ライフスタイル
2019/10/25 17:00

必ず盛り上がる「話題と歌」を教えて! 夜の社交場「スナック」で使える「鉄板ネタ」の噺

気軽に行けてリーズナブルに楽しめるということで、密かに注目を集めている夜の社交場「スナック」。その魅力や楽しみ方を解き明かしていくのが本連載です。今回は最終回となる第4回。ガイド役はスナック研究の第一人者である、⾸都⼤学東京の法学部教授・⾕⼝功⼀氏です。今回もスナックに憧れる40代独身のGetNavi web編集者・小林史於(こばやし・しお)による谷口教授へのインタビューを通し、スナックの楽しみ方を紹介していきましょう。

 

第1回はスナックの成り立ちをはじめとする基礎、第2回はスナックの現在の課題や未来、第3回はスナックでのマナーと名店を探す方法をお聞きました。最後はより楽しむ方法として、会話の仕方や注文、カラオケの選曲など、マナーを守りながら盛り上がるコツを教えてもらいます!

 

本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。連載の第1回、第2回、第3回はコチラ

↑⾕⼝功⼀教授。⾸都⼤学東京・法学系教授、スナック研究会代表。専門は法哲学。著書に「日本の夜の公共圏 スナック研究序説」「ショッピングモールの法哲学」(ともに白水社)など

 

スナックのボトルは焼酎かウイスキーが基本

小林 前回のインタビューでは、スナックの相場は定番のハウスボトル付きで3000円程度とうかがいました。このボトルというのは、焼酎やウイスキーと考えていいのでしょうか?

 

谷口 なかにはブランデーを置いているスナックもありますが、普通は焼酎かウイスキーですね。焼酎は、芋や麦で選べる店もあります。飲み方は水割りが基本ですがロックでもOK。別料金になりますが、ソーダ割りやウーロン茶割りでもいいんですよ。

 

地方では気前よく料理を出してくれる店もある

小林 おつまみに関してはどうですか?

 

谷口 乾きものはたいていどこでもありますけど、料理は店によってまちまち。スーパーの総菜をそのまま出すところがあったり、一方で毎日内容を変えたママの手料理を小鉢で出してくれる店があったり。こういった、料理が好きなママは地方に多いイメージですね。何種類もお総菜を作って並べてあって、何も言わなくてもガンガン出してくれる気前のいいスナックもありますよ。

 

小林 へえ、京都のおばんざいみたいな感じでいいですね!

 

谷口 しっかり食べられて、1次会も2次会も一軒で済ませられるようなスナックは割とあるんですよ。東京には少ないですけど。

小林 地方に多いということは、現地ならではの名産が楽しめるスナックもあるんじゃないですか?

 

谷口 はい。大いにあります。たとえば東北に行くと、都会では高そうなホタテやイカの刺身が普通にお通しで出てくることもあるんですよ。

 

小林 料金はそういったおつまみも込みの値段なんですか?

 

谷口 基本的にお通しは込みですね。席料にお通しが含まれているという形です。とはいえ、自動的に料理が出てくる店は例外として、お通しとは別にメニューが用意されているスナックもありますよ。ただ、スナックでたくさんの料理をオーダーするのは控えた方がいいでしょう。ケースバイケースですが、少人数で回している店が多いですから、手間になることは控えたいですね。なかには持ち込みや出前をしていいスナックもあるので、それらを利用する手もあります。とはいえ、基本的にはスナックに行く前に食事は済ませておくべきですね。

 

「よく来られるんですか?」と切り出し、相手の出身地を聞くのがセオリー

小林 スナックでの過ごし方も知りたいです。たとえば、ママや常連客にはどんな話題を振ったらいいんでしょうか。会話のコツなどがあれば教えてください!

 

谷口 大前提として、相手の様子をうかがいながらですね。お客さんのなかには、話かけてほしくない人もいますから。初見の場合でしたら、「初めて来たんです」と素直に打ち明けて、「よく来られるんですか?」いう切り出しがベターです。

 

小林 なるほど。そこから会話の糸口をつかむ、と。

 

谷口 はい。なかにはママが気を利かせてくれて「こちらのお客さん初めてなんですって」と、客同士の橋渡しをしてくれるお店もあります。ママが忙しいときは難しいですけど、こういう気遣いができるお店はいいスナックですね。

 

小林 ほかに鉄板の話題はありますか?

 

谷口 都会のスナックの場合は相手の出身地を聞く、というのがセオリーです。返ってきた答えの場所を知ってるかどうかで、話がふくらむかどうかという問題はありますけど。出張が多い人や、旅行が好きな人ならこの質問は特に使えますね。

 

地方では地元の穴場や郷土料理を話題にするといい

小林 では、地方のスナックで使えるネタはありますか?

