ライフスタイル
2019/11/28 17:00

近い将来、「家電が家電を見守る」時代に!? イマドキ家電の安全性を家電王に聞いてみた

我々の生活を便利に、豊かにしてくれる「家電」。しかし、「電子レンジから火が出た」「ヒーターの電源コードが発火した」などのニュースが毎年あとをたたず、使い方を間違えると危険なこともあります。そんな気になる「家電の安全」について、わかりやすく紹介してくれるのが動画マガジン「くらしのラボ」。前回の記事では、その撮影現場にGetNaviプロデューサー・松井謙介が潜入し、実際に事故を再現している様子などをレポートしました。

【関連記事】

「レンチンで卵が爆発」は本当? 家電×安全の“リアル”を伝える現場に悩めるGetNaviプロデューサーが潜入

 

前回は「人が守るべき安全」について紹介しましたが、今度はイマドキの家電と安全について、くらしのラボに出演されている家電王・中村 剛さんに詳しく教えてもらいました。

「くらしのラボ」とは?

TEPCO(東京電力エナジーパートナー)が提供する、家電を使ってくらしを「ちょっと良くする」ための動画マガジン。動画はほとんどが約1~2分と短めで、移動などの隙間時間に手軽にチェックできるのが魅力。毎週月曜日更新で、公式Facebookは10万いいね!を突破。

■くらしのラボの詳細はコチラ↓
https://www.facebook.com/LifestyleLaboratoryTEPCO/

■くらしのラボのyoutubeチャンネルはコチラ↓
https://www.youtube.com/channel/UCGSXwlnTWgcf6wHoekOlq-Q

 

掃除機のコードにある黄色マークの真の意味は? 意外と知らない家電の安全機能

↑テレビの家電通選手権で優勝歴もある、家電王こと中村 剛さん(左)と、イクメンパパでもあり、デジタル・家電の魅力を伝えるGetNaviのプロデューサー・松井謙介(右)

 

松井:家電の安全性についてということなんですが、まず前提として、最新の家電でも事故は起きるものなんでしょうか?

 

中村:普通は想定された使い方をしていれば危険がないよう作られています。ですが、想定外の使い方をした場合や、経年劣化などで危険な問題が起きることはありますね。家電単独の問題だけではなく、ヒーターをつけたまま寝て布団に引火してしまうといった環境的な危険もありますし、複合的な危険も考えられます。

 

松井:複合的な危険、というと?

 

中村:たとえばロボット掃除機が掃除中にヒーターの方向を変えてしまって、カーテンに引火してしまうとかですね。

 

松井:それは東京消防庁なども注意喚起していましたよね。ロボット掃除機に限らず、最近は「時短」あるいは「時産」のために家にいないときに稼働させる家電が増えてきているので、今後ますます注意が必要になりそうな予感。

 

中村:もちろん、家電本体には危険をなくすためのさまざまな工夫が搭載されています。わかりやすいところだと、一定以上加熱したり本体が傾いたりすると自動的に電源がOFFになるヒーターだったり、フィルターなどの必要なパーツがセットされていないと動かない空気清浄機だったり。これらも安全装置の1つです。そのほか「手が触れている間しか動作しない」ミキサーなど、安全機能といっても種類はさまざまです。

あと、意外と知られていないのですが、掃除機の電源コードにある赤色と黄色のマークも安全性のための対策なんですよ。赤色のマークは「電源コードはここまで」という意味で、黄色のマークは「ここまで引き出して使いましょう」という意味なんです。掃除機にはモーターが内蔵されているのですが、運転中はこのモーター熱くなります。そこで、電源コードがこの熱でダメージを受けないように、一定以上コードを引っ張り出すように推奨しているんですね。

↑掃除機の電源コードの色について解説する「くらしのラボ」の動画。家電王が解説するシリーズ以外にも、こうしたドラマ仕立てのものがあったりして面白い

 

松井:黄色のマークの意味を「これ以上出さないように」ということだと勘違いしている人は多そうですね。

 

中村:せっかく安全のための仕組みがあるのに、知らないことで危険を回避できないのは悲しいですよね。なので、こういった「知っているとちょっとだけ生活が良くなる」情報を伝えたいと思って「くらしのラボ」を始めたんです。

 

家電はいつ買い替えればいい?

松井:家電の事故のニュースでよく耳にするのは「古い家電が発火した」といった内容。とはいえ、扇風機なんかのシンプル家電は、なかなか壊れないからついつい長く使ってしまいがちですよね。「いつ買い換えたら良いのかわからない」といった声もよく聞きます。

↑「物持ちがいいのは美徳だけど、こと家電に関しては安全性に関わってくるので難しい問題ですよね」(松井)

 

中村:家電をいつ買い換えるかに関しては、ひとつの目安として「長期使用製品安全表示制度」というものがあります。これは家電に製造年と設計上の標準使用期間を表示する(シールを貼り付ける)義務がある制度のことです。たとえば「製造年2019年、設計上の標準使用期間10年」とあったら、2029年を過ぎると経年劣化に気をつけて使う必要がある、ということですね。設計上の標準使用期間なので、この期間の前に壊れてしまう可能性もありますが、買い換えの目安としてわかりやすいですね。

 

松井:「壊れていないから」と3、40年前の扇風機をずっと使っている家庭とかありそうですけど、この表示があれば買い替えの一押しになりますね。

 

中村:ただし、これは2009年の4月1日に施行された制度なので、それ以前のものには表示が義務付けられていません。また、残念なことにいまのところ長期使用製品安全表示制度の対象は経年劣化による事故件数が多い家電5種類だけなんです。具体的には扇風機、換気扇、エアコン、洗濯機(乾燥機能搭載機は含まない)、ブラウン管テレビ。もう少し対象の製品が増えればよいのですが……。

 

松井:この制度の対象外の家電はいつ買い換えればいいんでしょう? 何か目安などはありますか?

