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2020/5/10 21:30

100円ショップアイテムで生き残れる家にする! 辻直美さん流・プチプラ防災術

世は新型コロナウイルスの話題一色。そんな中で、ふと思いました。もしいま大地震が起きたら、大変なことになる……!

 

最低限の備蓄はもちろんですが、家の中を見回してみると、地震がきたら落ちる、倒れる、移動するものばかりです。家で過ごす時間が長い今だからこそ、しっかり防災仕様にしておきたいもの。というのも、実は筆者も大阪北部地震のとき、家の中がかなり荒れました。地震直後の様子を撮影したものがこちらです。

↑筆者宅。キッチン

キッチンは、シンク横や食器棚からコーヒーカップやお皿が飛び出して大変なことに。

 

↑筆者宅。書斎

2階の書斎は、CDラックが折り重なるように倒れてきて、入り口を塞ぐ事態に。余震を恐れつつ、この状態から家の中を元通りにしなきゃいけないということ自体、結構メンタルをやられました。

 

もう同じ想いはしたくない! というわけで、今回は、国際災害レスキューナースであり防災のプロフェッショナルの辻直美さんに、手軽にできるプチプラ防災術を教えていただきました。

 

【実験】大切な我が家を守るために100円ショップのアイテムを活用!

早速防災対策を! と思ったけれど、いろんな防災グッズを買い集めるのは大変そう……。そんな筆者に辻さんが教えてくれたのは、なんと100円ショップのアイテム!

 

「本格的な防災グッズは高価だし、どこで買ったらいいのかわからないからと戸惑っている人も多いと思いますが、実は100円ショップで販売されているアイテムのなかには、防災で使えるものがたくさんあるんです。なかでも特におすすめしたいのが、“滑り止めマット”と“防振粘着マット”です」(辻さん)

 

でも、本当に100円の商品で対策ができるの?と訝しく思った筆者、まずは実験してみることにしました。

 

■滑り止めマット

「滑り止めマットを敷くだけで、全然違いますよ」と辻さん。実験対象は、文庫本6冊で重みをつけたプラスチックの収納ボックス。まずは、何も敷いていない状態です。

 

ほんの数秒揺らしただけで、大きくズレてきました。もう少し揺らしていたら、確実に落下です。続いて、下に滑り止めマットを敷いた状態で揺らします。

 

まったくズレませんでした! うちの息子にも力を入れて押してもらいました。

 

マットが少しよれてはきましたが、全然ズレない!

 

さらに、辻さんから聞いた秘策、箱の底にも滑り止めマットを敷いて、Wの摩擦でズレを予防する方法にもチャレンジ。

 

こんな感じで、底に両面テープでマットを貼りました。

 

かなり激しく揺らしましたが、びくともしません。息子に力を入れて押してもらった結果は……。

 

全身の力を込めて押していますが、まっっっったくズレませんでした! マット自体もよれてない! 滑り止めマットの威力、半端ないです!

 

棚に置いている小物は、いったんプラスチックケースなどに入れて、ケースの底と棚の両方に滑り止めマットを敷いておけば、かなり安心だなと感じました。

 

■防振粘着マット

もうひとつ、辻さんが絶賛していた防振粘着マット。ジェル状になっていて、転倒を防ぎたい家電などの下に敷くといいとのことです。このジェルでどれくらい効果があるのか、またまた実験です。割れるのは怖いけど、花瓶でチャレンジ。

 

するすると滑って、あっという間にこれだけズレました。これじゃ、倒れるだけじゃなくて飛んでいく危険性も!

 

次は、花瓶の底に防振粘着マットを貼ってみました。さあ、どうなるか!

 

ビックリするくらい、しっかりと固定されていました! ただ、高さがあるので、足元を固定していても揺れが大きかったら倒れます、おそらく。でも、そのまま倒れるだけなので、遠くまでは被害が及ばないなと思いました。これは、テレビやパソコンに貼っておきたい!

 

 

家の中のどこを優先的に防災対策するか?

