新生活時期に向けて、新天地に物件を探している、あるいはすでに引っ越しを予定しているという人もいるでしょう。2〜3月は物件がもっとも“動く”時期に入り、3〜4月になると、引っ越しは繁忙期を迎えます。準備が遅くなってしまうと、希望の日時に引っ越しできなかったり、新居でのライフラインにトラブルが起きてしまったりすることも! また、選択肢が減ることで比較検討が満足にできず、引っ越し料金がかさみがちです。
つまり、引っ越しは段取りが大事。直前で慌てないために、どのような準備や片付け、荷造りをしたらいいか、引っ越しサポートのエキスパートで整理収納アドバイザーの畑農靖子さんに教えていただきました。
ステップ1. 最初にするべきことは「ライフラインの確保」
新しい家の契約が済んだら、その日から引っ越し当日までに何をすべきか、TODOリストを作ることをおすすめしているという畑農さん。それは、引っ越した当日からライフラインが使えるようにするためでした。
「引っ越すときにはさまざまな手続きが必要になるので、何をどう手続きしたのか、混乱してしまうことがあります。そこで、何をすべきかTODOリストを作り、どの手続きをすべきで、なにを完了したのかチェックできるようにしておきます。
ライフラインには、電気・ガス・水道の他に、今はインターネット環境も含まれます。人によっては電話や郵便物の転送なども入りますよね。まずはこれらを、引っ越し当日から新居で使える状態にしなくてはなりません。ほとんどの場合はオンラインで申請できるのですが、ガスだけは閉めるのにも開けるのにも立ち会いが必要ですから注意してください。また、郵便物の転送は届けを出してから1週間ほどかかることもありますので、事前に申請しておきましょう」(整理収納アドバイザー・畑農靖子さん、以下同)
絶対にすぐ手続きすべき! TODOリスト
・電気
電気会社に引っ越し当日までに(時間帯によっては開通が間に合わないこともあります)。現在の住居の電気を止める日と新居の電気を開通させる日を連絡しましょう。新居のアンペア数が足りているかも、合わせて確認しましょう。
・ガス
ガス会社に1週間くらい前までに(繁忙期は引っ越しが決まったらすぐに連絡しましょう)。現在の住居のガスを止める日と、新居のガスを開栓させる日を連絡しましょう。開栓には立ち会いが必要なので、日程調整をしましょう。
・水道
水道局に、引っ越し2〜3日前までに。現在の住居の水道を止める日と、新居の水道を開栓させる日を連絡しましょう。開栓後すぐに、水勢や水に濁りがないか確認しましょう。
・インターネット
各通信会社に引っ越し2〜3日前までに手続き。使用できない地域や電波が弱いなどの問題がないか確認しましょう。
・電話
NTTまたはその他の直収電話会社へ。同じ電話番号が使えるのか確認しておきましょう。
・郵便
郵便局へ、郵便物の転送届を出します。少なくとも転居の1週間前には転送届を出しておきましょう。
ステップ2. 住所変更手続きは優先度の高い順からリストアップしていく
引っ越しの際は、さまざまな方面に住所変更を届け出なくてはなりません。一番大切なのは住民票ですが、これは引っ越し前に今住んでいる地域の役所に出向いて、転出届を発行する必要があります。それを持って新居付近の役所に行くことで、転入届が受理されるので、転出の手続きを忘れずにしておきましょう。
「優先度の高いものとしては、免許証やカード会社、保険関係、銀行などです。特に免許証は住所変更を済ませておかないと、更新のお知らせが届かずに失効してしまうケースもありますので、早めに手続きを済ませましょう。定期宅配や定期購読を頼んでいるものや、オンラインショップの登録情報、勤め先への申請なども、できるだけ早く行いましょう。このときに身辺整理も含めて、使っていないカードを解約したり、新天地では使えないお店のポイントカードの精算をしたりするといいですよ」
ステップ3. 引っ越し業者を選ぶ
春先の引っ越しは一年でいちばん多く、もっとも引越し業者が混雑するときです。希望の日時がある場合は、引っ越す地域が見えた時点で予約しておくのもいいでしょう。
「繁忙期はどうしても引っ越し料金も高くなってしまいますし、一日に何件もの引っ越しを扱っているので、予約時間が前後してしまうこともあります。価格を抑えたいなら、安くなる夕方以降に荷物を運ぶのもひとつの手です。ただし、物音がご近所のご迷惑にならないよう配慮が必要でしょう。
また、いくつかの業者の見積もりを取り、サービスや金額の比較をしてみてください。早めに決めると早割で安くなる業者もあります」
ちなみに、引っ越しのときは、近隣の方にご挨拶を兼ねてお蕎麦を配るという風習がありますが……?
