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2021/1/27 19:00

捨てられないなら“寄せ”ればいい! 新発想のズボラメソッドで悩まず部屋を片付ける

例えば1週間のうち、片付けにどれくらいの時間を費やしていますか? 毎日のように片付けているはずなのに、なぜかすぐに散らかってしまう、また週末のたびに片付けに時間をとられているという人は、もしかしたら“片付け”の捉え方自体を見直したほうがいいのかもしれません。

 

今回は、整理収納アドバイザーであり“幸せ住空間セラピスト”として活動する古堅純子さんに、片付けられない人のための片付け方を教えていただきました。

 

モノの仕分けはしなくていい!

片付けの方法はさまざま。ところが、「たいていみなさんが一番に手をつけるのが“モノの仕分け”」なのだと古堅さん。必要なものと不要なものを分けてから、不要なものは捨て、必要なものは整理整頓し、出し入れしやすいように収納する。それが、従来の片付けの基本でした。

 

でも、古堅さんの新しい片づけメソッドの根底は、「モノを仕分けることや、しまうことばかりが片づけではない」というところにあります。

 

「仕分けて整理する方法が合っている方は、もうとっくに家が片付いているし、きれいな部屋を保てているでしょう。でも、そうでないから片付けや収納についての本を買ったり、このような記事を読んだりしているのではないでしょうか?

これまでのやり方では片づかない! と諦めている人に向けて考えた新しい方法では、まずモノを“いる・いらない”と仕分けすることからは始めません。仕分けって、ひとつひとつのモノと向き合って、いるのかいらないのか考えなくてはならないので、すごく時間がかかってしまうんですよね。仕分けだけで一日が終わってしまい、肝心の部屋はまったく片づいていない! なんて残念な結果に終わることもあります。また、仕分けと収納が終えられて、クローゼットの中は使いやすくてキレイになったけれど、リビングは散らかり放題……という本末転倒の家もよく見かけます」(住空間セラピスト・古堅純子さん、以下同)

 

モノを捨てるのではなく“活かす”ことを考える

仕分けからはじめない古堅流の片付けでは、モノを捨てることも推奨していません。古堅さんが数々のお宅を訪問して片付けてきた経験からも、“片付けること=モノを捨てることではない”というのです。

 

「片付けというと、とにかくモノを捨てて減らさなきゃと思っている方も多いのですが、実際に仕分けていただくと、時間をかけて仕分けたわりに、捨てる量は微々たるものだったりします。一室片付けてもゴミ袋ひとつ分しか捨てるものがなく、まだモノが溢れているのだとしたら、仕分けするのは無駄ですよね。

それに、せっかく買ったりいただいたりしたものを、部屋を片付けたいという理由だけでなんでも捨ててしまうのは悲しいですよね。捨てられない、捨てたくないならいっそ、“モノを大切に使う”という基本的なことに立ち返ってみてもいいのではないでしょうか」

 

モノを“寄せて”、空間の“景色”を変える

それでは、どのように片付けたらいいのでしょうか? 古堅さんが教えてくださったのは、「部屋の中の空間を“景色”ととらえること」でした。

 

「まずはリビングのような、多くの時間を過ごす場所について考えてみましょう。その空間を“景色”として見たとき、美しいでしょうか? 居心地がよいと感じる景色になっていますか? 棚の上の飾り物の周囲に、レシートや取れてしまったボタンなども置いてしまってはいませんか? 後で開封しようと思っている請求書やチラシが、テーブルの上に積まれていませんか?

その部屋の景色を美しく整えることこそが、はじめに手をつけるべき片付けです。下記のポイントに従って、まずはモノを“寄せて”みてください」

 

1. テーブルの上のモノを寄せる

「テーブルやデスク、キッチンのカウンターなど、作業をしたり食事をしたりする場所にモノを置くのをやめましょう。何かしようとするときに、必ずモノをどかしてからしなくてはなりませんし、そこにモノがあるだけで部屋全体が雑多に見え、景色が悪くなってしまいます」

 

2. 床にモノを寄せる

「床に置いてしまったモノは、視界にも入りづらいし、しゃがまないと取れないので、いったん床に置いてしまったら最後です。それがいつもの景色となり、片付けようと思えなくなってしまいます。掃除機もかけづらいので、どんどん部屋が荒んでいってしまいます」

 

3. 飾り物以外のモノを寄せる

「棚の上をよく見ると、飾るためではないモノが置かれていることがあります。棚の上は飾るためだけのモノを置く、と決めるだけでも景色は変わります。飾っておいたガラス皿に小銭を入れたりしては、せっかく飾った景色が崩れてしまいますよ」

 

古堅さんが提案する「寄せる」とは、その場にある片付けなければならないもの、景色を邪魔しているものをまとめてしまうこと。ではその“寄せた”モノはどうしたらいいのでしょうか?