さて、次は家の中のどこを防災対策すればいいかという点ですが、ここで、次の2枚の写真をご覧ください。

 

実は辻さんは、阪神・淡路大震災と大阪北部地震を経験されています。これは、大阪北部地震直後の辻さん宅と、隣人宅のリビングの様子です。

↑辻さん隣人宅・リビング

 

↑辻さん宅・リビング

 

地震の凄まじさをあらためて痛感するとともに、同じマンション内、同じ間取りなのに、対策をしているか否かでこれだけ差が出るとは! と驚きます。

 

「家中を完璧に対策しなきゃ! と思うと大変なので、まずは一番過ごす時間が長い場所、特に守りたい家電などが置いてある場所から対策することをおすすめします。多くの方はリビングかもしれませんね。場所が決まったら、次の3つのポイントをチェックしてみてください」(辻さん)

 

<チェックポイント1>退避する場所があるか

地震が起こったとき、たとえ物が倒れてきたとしても、逃げ道が確保できていれば生き延びることができるのだと辻さん。そのためには、退避する場所の確保が重要のようです。

 

「入り口が塞がれてしまったら、避難する経路がないということ。リビングだったら、すべての棚が倒れたと想定して、この場所なら被害が少ないという安全な場所があるか?  家の外に避難するときの導線が確保できているか? という点で、部屋の中を確認してみてください」(辻さん)

 

<チェックポイント2>物をもう少し減らせないか

物がなかなか捨てられない、買い集めたアイテムが部屋に溢れている……そんな人は少なくないと思いますが、「防災=シンプルライフ」でもあるのだと辻さん。

 

「地震のときの被害を考えると、物は少ないに越したことはないです。防災対策をする前に、今一度部屋の中を見渡して、本当に必要なものか、ここに置くべきものかを見極めるといいですね。

 

購入時には必要だったけど、もしかしたら今の自分にはもう必要ないものがあるかもしれない。そのうえで、絶対に守りたいものがどれかを考えてみてください。すべてを完璧に対策するのは難しいので、これだけは地震が起こっても守りたい!というものを優先的に防災対策する、というスタンスで良いと思いますよ」(辻さん)

 

<チェックポイント3>危なそうな場所があれば、実際に揺らしてみる

今回、筆者が盲点だなと感じたのが、「実際に揺らして確認してみる」という点。辻さんいわく、これは倒れるかも?と気になる場所があったら、実際に揺らしてみることが大切なのだそうです。

 

「少し揺らした程度で倒れそうになるということは、大きな地震が来たら間違いなくアウトです。たとえば、リビングの棚やテレビ台、パソコンが置かれているデスクなど、一度揺らしてチェックしてみてくださいね」(辻さん)

 

【実践】さっそくリビングをプチプラ防災!

我が家の場合は、家族が一番長く過ごすリビングのテレビとパソコン、小物類をどっさりと乗せている収納棚を対策することにしました。

 

■テレビ編

最近の大型テレビは、画面が割れるととても危険。また、置型と壁掛け型によって、注意点が違うのだそうです。

 

「薄型テレビは重心が高く、真ん中の一か所だけで支えているので、すぐに倒れそうになります。まずは足元を固めましょう。そのうえで、画面が割れたときの被害を最小限にするために、飛散防止フィルムを貼ること。スプレータイプのものもあるので、探してみてはいかがでしょうか。

 

壁掛けテレビの場合は、揺れてズレてくることはないですが、大きな揺れが起こると壁自体に亀裂が入って、そのまま放物線上にテレビが飛んでくる可能性があります。もしも飛んできたときのことを考えて、テレビの前には何も置かない、避難経路をテレビの直線上にはおかないことなどが大切です」(辻さん)

 

我が家のテレビは置型なので、下に防振粘着マットを貼ることにしました。

 

いざテレビを持ち上げてみると、結構重い……。これが飛んできたらと考えたらゾッとします。

 

こんな感じで、テレビの脚の下の四隅に貼りました。

 

押しても揺らしても、足元はバッチリ。あとは、飛散防止の対策をすればOKです。

 

同様に、気になっていたキッチンの収納棚にある電子レンジやトースターの下にも防振粘着マットを貼っておきました。これでかなり安心!

