SDGs(エスディージーズ)とともに、世界中でフードロスが大きく叫ばれる昨今。では、そのかじ取りを担う大企業はどのような活動をしているのかーー。気になっている人も少なくないでしょう。今回は、その一例となる取り組みの紹介。できるだけわかりやすくレポートしていきたいと思います。
2030年の食品廃棄半減に向けた大きな一歩
まずは改めて、SDGsについてから。これは日本語に略すと「持続可能な開発目標」のことで、17のグローバル目標と169のターゲットからなります。2015年9月の国連総会で採択されて以来、2030年までの国際目標として様々な場で取り上げられるようになりました。
その17のグローバル目標における、12番目「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」(つくる責任、つかう責任)内の「ターゲット12.3」が、本取り組みに最も関係する項目です。それは、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる。」というもの。
この背景には、世界規模で取り組まなければいけない課題があります。それは、世界では9人の1人にあたる約7億9500万人の人々が十分な栄養をとれない状況である一方、食品として生産されたものの3分の1に相当する、年間13億トンが廃棄されているという事実。
そこで立ち上がったのが、サプライチェーン全体で食品廃棄物の半減を目指す「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」という取り組みです。これは地球環境と開発に関する政策研究・技術開発を行う米国のシンクタンク「World Resources Institute」(WRI)が呼びかけ、2019年9月24日に発足しました。
「10×20×30」という数字についても説明しましょう。10は世界の大手小売業等10社。20は、各小売事業者と取引をする20社のサプライヤー(ここでは食品メーカーのこと)。そして30とは、2030年までに主要サプライヤーの食品廃棄物の半減に取り組むというコミットメントを表したものです。
この世界の大手小売業等10社(実際は11社)のうち、1社に選ばれたのがイオン。その他の10社には米国「ウォルマート」、英国「テスコ」、フランス「カルフール」、スウェーデン「イケアフード」など、日本でも有名な外資超大手が名を連ねており、アジアで選出されたのはイオンだけです。
それは日本国内のスーパーマーケット業界において、シェアの断トツトップがイオンだからという点が大きいはず。また、1991年に「買物袋持参運動」をスタートし、2007年には全国チェーンの小売業として初めてレジ袋の無料配布中止を実施したという実績もあるでしょう。
2019年で準備を終え2020年から具体的に動き出す
では、イオンは何をしていくのでしょうか。ベースとなるのは、発起組織のWRIが提唱する「目標設定・算定・行動」の取り組み手法です。例としては、イギリスのテスコが27社のサプライヤーとともに行った実験を参考に、イオンと参加各社がそれぞれの課題を踏まえ、具体的な取り組み内容を決定していくとのことです。
もちろん各社はこれまでも、独自のやり方でフードロスの取り組みを進めてきました。たとえばイオンだけでも、グループ内で食品廃棄物を堆肥にして自社農場で活用したり、賞味期限表示の「年月日」を「年月」化したり。この取り組みを拡大、強化することで、同社ではSDGsの目標を5年前倒した2025年までに半減することを目指しています。
また、イオンは廃棄問題で話題になりがちな恵方巻の対策にも、いち早く取り組む方針を発表しました。今季はハーフサイズの恵方巻きを従来の3種類から13種類に増やし、「食べきれない問題」にアプローチ。また、恵方巻の予約開始日を2週間早めて予約の量を増やし、店頭での廃棄を減らす方針です。
2020年以降の「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」の日本プロジェクトとしては、ワークショップを実施して算定や削減の戦略を立案。またサプライヤーとのQ&Aセッションを定期的に行いながら、⼀次⽣産から取り扱い、貯蔵、加⼯、流通、そして消費段階までを含めたサプライチェーン全体での協働を目指すとか。今回はイオンの取り組みを中心に紹介しましたが、同社の取引先である、大手食品企業の活動にも注目していきたいと思います。