「現代でも、お菓子やタオルを持ってご挨拶まわりをする方もいらっしゃいますが、ひとり暮らしで近隣と距離を置きたい方もおられると思いますので、絶対にしなくてはならないわけではありません」
ステップ4. 荷作り前の片付けは“新居のサイズ”に合わせて行う
引っ越しの荷作りをする前にしなくてはならないのが、何を持って行くかを選別することだそう。運ぶものが多ければそれだけ引っ越し費用がかさむだけでなく、荷ほどきするのも労力がいりますよね。
「ただモノを減らそうと漠然と片付けはじめても難しいので、新しい家では何をどこにしまおうかと考えながら、新居のサイズに合わせてモノを整理していきます。
たとえば靴箱が今の家よりも少し小さくなるようなら、そこに入るだけの靴を持っていくようにするか、別の場所に収納できないか、考えることが必要ですよね。クローゼットは今使っているところより広くなるのか狭いのか、測ってみてください。狭くなるようであれば、今吊るしている洋服をどこにしまうのかを考えなくてはなりません。意外とありがちなのが、今の家では備え付けの本棚やクローゼットがあるのに対し、新居にはないというパターン。収納が減ってしまうときは、新たに棚を買うなどしなくてはならないので、新しい家の中でのモノの位置をイメージしながら整理して片付けていきましょう」
忘れがちなのは“照明”と“カーテン”
一般的には、入居予定の部屋にカーテンはついていません。照明はついていることもありますが、ついていないこともあります。
「今使っている家のカーテンのサイズが合うかどうかは、事前に確認しておきましょう。使えない場合は、入居日までに新しいものを準備しておきます。カーテンがないと、外から丸見えになってしまう部屋もありますし、そうでなくても落ち着かないものですよね。また、今の部屋の照明が備え付けのものだった場合は、そのまま返さなくてはならないので、新しい部屋につける照明を準備します。カーテンのレールがついているか、今使っている照明機器がちゃんとつくかなども事前に確認しておかないと、思わぬ出費につながってしまいますから、気をつけましょう」
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引っ越しの準備の5段階目は、荷造り。次のページでは、手際良く安全に物を移動するための荷造りの方法について、教えていただきました。
ステップ5. 引っ越しの荷作りの仕方
不要品の処分が済み、引っ越し先に持っていく荷物が決まったら、いよいよ荷作りをはじめます。家族での引っ越しでは、荷物も多く梱包にも時間がかかりますが、ひとり暮らしであれば、遅くとも3日前くらいから始められるようにしておきます。梱包は引っ越し業者が来る前には終わらせておきましょう。なお、家電は電源を抜いておけば、引っ越し業者が梱包してくれるのでそのままにしておいて構いません。
「段ボールはAmazonなどでも手に入りますが、引っ越し業者に手配してもらうのがいいでしょう。会社によっては、ほかの引っ越しで使用した段ボールをリサイクルし、安く貸し出してくれるところもあります。またどのくらいの枚数が必要かわかっているので、適切な数を持ってきてもらえ、開梱後の段ボール回収サービスをしてくれる場合もあります」
1. 荷作りに必要なものを準備する
まずは荷作りに必要なものを準備しましょう。「引っ越し業者が届けてくれる場合もありますが、以下のものを準備しておくと、荷作りの効率がよくなりますよ」
・緩衝材や新聞紙
緩衝材は引っ越し業者が届けてくれる場合もありますが、食器や割れ物を包んだり、段ボールの中敷にしたりするのに便利です。新聞紙で割れ物を包む場合は、段ボールの中で動かないよう、くしゃくしゃに丸めた新聞紙を緩衝材代わりに入れましょう。
・養生テープ
プラスティックの衣装ケースや電化製品などは、ガムテープで固定してしまうと、うまく剥がせず痕がつくこともあるので、養生テープも用意しておくといいでしょう。
・色別のシール
部屋や物の種類別に荷作りした段ボール箱が迷子になってしまわないよう、色別のシールを貼っておきます。青いシールが貼ってある段ボール箱は洗面所、緑は寝室などとわかるようにしておくと、運び込みのときにスムーズです。
・スズランテープ
本を縛るときや、コンセントをまとめておくときなどにあると便利でしょう。
・油性マーカー
段ボール箱に何が入っているのか、どこに置くものなのかを書くために必要です。
2. モノの行き先の地図を作る