  

パソコン編

デスクトップ型のパソコンは、画面が割れることを防ぐ以外に、思わぬ被害を引き起こす箇所があるので注意が必要とのこと。

 

「デスクトップPCの場合は、テレビと同じ要領でモニターの対策を。あとは、熊本地震のときに、パソコンの後ろ側にあるケーブル類が揺れでブチッと切れてしまったケースがありました。揺れが起こったら、パソコンは簡単に飛んでいくので断線は必至です。また、断線時に停電していた場合、通電火災が起こることも多いので、ケーブル類をロックするチェーンなどを利用すると良いと思います。目線より高い場所に重いものを置かない、という点も徹底しておきましょう」(辻さん)

 

筆者が仕事で使っているのはデスクトップなので、モニターの足元をテレビ台と同じように防振粘着マットを貼って固定。実際にパソコンを置いている机を激しく揺らしてみましたが、かなり安定していました。ロックチェーンは、ネットで探してみようと思います!

 

棚の収納編

つい物をたくさん置いてしまいがちな収納棚は、そのまま置いてあるだけではすべて落下するので、大惨事に! 我が家のリビングにある収納棚も、文房具から小さな家電、子どもたちの玩具など、カオスな状態です。

 

「まずは、物を減らしてスッキリさせることが一番です。不要なものを処分し、そのうえで『この場所に本当に置かないといけないか? 他の部屋に置いても問題ないか?』という点で選別していきましょう。

 

必要なものだけ残したら、すべての棚に滑り止めマットを敷いて準備はOKです。小物を種類別に、100円ショップなどで売られているプラスチックケースやカゴなどにまとめていきます。ケースの内側、そして底にも滑り止めマットを敷けば、摩擦が大きくなり、より滑らなくなりますよ」(辻さん)

 

早速、すべての棚にマットを敷きました。両面テープで固定すると、さらに安全。

 

本も、こうして滑り止めマットの上に並べることで、滑り落ちにくくなりました。小物類も分類できて、使い勝手も良くなりましたよ。

 

我が家では吊り下げ型のワイヤーラックをよく使っているのですが、そこにも滑り止めマットが使えます。ウエアラブルネックスピーカーも、しっかり保護!

 

吊り下げ部分にも、マットの端切れを挟んでおけばズレません。実際に棚を揺らしてみましたが、何一つズレたり落ちてきませんでした! 本当に、使えるアイテム!

 

 

【結論】お金をかけなくても、いますぐ手軽に防災対策できる!

今回の辻さんのお話で、自分の家をしっかり対策しておくことの大切さを痛感しました。そして、100円ショップアイテムの優秀さよ……。もっと高価なアイテムを買わなければダメだと思っていましたが、うれしい裏切りでした。

 

最後に辻さんからアドバイスが。

 

「人は、自分もしくは友人が被災したシチュエーションで地震が起こるものと思いがちです。たとえば阪神・淡路大震災を経験した人は、早朝、家族が全員揃っているときに地震が起こることを心のどこかで想定してしまっている。さらに、過去被災したときの被害がマックスだと思ってしまう傾向があります。まずは、その固定概念を外したいですね。

 

男性の場合は特に、家以外の場所にいる可能性が高いと思います。会社にいるときとも限らないし、出勤途中かもしれない。取引先の会社のエレベーターの中や出張先のホテル、もしかしたら帰りに立ち寄った居酒屋で飲んでベロベロになっているときに被災する可能性だってあるんです。

 

命からがら帰宅して、家の中が悲惨な状態だったら……と考えると、さらにダメージが大きくないですか? だからこそ、家の中、自分の巣は完璧にしておきましょう!」(辻さん)

 

我が家も引き続き、家の中を整理整頓しつつ、防災対策に励みます!

 

【お話を聞いた方】

辻 直美(つじ なおみ)さん

国際災害レスキューナース。まぁるい抱っこ®マイスター。一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団・JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)に在籍し、現在も救命救急災害レスキューナースとして活動中。被災地での過酷な経験をもとに、本当に使えた防災術を多くの人に知ってほしいと、大学での防災に関する講義・講演や、小中学校での授業を精力的に行っている。現在、大阪市防災・危機管理対策会議で防災専門家として活動中。近著に『レスキューナースが教えるプチプラ防災』(扶桑社)がある。

 

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