 

中村異音がしたり、動きがおかしかったり、振動が大きくなったりなど「いつもと違う」挙動をした場合は注意してほしいですね。とくに事故になりやすいのが電源コードで、傷や破れがあったり、触ると異常に熱い場合などは本当に危険です。

 

家電を家電が見守る時代がくる!? 家電の「安全」の今と未来

中村:とはいえ、家電も家電まわりの製品もどんどん安全性が高まっています。たとえば、電源タップなどは埃が溜まると火災が起きる危険性(トラッキング現象)が高まることは知っている人も多いと思いますが、今は異常過熱を検知すると自動で通電を遮断するコンセントなんかも発売されています。

↑トラッキング現象を紹介している動画。コンセントまわりになどに埃が蓄積すると発火の危険が!

 

↑コンセントまわりを整理する方法も動画で紹介。電源タップもいろいろある!

 

松井:うちなんかもそうですが、テレビの後ろは掃除がしにくいのに配線だらけ。そういった製品があるなら少々高くても買いたいですね。

 

中村:ほかには、ドラム式洗濯機は、大型化しているうえ洗濯物の入れやすさを重視して開口部を大きくとっているので小さな子どもが中に入って閉じ込められてしまう事故がたまにあるんですけど、最近は非運転時にドアが開かないようにするチャイルドロック機能を搭載した製品や、運転していないタイミングなら内側からドアが開くようになっている製品も登場しているんですよ。

あとこれも洗濯機の話なのですが、内部で少量の衣類が想定以上に偏ると異常にガタゴトと振動して本体が移動してしまうことがあります。この移動によって電源コードが引っ張られて電源コードがショートする……というようにドミノ式に危険が発生することもあるんです。こちらも最近の洗濯機なら衣類が偏って異常振動すると、水を入れ直して衣類をほぐしてから洗い直したり、自動的に運転を止めることで危険を回避したりする機能が搭載されていることが多いです。

 

松井:うちも子どもがいるので、そのあたりは敏感になりますね。安全機能を大々的に謳った家電って意外と少ないですが、特に小さな子どものいる家庭だと買い替え時に結構重視すると思います。

ところで、ここ数年のトレンドだと家電がインターネットに接続する「IoT家電」も増えていますよね。最初に話していた「ロボット掃除機がヒーターの方向を変えてしまう」といった複合的な問題もIoT化でなんとかなりますかね?

↑「IoTの恩恵はエアコンなんかがわかりやすいですよね。外出先からスマートフォンで室内温度をチェックできるので、猛暑時の運転設定ミスを防げます。ペットだけで留守番している家庭などには嬉しいですよね」(中村さん)

 

中村:将来的には家電を監視するような家電(カメラ)で常に家庭内の安全を画像でAIがチェックするようになるかもしれませんね。個人的には、いずれ家庭内をカメラでチェックする時代は絶対にくると思っています。

 

松井:なるほど、「家電を監視する(見守る)家電」ですか! でも、24時間カメラで監視されるのは、正直プライバシーの面で抵抗が根強そうですよね。

 

中村:そのあたりはサービスの提供方法や技術の進歩で解決できると思っています。たとえば、東京電力エナジーパートナーでは「ペットみるん」というペットの見守りサービスを提供しています。これは、24時間カメラで室内を撮影して、その膨大な動画のなかからAIが「ペットが映り込んだ画像・動画」だけを抜き出して提供するというサービスなんです。たとえ「動くもの」が撮影されても、人間やロボット掃除機なんかの映像はAIが判断して除外してくれるんです。こういったAI技術などを応用すれば、家庭の安全を見守りつつ、プライバシーも配慮できるサービスの提供は今後可能になると思いますね。

↑「ペットみるん」は、TEPCO(東京電力エナジーパートナー)が提供する、AIを活用した最先端のペット見守りサービス。ペットのトイレや水を飲む回数などもチェックできる

 

松井:そうなると安心ですね。家電はちゃんと使えば安心とはわかっているんですが、最近は取扱説明書も分厚いし読むのも大変。自分のまわりでも取扱説明書はほとんど読まないという人も多いですし。

 

中村:今はPL法(製造物責任法)でメーカーの責任が重いので、どうしても取扱説明書の注意書きが多くなってしまうんですよね。そのせいで取扱説明書がますます読まれなくなってしまうというのは皮肉な話ですが、だからといって「取扱説明書を読まないユーザーが悪い」というのも違うと思います。「くらしのラボ」では、短く、わかりやすい動画というカタチで発信し、こうした家電の安全性について多くの方に見てもらえればと考えています。

 

松井:考えてみれば、うちのようなモノメディアや家電を売る量販店などでも「新製品がこう便利」といった情報の提供がほとんどで、家電のリスク/安全性についてはあまり啓発できていないですね。今回の対談ではメディアとしてもいろいろと考えさせられました。

 

■くらしのラボの詳細はコチラ↓
https://www.facebook.com/LifestyleLaboratoryTEPCO/

■くらしのラボのyoutubeチャンネルはコチラ↓
https://www.youtube.com/channel/UCGSXwlnTWgcf6wHoekOlq-Q