引っ越しの作業は、荷ほどきをいかにスムーズにできるよう梱包するかが大切です。「モノが迷子にならないように、地図を作ってみましょう。引っ越し先の間取り図を用意し、部屋ごとにA、B、Cと場所の記号を決めていきます。ワンルームでも、寝るスペースはA、テレビまわりはBなどと、スペースごとに決めていくといいでしょう」
「記号を決めたら、段ボール箱にはその記号を記していきます。荷物を新居に運び入れるときに、段ボール箱があちこちに置かれてしまうと、荷ほどきも大変ですし、何をどこにしまうべきなのかもわからなくなってしまいます」
「運び込む時と段ボールを積み上げた時にもわかりやすいように、段ボールへのメモ書きは、上面と横面の2か所にします。記号の他に、色別のシールも貼っておきましょう。記号で把握し、さらに色でも視覚的にパッと理解できれば、荷下ろしのときに迷子になりません」
3. 季節ものや不要なものから荷作りする
一番に荷作りするのは、生活の中では使っていない思い出のものや季節のもの、インテリアのものなど、毎日の生活にすぐに必要のないものから始めます。
「収納ケースに入った季節の洋服などは、ケースごと持っていってくれますので、開いてしまわないよう養生テープで留めておきます。養生テープに“○段目”と段数を書いておくと、荷解きするときにも戸惑いません。ただし、下着類だけは段ボール箱に詰めておいた方がいいでしょう」
4. 食器は厳重に包んで割れないようにする
引っ越しするときにもっとも悲しいのは、大切にしていたモノが壊れてしまうことですよね。特に割れ物はしっかり梱包しておきましょう。
「段ボール箱の底にタオルや緩衝材、新聞紙などを敷いて、衝撃に耐えられるようにしておきます」
「平たいお皿は積み上げてしまうと、重さが上からかかったときに割れてしまいがちです。緩衝材にひとつひとつ包んだら、立てて入れておきましょう」
「ワイングラスのように柄が細い場合は、その部分にしっかりと緩衝材を巻いてから、さらに全体を緩衝材で包みます。ただし、大切なものでどうしても心配なものは、自分で運ぶのが安心です」
5. 普段の生活に使っているものは最後に詰める
調味料や普段使っている食器、スキンケア用品などは、一番最後にまとめます。使いかけの調味料は段ボール箱に大きなビニール袋を敷いてから入れ、段ボールの口を開いたままにしておきましょう。
「こうすることで配送の方がこぼれないように運んでくれます。冷蔵庫のものは引っ越しが決まった時点から極力減らしていき、当日はクーラーボックスや発泡スチロールの箱に入れて運びます」
6. 最後に“最初の一箱セット”を作る
洗面用具や、引っ越しが終わった夜に着るパジャマ、すぐにかけたいベッドシーツなど、引っ越してすぐに使うものは、このように大きく赤で“最初の一箱セット”と書いた箱に入れておくといいそうです。
「この箱だけは、トラックの奥の方に詰められてしまわないよう、最後に運んでもらいます。新居に着いたときに最初に出してもらえるので、すぐに開梱しましょう」
【“最初の一箱セット”に入れるもの】
・当日の食事に関するもの…すぐに料理する必要があるならば、そのときに使うもの
・当日の就寝に関するもの…寝るときに着るパジャマ、シーツなど寝床に必要なもの
・当日の入浴に関するもの…タオル、スキンケアやヘアケア用品など
・翌日の仕事に関するもの…翌日仕事に行くときに必要になるもの
他にも、常備薬などすぐに開梱したいものを入れましょう。
7. 貴重品はキャリーケースやボストンバッグに入れる
貴重品などは迷子になったりトラブルになったりしないよう、自分で運びます。キャリーケースなどに入れて持ち運びしましょう。
「自分で運びたい割れ物や大切なものの他に、通帳や印鑑、鍵、家の契約書などの貴重品もキャリーケースにしまいます。遠方への引っ越しの場合は、引っ越しトラックが予定通りに到着しないこともありますから、携帯電話の充電器やスケジュール帳などもこちらに入れておきます」
引っ越しは段取りよく準備できれば、引っ越した先でもすぐに開梱できて、スムーズに新生活をスタートできます。引っ越し荷物は仕事関係、衣類、食器、雑貨の順に開けていきますが、1週間以内にすべて開けて片づけるようにしましょう。段ボールを開けないまま押し入れや物置に押し込んでしまうと、次の引っ越しまで開かずの段ボールになってしまうのでご注意を!
【プロフィール】
整理収納アドバイザー / 畑農靖子
カイロ、北京への夫の転勤に伴う移動を含め13回の引っ越しを経験、多様な住まい方に対応した住宅設営を得意としている。現在はStudio HAGA(スタジオハーガ)でお片づけコーチングスタッフとして活躍する。