあります。
ただし、JTは2018年まで、この低温加熱タイプであるPloom TECHのみで市場に参戦していたため、満足度の高い高温加熱タイプをリリースするライバルメーカーの後塵を拝していました。しかし、今年に入って、ついにIQOSやgloとガチンコ対決が可能となった高温加熱タイプデバイスである「Ploom S」を世に送り出します。
加熱式たばこ天下三分の計成る!
このPloom Sの登場により、3メーカーが同じ土俵に立ったことで、かの諸葛孔明の提唱した3国の戦力が拮抗する策略になぞらえて、「加熱式たばこ天下三分の計」が成ったと言っても過言ではなく、三国時代ならぬ「真・三大加熱式たばこ時代」の幕開けとなりました。