 

寄せたものは“ざっくりボックス”に入れて“更地”を作る

さて、1〜3に沿って寄せたモノは、ひとまず“ざっくりボックス”に入れて、視界に入らないようにしてしまいましょう。

 

「景色を美しく保つため、寄せたモノはぜんぶざっくりボックスに入れ、“更地”にします。まずは見えなくなればいいので、とにかくリビングの景色をきれいにしましょう。部屋に余裕があるなら、一部屋を“ざっくり部屋”にしてどんどん放り込んでいくのでも構いません。寄せただけなので片付いているわけではありませんが、ただ視界から消すだけで景色が変わり、きれいになった部屋を体感できます」

 

こうして視界からモノを消して整えた景色を変えてしまう最大の敵は、“チョイ置き”だそう。チョイ置きしないためにも、さまざまな場所にざっくりボックスを用意しておきます。

 

こちらは届いた雑誌や見なくてはならない書類を入れた“ざっくりボックス”。「捨てるわけにはいかないけれど、片付けるには手間がかかる、というものは全部ここに入れて、年に何度か時間があるときに中身を見直します」

 

こちらはヨガウエアとポーチを入れるための“ざっくりボックス”。「秋に何度かヨガに行くのですが、いちいちタンスに出し入れするのが面倒なので、こうしてリビングの片隅に置いています。また、いつも使っているポーチもバッグなどのついチョイ置きしてしまいそうなものも、景色が悪くなるので、ざっくりボックスの中に隠します」

 

“ざっくりボックス”は、こんなふうにリビングの片隅に置いておきます。

 

「ただこれだけのことで、部屋が片付いて見えませんか?部屋のチョイ置きがなくなるだけで、景色が保てるんです。散らかしてしまってからでは、かなりがんばらないと片付かなくなってしまいますから、散らかさない暮らしを意識して過ごすことが大切です」

 

こちらは緊急事態用の“ざっくりボックス”です。「急な来客があるときや、乾いた洗濯物がすぐに畳めないときなどは、折り畳み式のざっくりボックスにとりあえず入れて、押し入れなどに隠しておきましょう。いったん視界から消すだけで、きれいなリビングに戻すことができます。折り畳み式なので、使わないときはコンパクトにしまっておけます」

 

“ざっくりボックス”以外にも、こんな寄せ方がありました。普段使う爪切りやリモコンなどは、引き出しつきの机に寄せてしまえば、景色を保ちつつ必要なものはそばに置くことができます。

 

寄せたものは、“ざっくりボックス”に入れてひとまず景色を整える。このほかにも、景色を美しく保つためのコツを教えていただきました。

 いつも使うものには収納場所を確保する

収納場所を作る必要があるものには、しっかりとスペースを確保しておきましょう。

 

「ウォーターサーバーの水や食材の定期宅配の箱など、“使い切ったらなくなるもの”は、いつかなくなるからという言い訳ができるので、つい玄関に置いてしまいがち。でもそれ、本当に“いつか”なくなりますか? 食材の定期宅配の箱なんて、週に一度取りにきてはくれるけれど、また注文したときに同じ場所に箱を置いてしまいますよね。結果的にずっと玄関が狭い上に、景色も悪くなります。そういうものがない方が景色はよくなりますから、隠せる場所を準備しましょう」

 

古堅さん宅では、ストックしているお茶や炭酸水を、見えないように棚の下に収納していました。「ストックの飲料はキッチンに置くと邪魔になるので、リビングに置く方がいつでも家族が取り出しやすくて便利なのでそうしています。どこで使うかを考えてモノの置き場を考えることも大切です」

 

こちらはお子さんのバッグを置くための棚。普段使っているバッグも、置き場が決まっていればソファの上に投げ出したり、床置きしたりの防止につながります。「バッグは高さのある棚に置くと、ひらいて中身を取り出しやすくて便利ですよ」

 

