ライフスタイル
2019/12/6 19:30

土に埋めるのは過去の話。イマドキの「タイムカプセル」サービスとは?

小学校や中学校を卒業する記念として、校庭にタイムカプセルを埋めた経験のある人、けっこういるのではないでしょうか。大人になった自分への手紙や、未来の自分に向けた両親からの祝福や応援メッセージ、大切にしている物や、その時代を象徴する新聞記事など、すっかり忘れた頃に手にするそれらから得られるものは計り知れません。タイムカプセルを埋めた経験がなかったとしても、ドキドキワクワクする気持ちは想像できるのではないでしょうか。

 

タイムカプセルを埋めるのは現実には難しい

とは言っても、いざ埋めようと思っても実行するのは容易ではありません。まず、埋める場所の確保が必要です。開封を予定している未来に、その場所が変わらない状態である保証もありません。また、埋めた場所を正しく把握し続けることも一苦労。支柱を立てておいても、この先、台風や雨、支柱の劣化により、目印がなくなってしまうことも大いにあり得ます。また、土の中で保管するタイムカプセル自体の経年劣化を防ぐ配慮も必要になります。

 

デジタルタイムカプセルがヒット!

そこで近年では、前述のようなタイムカプセルの“難しさ”を感じることなく、埋めずに手軽に楽しめるサービスが増えています。例えば、アプリ上のタイムカプセルを提供しているディグランドの阿部紘士さんは、タイムカプセルを埋められなかったご自身の経験が生きていると言います。

 

「大学4年生のとき、サークル仲間と10年後の再会を目的に大学の敷地にタイムカプセルを埋めようとしました。ところが、『そこはすでにほかのタイムカプセルが埋めてあるからダメ』とか、『そこは数年後に建設予定があるから開封できなくなる』などと大学からNGが出て、結局埋められなかったんです。

 

社会人になり、アプリ制作の事業を手掛けるようになって、タイムカプセルをネット上で楽しめるコンテンツをつくりたいと思い、形にしたサービスが『マップコレクションDiground』です」(ディグランド 代表取締役・阿部紘士さん)

↑「マップコレクションDiground」は、マップの上を長押しすることでピンを立て、そこに写真や動画、メモを登録できるアプリ

 

↑「タイムカプセルピン」は、開封日時や公開範囲が設定でき、自分で設定した開封条件で楽しめます。タイムカプセル以外にも、「行きたいお店」「釣りスポット」など、さまざまなピンの指定が可能

 

↑2016年2月にスタートしたアプリの利用者は右肩上がり。広告費用を一切かけずに運営しているにも拘らず、利用者からの口コミなどで広がっています

 

現代はなんでも気軽に手に入る時代だからこそ、「その場所に行かないと中身を確認できない」「指定の日付にならないと中身が確認できない」「情報を修正できない」という不便さが新鮮な楽しみになるのでは、と話す阿部さん。この「リアルな不便さ」を楽しめるように、「タイムカプセルピン」には、一度投稿すると編集ができない条件を選べるようにしたというのも面白い仕掛けです。

 

【Information】

ディグランド「マップコレクションDiground」
無料
https://www.diground.com/lp/user?living

 

形に残すからこそ、思い出が蘇ることが魅力

続いて、未来の自分や大切な人に宛てて手紙を送るサービス「タイムカプセル郵便」。NPO法人の「みらいぽすと」理事長の大熊容子さんは、白血病を患い5才で亡くなった妹が書いた手紙を見返したことがきっかけで、このサービスを始めたといいます。「せんばづるをたくさんありがとう」「あるばいとがんばっていますか」など、カラフルな便箋に幼い妹の筆跡で書かれた手紙を読み返したことで、当時の記憶がリアルに蘇ってきたそう。

 

「SNSやメールですぐに連絡が取れる時代だからこそ、筆跡や人柄が直に伝わる手紙の良さが見直されているのでは」と語る大熊さん。「成人したときの自分」「10年後の自分」「○年後のわが子」などを思い描いて、夢や希望を込めてメッセージを書く中で、自分を見つめ直す時間が持てることも、タイムカプセルの持つ魅力と言えるでしょう。

 