 

谷口 まずは観光地や、オススメの店について聞いてみる。「明日はどこどこに行くんですけど、穴場のスポットはありますか?」とか。あとは、地元の人だけが食べているような郷土料理について聞いてみるとか。

 

小林 やっぱり地元の話題は鉄板ですか。たしかに、外から来た人が自分の地元に興味を持ってくれたらうれしいですよね。

 

谷口 ですから、できれば前もってその地域のことを調べておいた方がいいでしょう。スナックに限らず、現地の人との会話がふくらみやすいですから。ある程度お互いのことがわかってきたら、「どういったいきさつでお仕事をはじめたんですか?」といった質問をしてもいい。ときには感動的なストーリーや勉強になる話を聞けることもありますよ。

 

小林 へえ、わりと踏み込んだ質問もしていいんですね。

 

谷口 人によると思いますが、意外と話してくれます。特に長年やってるスナックのママは、人生経験が豊富な方が多いですから。また、老舗はその地のいろんな情報が入ってくるので、地域の経済状況がわかることもあります。地元の名士が常連というケースもありますし。

 

小林 スナックをみればその地域の現実が見えるといいますが、本当にそうなんですね。勉強になります!

 

 

カラオケでは、うまく合いの手を入れて場を盛り上げるのが肝要

小林 会話とお酒もそうですが、カラオケもスナックの魅力ですよね。前回「ほかのお客さんが得意な曲を歌ってしまうのはマナー違反」と教えていただきましたが、もう少しカラオケのマナーを詳しく教えて頂けますか。

 

谷口 まず、ほかの人が歌っているときは、歌を聞いてしっかり拍手や手拍子をしましょう。知ってる曲だからといって、勝手に大声でハモりを入れたりマイクで歌い出したりするのはご法度です。

 

小林 うまく合いの手を入れて、盛り上げ役に徹するということですね。

 

谷口 たとえ知らない人が知らない曲を歌ってても、ちゃんと拍手をするのは礼儀のひとつ。自分が常連の場合は大丈夫ですが、歌を無視して、ずっとだれかとしゃべってるのはよくないです。よそ者としてスナックに行った場合は、それなりの礼節が大切ですね。

小林 ということは、われ先に自分が歌いたい曲を入れてしまうのもマナー違反ということでしょうか?

 

谷口 おっしゃる通り。盛り上げ役に徹して場を温めていれば、やがて「どうぞ」と言われます。それまでは待つべきですね。歌うとなったときも「じゃあ、ちょっとだけ」という謙虚な姿勢で。歌う曲も、その場のお客さんの層に合わせるのがマナーです。ですから、どんな状況でも合わせられるよう、歌える曲を年代別に幅広くストックをしておくことも大切ですね。

 

押さえておきたいスナック定番の歌とは?

小林 なるほど。では、「これは押さえておきたい」というスナックの定番の曲はありますか?

 

谷口 女性歌手なら山口百恵やちあきなおみ。男性なら長渕 剛の「乾杯」とか。70代以上の方も少なくない世界なので、美空ひばりや北島三郎といった演歌も歌えた方がいいですね。

 

小林 山口百恵など女性歌手の名前も挙がりましたが、男性でも押さえておくべきなんですか?

 

谷口 ママやスタッフの女性が喜ぶので、覚えておいて損はないですよ。あとは、中島みゆきの「糸」は鉄板です。最近だと星野 源の「恋」とか。「恋」が人気なのは、「恋ダンス」を踊れるママが多いから。ママもノリノリになるから盛り上がるんですよ。

 

現代の曲でも、大ヒットしたものなら歌っていい場合がある

小林 へえ、最近のヒット曲でもいいんですね!

 

谷口 ええ。米津玄師の「Lemon」とか、映画で話題になったQUEENの曲もオススメですよ。ただしうまく歌えないと逆に冷めるので、よっぽどの自信がある人以外はオススメできませんが。

 

小林 スナックで現代の流行歌が使えるというのは意外でした。「Lemon」や「恋」くらいまでヒットすると、さすがにOKなんですね。

 

谷口 ただ、大前提として、スナックにおけるカラオケは自分のために歌うわけではないということを忘れずに。周りを楽しくするために、歌って盛り上げるという意識が重要です。そうやって場を暖めていると、「あの人はいい飲み方をする」と一目置かれるようになる。すると、自分の居心地もよくなってリラックスして楽しめるんです。結局は自分に返ってくるんですね。

 

小林 なるほど、よくわかりました! 今回は、お酒やおつまみのことから話題作り、そしてカラオケと、ひと通りのマナーとコツを教えていただきました。これで自信を持ってスナックに行けそうです!  ということで先生、今度とっておきのお店に連れて行ってください!

 

谷口 いやいや、それじゃあ僕がレクチャーした意味がないでしょう。ぜひ、ひとりで行ってみてください。困ったときは、この連載記事を読み返してもらえば大丈夫ですよ!

 

小林 は、はい! 緊張するけど、スナックに行けるようになったら、自分が本当に安らげる場所ができるかもしれないし、夜の楽しみの幅が広がりそうです。地方のスナックも魅力的ですしね。なんとか頑張って行ってみます!

 

――インタビューを通してスナックのいろはを学び、スナックを嗜む決意を新たにした小林。今後は谷口教授に教えてもらった知識を生かし、各地で粋に飲む姿が見られることでしょう。みなさんもぜひ、勇気を持ってスナックの扉を叩いてみてはいかがでしょうか。

 

撮影/中田 悟

連載の第1回、第2回、第3回はコチラ

 

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