ライフスタイル
2020/2/18 19:00

断捨離って何? 断捨離したい! という人へ。生みの親・やましたひでこ氏の人生から見えてくる、本当の「断捨離」

社会人になる、ひとり暮らしを始める、引越しをするなど、さまざまな環境の変化が起こる春。また、結婚で家を出たり、新しい家族を迎えたりする人もいるでしょう。部屋を片付けないと! となると最近口をついて出るのが「断捨離(だんしゃり)しなきゃ!」というセリフではないでしょうか。

 

ではこの断捨離に、どんなイメージをもっているでしょうか。もしかしたら、ただ“物をどんどん捨てること”に過ぎないのでは? ものごとを「断」ち、いらないものを「捨」て、執着から「離」れる、真の断捨離はできていないかもしれません。

 

例えば、この写真に写っている食器棚、とてもすっきりして見えますよね。まさに断捨離に成功した、という様相ですが、これは“クラターコンサルタント”として活躍する、やましたひでこさんのご自宅の食器棚です。

 

「断捨離」を最初に提唱し、著書やセミナー、テレビ・雑誌などのメディアを通じて広く一般化させた“生みの親”がこの、やましたひでこさんなのです。現在も、日本国内はもちろん世界で活躍し、“片付けられない人たち”にそのメソッドを伝えています。

 

彼女が、そもそもどうやって断捨離に出会い、どのような紆余曲折を経て、今に至るのか。その道のりを振り返りながら、私たちが日々の暮らしに取り込める“身近な断捨離”を教えていただきます。シンプルに暮らす、すっきりと整理する、に留まらないその先の暮らしとは?

 

第1回 断捨離との出会い
———偶然の出会いをどう生かすか———

———単刀直入にまず、断捨離との出会いから教えていただけますか?

 

やました「もともとヨガの講師をしていたのですが、その時に『断捨離』という言葉と出会いました。実践するようになったのは、ヨガの講師を20年ほど経験してから。“出会い”と聞くと、何かすごく衝撃的なことを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、たまたまの偶然が重なっただけなんですよね。私は皆さんに『断捨離』を伝える立場にありますが、あの日、あの時、出会う人がひとつでも違っていれば、今の私はいないと思うんです」

 

———たしかに。今日この場に集まっているのも、“出会い”ですよね。

 

やました「時間、場所、人、さらに同じ場所でも“高さ”が違えば、私たちは会えていませんよね。ちょっと話は逸れるけれど、最近の人たちは、無理に自分の領域に“引き寄せ”ましょう! なんて言いますよね? 日常的に素敵なミラクルが起きているのに、そこから目をそらして、引き寄せたがっている人を見ると『それ、やめない?』って思ってしまうんです」

 

———日常の当たり前なようで“ミラクル”な偶然に気が付くのは、簡単なようで難しいですよね。

 

やました「“たまたま”の出会いが重なっただけ。これは私が引き寄せたから必然だわ! なんていうのは、思い上がりだと感じます。だから断捨離との出会いも振り返ってみると、小学校で『あなたは今日から飼育係です』と担当を指名されたように、『あなたは今日から断捨離係です』と言われたような、自然な感覚なんです」

 

———自分から見つけに行ったというよりも、“任命された”という感じでしょうか?

 

やました「そうかもしれません。私は昔から『大丈夫?』って聞かれたら、なんでも『大丈夫です!』って答えてしまう子どもだったんです。それは大学に入ってからも変わらなかったけれど、言葉と行動が裏腹だから、自己肯定感の低さに拍車をかけてしまって。大学生の時に引きこもりをしていました。人生には一度くらいあるんですよね、闇の時期が(笑)。でもある時、そろそろ体を動かしたいなと、たまたまヨガを始めたわけです、カルチャースクールの」

 

———それが“たまたま”“偶然に”、なんですね。

 

やました「そうです。ヨガは自分が出来る範囲でポーズを取ればいいので、目的に向かって厳格に自分を律するような運動ではなかったんです。それが私に合っていたのか、楽しくて続けられました。でも半年経ったら、たくさんいた生徒さんがたったの5人になっていて。そうしたら、講師の先生から『指導者養成コースに参加しない?』と誘われて、参加すると見習いの資格をいただけたんです。この見習いの資格を持っている人なら、無料でいろんなエリアの講座に参加できたから、やった〜♪ ってもうルンルンで!」

 

———すごく楽しそうですね(笑)

 

やました「でもある時、急に講師の先生から『今日、私の体調が悪いから、見習いのあなたが講師ね』って役割を振られてしまったんです。で、どうなったと思います?」

 

———……何もできなかった?

 

やました「その通りです。赤っ恥をかきましたよ。でもそこで『もっと真剣にやらないと!』って奮起して、指導員を目指しました。大抵の人は失敗を恥じて恐れて、辞めちゃうのだけど、『これはひとつの経験にすぎない』と思って、必死に勉強したんです。その勉強の過程で『断捨離』の考え方とも出会いました。失敗しても奮起した、当時の自分を褒めてあげたいです(笑)」

 

———でも正直、失敗は怖いです……。

 

やました「失敗することを恐れたら、何も習得できない。多くの人が、失敗しないで成功したがって、“手軽に”とか“たった5分で”とかに流されてしまうんですよね」

 

↑「断捨離」を通じて数多くのメディアで活躍している、やましたひでこさん。その奥に見えるのが冒頭の食器棚で、リビングルームで“収納棚”と呼べるものは、たったこれだけ。食器がよく見えるよう、空間にすっきりと並べ、“うっとり”とする時間がたまらないのだとか

 

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ヨガの人気講師として大活躍! でも心に引っ掛かっていたものは……

———“失敗しない生き方”というと、「好きを仕事に」っていうフレーズを思い出します。

 

やました「それは『ワクワク症候群』ですね。好きなことにも失敗はあるのに、“ワクワク”が人生の基準になってしまっている。落ち込んだり、ワクワクしたりしながら、落ち込んだ時に何を掴むかが大切なんですけどね。人生にワクワクだけを求めるのはちょっと違うんじゃないでしょうか」

 

———やましたさんは、ヨガ講師をしている時はワクワクできていましたか?