【Information】

みらいぽすと「タイムカプセル郵便」
1000円~1万6000円(税別)
https://miraipost.com/index.html

 

ほかにも、埋めずに未来へ思いを届ける、個性的なタイムカプセルサービスがあります。どのようなサービスがあるのか、見ていきましょう。

 

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1. 指定した日に手紙を届ける、過去の私からのメッセージ

10年以内の指定日に、希望する宛先に手紙を届ける日本郵趣協会のサービス「タイムカプセル郵便」。ハガキか手紙の2種類から選べ、保管する年数の長さで料金が変わります。10年先の自分へのメッセージはもちろん、1年後の自分宛にメッセージを送るだけでも、価値あるギフトになることでしょう。将来の自分や大切な人に向けて、今の気持ちや感謝の思い、エールを届けてみませんか。

 

利用方法はとても簡単。ハガキや便箋を使って通常の投函スタイルで手紙を書き、切手を貼ります。その「タイムカプセル郵便物」に、住所、電話番号、名前、未来の配達希望日、Eメールをメモした「確認用紙」を添えて封筒に入れ、タイムカプセル郵便宛に送ればOK。後日、利用料の振り込み連絡のメールがくるので、必要費用を支払えば、指定した日に手紙が配達されます。

「利用された方のアンケートから、『大学進学を期に地元を離れるため、親友への感謝と離れがたい気持ちを綴り、再会の約束をするメッセージ』『結婚式の日取りが決まり、当日を迎える自分宛ての祝福メッセージ』『10年後のわが子に、生まれてきてくれた感謝の気持ちを残す』など、さまざまなシーンで活用されているのがわかります。20通以上の団体利用には割引コースがあるので、学校や自治体などでの利用にもおすすめです」(日本郵趣協会・三好美穂子さん)

 

【Information】

日本郵趣協会「タイプカプセル郵便」
600~2000円(税込)
http://yushu.or.jp/tegami-project/capsule/index.html

 

2. 5年後に一升瓶とメッセージカードが届く、熟成した泡盛のギフト

沖縄の人気観光スポット「美ら海水族館」から車で約15分の場所にある山川酒造。こちらのオーナーが2010年から始めたタンクオーナーサービス「古酒オーナー蔵舞」は、琉球泡盛の「珊瑚礁」を5年間タンクで熟成させ、5年後に古酒とメッセージカードを届けてくれるサービスです。

 

泡盛は長時間寝かせることにより、芳醇でまろやかな味わいになります。自然豊かな地で、古酒を寝かしている間に山川酒造を再訪できれば、古酒のテイスティングをして熟成の過程を楽しむこともできます。飲み頃を迎えた古酒に添えるメッセージは、当然、乾杯したくなる内容になりますよね。過去の自分からの祝福の言葉とおいしいお酒のギフトが届けば、幸せな晩酌タイムになること、まちがいなし!

 

「卒業旅行や家族旅行など、旅の記念に利用される方が多いですね。定期的に沖縄旅行を楽しんでいる県外の方で、毎年、注文した時期の泡盛の味や香りの変化を楽しみにしている方もいます。育児に奮闘しているさなか、親になる前にオーダーした古酒が届き、『久しぶりに夫と晩酌をしながら、おしゃべりを楽しんだら?』と当時の自分からのメッセージを見て励まされたという方もいました」(山川酒造・仲村三七子さん)

 

【Information】

山川酒造「古酒オーナー蔵舞(タンクオーナーサービス)」
1万円(税・送料込み)
https://www.yamakawashuzo.com/会社概要/古酒オーナー蔵舞

 

3. いつでも手に取れる場所で眠らせる本型カギ付きケース

思い出という無形の財産を、宝物という形にして残したい。その思いから、卒業アルバム制作会社「夢ふぉと」がプロデュースするオリジナルタイムカプセルは、自宅の本棚にそっとしのばせて保管するカギ付きアルミケースの土に埋めない「夢カプセル」です。古典書のような装いのケースに思い出の品を入れておくことで、どんな効果が期待できるのでしょうか。

 