いつも使う調味料も、出しっぱなしにせず、きちんと扉のある棚にしまっておきます。「キッチンは特に油や水で汚れやすいので、なるべくモノを出しておかないようにします。しまっておけば瓶に埃がついて汚れてしまうこともほとんどありませんから、きれいな状態を保っておけます」

 

収納場所の優先順位を考えて片付ける

リビングの景色がきれいになってきたら、家のさまざまな場所にある収納場所も、優先順位に応じて中身を見直してみましょう。リビングにいちばん近く、取り出しやすい場所にある収納には、もっとも優先順位の高いものを入れます。

 

「わたしはモノを、“死んでいるモノ”と“生きているモノ”に分けています。死んでいるモノとは、まったく動きがなくただ取ってあるだけのもの。昔のアルバムや思い出の品、効かなくなったCDなどは、ほとんどしまってあるだけで動かないのでこちらに属します。普段使わないので、寝室の奥の押し入れや、二階の使わない部屋などに寄せておきましょう。

一方、生きているモノとは、毎日着ているコートや洗い替えのマスク、掃除機などで、一日のうちに一度は必ず出し入れする必要のあるものです。実は、この“生きているモノ”こそが、部屋を散らかす原因になるモノなんです。つまり、“生きているモノ”を日々どこに置くかを考えることこそが、部屋の景色を保つ秘訣になります。リビングにあるいちばんいい収納棚を生きているモノの置き場にして、散らからないリビングを実現させましょう」

 

一日一度は“更地”に戻す

モノがとりあえずなくなってきれいな状態が作れたら、不思議とこの状態を保ちたい気持ちが生まれてくると古堅さんはいいます。

 

「テーブルで食事をしたらすぐにテーブルの上のものをキッチンに戻し、書類はざっくりボックスに入れ……としていると、自然とテーブルの上はいつもきれいに片付きます。この景色を“更地の状態”と覚えておきましょう。もしここにモノが一時的にのってしまっても、数は多くないので片付けやすくなります。一日に一度はここを“更地に戻す”と決めて、居心地のよい部屋の景色をキープする習慣を身につけましょう」

 

「キッチンは、ガスコンロとシンクに挟まれた部分がもっとも大切な作業スペースですよね。ここにはモノを置きっぱなしにしないように気をつけ、いつでも料理しやすいよう、清潔な更地にしておきます」

 

疲れたら…きれいになったら何をしたいか思い描く

最後に。片付けは、しているうちにだんだん疲れてきて、やる気が失せてしまうこともあるでしょう。そんなときは、“部屋がきれいになったら何をしたいか”を考えるといいそう。

 

「片づいたリビングでなら、刺繍を広げることもできるでしょう。ヨガマットを置いてヨガをするスペースを作ることもできるかもしれません。きれいになった寝室で、アロマを焚こうという気持ちが湧いてくるかもしれません。モチベーションを上げるためにも、きれいになった部屋でどんなことがしたいか考えてみてください。こんな部屋にしたいというイメージが明確になると、ワクワクする気持ちが湧いてきて、やる気を支えてくれますよ」

 


『シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新書)
古堅さんの著書では、モノが多い家庭や家族で住んでいる家の片付け方を中心に解説しています。実家が片付かない!と嘆いている人の参考にもなりそうです。

 

いつも見ている景色がきれいになると、不思議と人は“寄せたモノ”が気になるようになるそうです。そこからやっと、物置部屋に寄せてしまった“死んだモノ”や、とりあえず収納したモノに目を向けて片付ければいいのです。収納の中よりも、まずは自分がいつもいる場所がきれいであることが大切。日々を暮らす空間をいつも美しい景色に整えてみましょう。

 

【プロフィール】

幸せ住空間セラピスト / 古堅純子

1998年、老舗の家事代行サービス会社に入社。20年以上現場第一主義を貫き、お客様のもとへ通っている。5000軒以上のお宅に伺いサービスを重ね、独自の古堅式メソッドを確立。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、収納サービスを提供する傍ら、これまでの経験を生かして家事効率化支援事業を展開、オンラインでのコンサルティングも好評を博している。テレビ・ラジオ・雑誌などメディア取材協力も多数。幅広い世代に向けての講演も行う。著書に『マンガで古堅式 夢をかなえる片づけのルーティン』(ジービー)や『定年前にはじめる生前整理 人生後半が変わる4ステップ』(講談社+α新書)がある。
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