 

やました「まわりの講師たちは『これが私の天職よ!』ってキラキラして働いていたけど、私にはそう思えなかった。たまたま出会って、たまたま面白いし、たまたまみんな喜んでくれるから、来てくれた生徒さんたちが笑顔で帰ってくれるのが、ただうれしくて頑張れたんだと思います」

 

———でも、何か違う、と?

 

やました「ヨガの考え方にはワクワクできたけど、ボディワークは私向きじゃないなという引っ掛かりがありました。たくさんの生徒さんが集まるんだけど、『え~今日も行くのか』って心のどこかでは思っていました(笑)」

 

———意外です!

 

やました「でもある時、ヨガのボディワークが終わった後、生徒さんと話をしていると、2000年くらいでしょうか? 収納ブームが到来していた時期で、盛り上がっているわけですよ。ものを捨てずに“収納”という名の箱に詰め込んで、隠して見えないようにしている話を聞いて、違和感を覚えました。これは師匠から教わった”生活ヨガ”になっていない、と感じたのです」

 

———”生活ヨガ”とはなんでしょうか?

 

やました「私の師匠は沖 正弘先生とおっしゃるんですが、日常生活の中にヨガの考え方を取り入れて、実践されていたんです。その考えのひとつに『断行・捨行・離行』がありました。そこから私は、片付けに悩んでいる生徒さんを集めて、みんなで『断行・捨行・離行』、つまり『断捨離』を実践してみない? と自宅で講習会をするようになったんです」

 

すべての出会いは“偶然”。それを生かすかは自分次第

やました「今回は『断捨離』との出会いについてお伝えしましたが、“偶然”や“たまたま”の出会いを生かすかどうかは自分次第、ということも大切な考え方だと私は思っています。その出会いが、深い縁なのか、長い縁になるかは本当にそれぞれ。誰とでも長く太い縁であればいいというわけでもないんです。一瞬の出会いでものすごいインパクトが与えられることもあるし、たまたま悪役として登場する人もいるわけですから」

 

———その出会いに気付くことって大切ですね。

 

やました「“超能力”って、日常の当たり前を当たり前にしない能力のことをいうんですよ」

 

———あの、ハンドパワーとかの超能力ですか!? もっとすごいことだと思っていました(笑)

 

やました「私も散々、先輩がたに言われてきました。今回こうやって、連載でお話できることも、たまたま私たちが出会えて、お話しすることができて、掲載されて、読んでいただける。すべて“たまたま”そして“当たり前”が重なったことなのだけど、こんなに有難いことはないですよね。たくさんの当たり前が積み重なって、展開して、人生が続いていくと思うと楽しくなりませんか?」

 

———なりますね!

 

やました「一方で“根切り”という言葉もあってね、植物がわかりやすいんですけど、過剰な部分を削ぎ落としてこそ、命が輝くということもあるんです。積み重ねも大切なんだけど、その積み重ねてきたものも選定して断捨離していくことで、新たな繁栄が生まれることもあるんですよ。これは、次回で詳しくお伝えしていきますね」

 

———ありがとうございます。この続きも楽しみです!

 

↑冒頭に登場した食器棚の中身。通常の家庭ではしまいこまれている食器たちも、この棚の中ではイキイキとして、器としてだけでなく、鑑賞するものとしての役割を全うしているよう

 

↑「今日はこれ!」と思ったら食器を入れ替えるそう。断捨離は“捨てる”だけではない。その奥義は第2回以降で!

 

第1回の断捨離に関するキーワード

・断捨離をする前に、まずは自分を知ろう!
・出会いは”たまたま”の連続、あとから意味を持たせる
・”たまたま”の出会いを生かすのは、自分次第

 

第2回は、やましたひでこさんがどのように「断捨離」のメソッドを確立させ、広めるに至ったか、またそこから得た断捨離の本質をお伝えします。断捨離につながる、「過剰な部分を削ぎ落としてこそ、命が輝く」の真意とは……。お楽しみに。

 

【プロフィール】

クラターコンサルタント / やましたひでこ

東京都出身、早稲田大学卒業。学生時代に出合ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を、日常の「片づけ」に落とし込んで応用提唱し、誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築した。断捨離を、人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置付け、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。また『新・片づけ術「断捨離」』(マガジンハウス)をはじめとするシリーズ書籍は、中国、台湾でもベストセラーを記録し、国内外累計400万部を超え、ヨーロッパ各国の言語でも翻訳されている。
・やましたひでこオフィシャルサイト「断捨離」
日々是ごきげん 今からここからスタート http://www.yamashitahideko.com/
・やましたひでこオフィシャルブログ『断捨離』
断捨離で日々是ごきげんに生きる知恵 http://ameblo.jp/danshariblog/
・断捨離オフィシャルFacebookページ http://www.facebook.com/dansharist

※「断捨離」はやましたひでこ個人の登録商標であり、無断商業利用はできません。

 

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