土に埋めないことで紛失の心配がなく、遮光性の高いアルミ製で、写真の褐色が防げます。棚の奥や物置で保存した思い出よりも手軽に開封ができ、ふとしたときになつかしい記憶と再会できます。いつでも中身を入れ替えられるので、5年で更新するなど、自分なりの期間を設けて思い出のアップデートができます。

 

最初に紹介した「タイムカプセル郵便」を利用して、数年後に夢カプセルのカギが自宅に届くようにすれば、開封日を決めた活用もできますね。

「弊社では、卒業・卒園アルバムをお客様の思い通りに製作できるようなサービスの提供に力を注いでいます。その中で、タイムカプセルを埋めた場所がわからなくなってしまったり、中の手紙や写真がボロボロになってしまったりというお客様のお話を聞く機会が多くありました。それがきっかけで、“本棚にしまえるタイムカプセル”として『夢カプセル』を始めたんです。

 

卒業アルバムをふと開きたくなるときってありますよね。昔の自分や友人の顔を見て元気になれる、初心に帰ることができる。そんな風に、ふと思い出の品々を手に取れたらと願っています」(夢ふぉと・高阪美貴さん)

 

【Information】
夢ふぉと「夢カプセル」
1万2960円(税別・送料込み)
https://www.yumephoto.com/capsule/

 

4. 結婚1周年のサプライズに! コルク型収納ボックス

学校の卒業記念や創立記念、地域イベントなどでの利用が多い、タイムカプセル社が手掛けるウェディング専用のサービス。高さ19.3cm×直径7.1cmのワインコルクのような形状のタイムカプセルに、結婚式の記念品やゲストからのメッセージなどを詰めておき、1年後の結婚記念日に届けてくれます。

 

シンプルな筒形形状なので、ポスターなどもクルクルと丸めて保管できます。友人からの祝福メッセージを見返すことで、結婚式当日の感動や喜びがよみがえりそう。1周年を迎えたアニバーサリーを盛り上げる演出にひと役買ってくれそうです。

 

1年あたり6480円の追加料金で、10年まで保管期間の延長ができるので、サプライズ感をさらにアップしたい方は、長期間寝かしておくのもオススメです。

「『夫婦がやっと1本の木のように一体になる』という結婚5年目の木婚式。この日は、木製のものをプレゼントしあうとよいといわれており、この『ウェディングタイムカプセル』が届くようにしている方も多くいらっしゃいます。シンプルでモダンなデザインと丈夫さにこだわっていますので、開封後もリビングに飾り続け、ふとしたときに手に取っていただけたらうれしいです」(タイムカプセル・浅野敬尚さん)

 

【Information】
タイムカプセル「ウェディングタイムカプセル」
2万8080円(税・送料込み)
http://www.timecapsule.co.jp/service/wedding.html

 

5. SNS感覚で未来に発信するスマホの投稿アプリ

クラウドファンディングによって、2018年からサービスを開始した「OMOIDE」は、画像や動画、メッセージを未来の自分や大切な人に届けられるスマホアプリです。専用アプリをダウンロードし、SNSに投稿するような感覚で操作し、受信相手のメールアドレスと届ける日時を指定するだけ。友人との旅行時に撮った写真とともに、友人の誕生日に届くようにメッセージを送るなど、少し先の未来宛てにメールを送る感覚で気軽に利用できます。

 

送信日の設定に制限はないので、数十年先のわが子へのメッセージなど、長い年月を経て届く、タイムカプセル度の高いメッセージとしても活用できます。まだメールアドレスを持っていないわが子に届ける場合は、代理受取人のメールアドレスを入力しておくことで対応できます。

「昨日の自分からメッセージを受け取るだけでも、ちょっと新鮮な感覚が味わえると思います。まずは、過去の自分からメールが届く喜びや刺激を体験してみていただけたらと思います。未来の自分や大切な人にメッセージを届けるために、スマホで写真を撮ったり、メッセージを打ったりするひとときを楽しんでください」(おもいで・奥野和弘さん)

 

【Information】
おもいで「OMOIDE」
無料
http://www.omoide.life

 

忘れた頃によみがえる記憶、過去の自分からのエール、大切な人に届けたい気持ち、それらを残せるタイムカプセル。時空を超えたメッセージと向き合うことで、自分の人生を違う角度から見つめることができるかもしれません。

 

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