ライフスタイル
2019/9/12 18:30

仏教に由来する「断捨離」の提唱者がルーツに触れる旅

いまや、至るところで目にするようになった「断捨離」という言葉。最初に提唱し、著書やテレビ・雑誌などのメディアを通じて広く一般化させたのが、やましたひでこさんです。

 

そんな正真正銘の“生みの親”が、日々思うこととは何なのか? 日常における、断捨離にまつわる気づきをしたためたエッセーの第9回は、旅が続くなかで、「断捨離」という仏教の教えを日常に活かすやましたさんは、深い縁によって呼び寄せられたのでしょうか、空海に教えを授けた西安の「青龍寺」へと招き入れられます。

やましたひでこの「断捨離」にまつわる日々の記録
https://at-living.press/tag/danshari/

 

土地との縁とは面白いもの

中国を訪れている。もう幾度目かわからないほどの中国訪問。

 

今回の最初の目的地は旧都、西安。言うまでもなく、唐の時代の城壁都市長安。そして、かの空海が恵果阿闍梨から密教の全てを伝授された由縁の地。

 

土地との縁とは面白いもので。ここを是非訪れてみたいと思っている訳でもないのに、偶然招かれたところが、自分の深いところにあった意識を呼び覚ましてくれる。

 

そう、なぜ、西安を訪れることになったかといえば、中国の出版社のお招きで、書店で『断捨離』の本の読者との交流会をしてほしいのとのご依頼を頂戴したから。そして、数ある書店の中から、出版社が選んだ書店が、ここ西安だった。

 

北京でもなく、南京でもなく、上海でもなく、西安。中国全土に大型店舗を構える書店の、北京店でもなく、南京店でもなく、上海店でもなく、西安店。

 

私は、驚いた。なぜなら、ちょうど、永田良一先生との共著『心を洗う断捨離と空海』(かざひの文庫)の中国版の出版準備が佳境に入っていた時でもあり、空海に関する資料を読み直していた時でもあったから。しかも、西安を訪れたことのある永田良一先生から青龍寺についてもお話を伺っていた。

 

なんというタイミングなのだろう。思いがけず、思いもよらないかたちで、西安を訪れる機会を得るなんて。しかも、出版社サイドの配慮で、お願いした訳でもないのに、青龍寺参詣の手配まであらかじめ整っていたという有り難さ。

 

ところで、ここ西安への旅は、それなりの時間を要することに。深夜便で羽田空港から上海浦東空港に。トランジットで空港ホテルに投宿、わずかな仮眠の後、早朝便で西安国際空港へと、およそ12時間の旅。

 

東京から上海へのフライトと上海から西安までのフライトの時間の長さが変わらない。これだけで、中国の広さ、大きさを感じることになる。

 

西安に到着して、あらためて思う。空海の長安までの旅路の困難さを知るにつけて、よくぞここまで密教を求めてやって来たものだと、命をかけてまでの真理への強い探求と深い探究に、私の心臓がキリキリと痛むほど。

 

日本出立早々の暴風雨、海上を漂流すること34日間、ようやく辿り着いた福州での上陸拒否の憂き目、なんと船上待機が2か月にも及ぶ。それから、長安へは陸路遥か2400㎞の道のり。結局、空海が長安に辿りついたのは、日本を出てから半年あまりの後。

 

これだけでも、気が遠くなりそうなこと。おまけに、食料も水も衣服もままならない。下痢と嘔吐と睡眠不足と、どれほどの難儀を極めたことだろう。私はといえば、提供される機内食をただ口に運び、ホテルではシャワーとベッドを確保できる、ぬかぬかとした旅であることは間違いないのだから。

 

さて、西安中心街、書店のあるショッピングモールの吹き抜けの大空間で、大勢の中国の断捨離ファンから熱い歓迎を受け、そして、サイン会。私の拙い文字のサインに、どれだけの価値があるのかしらと、強い訝りと少しばかり自嘲気味になりながら1000冊近くの自著にペンを入れることに。

 

平安の三筆である優れた能書家である空海を思いやれば、自分のサイン文字に恥じ入りたくもなるというもの。

 

その後、参詣した青龍寺にて。青年僧空海の命の躍動がそのまま伝わってくるような感覚に暫し浸る。

 

歴史上の人物が、まったくもって無縁であるはずの空海が、今、目の前で、恵果阿闍梨から密教の全てを託されている。まるで、空海真言密教八祖誕生、灌頂の場面を目の当たりしているかのよう。

ところで、私は、中国仏教の聖地など知ることもなかったけれど、中国に招かれる度に計らずも訪れる機会を得ている。

 

「五台山」、山西省の断捨離ファンの実業家が案内して下さって。「牛首山」、南京郊外中国禅宗の発祥地、ここも断捨離ファンの女性実業家のご好意で。それから、「九華山」、その麓の安徽省の世界遺産の街にも断捨離の支持者のある企業の董事長が連れていって下さった。

 

そんな私に、またもや、不思議な縁がやってきた。ホテルで朝食をとっていると尼僧に声をかけられて。もちろん、まったく見ず知らずの中国女性ではあったけれど、この尼僧は、いきなり私の命運を饒舌に語り出した。しかも、その内容は符合と納得することばかり。

そして、尼僧はこう言った。ぜひ、九華山を訪れなさいと。そこで、あなたの「一生平安」を祈りなさいと。

 

これは、行かなければならない。もちろん、今度は、自分自身で計画準備をした上で。

 

そうか、私の中国断捨離行脚は、まだまだ、続くことになりそうだ。

 

クラターコンサルタント / やましたひでこ

東京都出身、早稲田大学卒業。学生時代に出合ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を、日常の「片づけ」に落とし込んで応用提唱し、誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築した。断捨離を、人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置付け、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。また『新・片づけ術「断捨離」』(マガジンハウス)をはじめとするシリーズ書籍は、中国、台湾でもベストセラーを記録し、国内外累計400万部を超え、ヨーロッパ各国の言語でも翻訳されている。
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