防災バッグは詰めて終わりじゃない
「防災散歩」と「定期点検」を忘れずに!
防災バッグを作っただけで満足してはだめ。完成した後の「防災散歩」と「定期点検」こそ、忘れてはならない作業です。
「防災散歩」とは、完成したリュックを背負い、避難所までのルートを歩いてみること。実際に歩くことで「意外と重かった……」「もう少しいけそう!」など、使い勝手を確かめることができるのです。また、避難時に危ないポイントがないかを確かめる機会にもなります。
「チェックするポイントは大きく分けて2つあります。まず1つが、ブロック塀や自販機、擁壁のない崖など、地震が起きた時に倒れたり崩れたりしそうなものがないかどうか。もう1つが、手すりの付いていない用水路や外れかけのマンホールなど、浸水して足元が不安定な時に落ちそうな場所がないかどうかです。これらに注意しながら歩いてみて、もし見つけたらハザードマップに印をつけておきましょう。
そうすることで、災害が起きた際、危険を避けながら避難所に向かうことができます。また、今回は晴天時の昼間、次回は夜間、その次は雨の日などと条件を変えることで、それぞれの状況に応じた注意ポイントを確認できます」
そして2つ目の「定期点検」について、高荷さんは「少なくとも1年に1回。できれば半年に1回は点検をしてほしい」と話します。
「半年おきの点検では、電池を使ったアイテムが正常に動くかどうかを確認していただければ十分です。そして1年に1回、賞味期限切れの食料はないかなどの全体的な点検を行うようにしてください」
しかし実際のところ、「定期点検」と聞くと急に腰が重くなり、ついつい点検を怠ってしまう人も多いのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが、普段から食べている間食を非常食として入れ、点検をルーティーン化するという方法です。
「普段から食べている栄養補助食品やチョコレート菓子などを、非常食としてリュックに入れておきます。市販の食料品は賞味期限が1年くらいなので、切れる直前に入れ替え、そのついでに防災バッグを確認するというわけです。また、防災専用の食べ物は賞味期限が長いものの、なんせお金がかかります。防災を長続きさせるという意味でも、安価で済むこのやり方はおすすめですね」
外出時は「ライト」と「ホイッスル」をおともに
子どもがいる家庭の場合、災害時の行動について親子でしっかりと話し合っておく必要があります。その際、高荷さんがぜひ心がけてほしいと話すのが、「枕元ポーチ」づくりです。
「“枕元ポーチ”とは、その名の通り枕元に置くポーチのことです。子どもが気に入ったぬいぐるみのリュックやポーチを準備し、中に小型ライトとホイッスルを入れておきます。そして、『避難する時にはこれを持ってね』『停電で部屋が真っ暗になった時には、このライトをつけてお母さんを待っていてね』などと話しておくんです。そうすることで、いざという時に取るべき行動を確認できます。
また、いざ避難所に行った際、毎日枕元に置いていたぬいぐるみやポーチがあるだけでも、子どもはすごく安心します。愛用品を持っていける上に防災にもなる一石二鳥のアイデアです」
実は「ライト」と「ホイッスル」は、大人が普段外出する際にもぜひ持ち歩いてほしいアイテム。暗闇の中で身動きをとりたい時や助けを呼ぶ時、それらが必ず役に立ちます。カバンの取り出しやすい位置につけたり、ポーチに入れたりして、お出かけのおともにしておきましょう。高荷さんにおすすめアイテムを教えてもらったので、『どれを買ったらいいのか分からない』という方は、ぜひ参考にしてみてください。
・人の耳に届きやすいホイッスル
コクヨ
「防災用救助笛〈ツインウェーブ〉」(黒・白・オレンジ)
500円+税
人間の耳に聞こえやすい高さの音が出るよう設計されているため、広範囲の人に音を届けられるホイッスル。キャップが付いており、常に清潔に保てるよう配慮されています。
・8時間点灯するキーライト
GENTOS(ジェントス)
「SK-8GWH 」
770円+税
質量わずか8gながら、8時間の点灯が可能なキーライト。GENRTOSはLEDライト専門メーカーで、国内メーカーならではの高品質・高性能が特徴のひとつ。ヘッドライトや懐中電灯など、高荷さんの防災バッグに入っているライトも、すべて同メーカーのものだとか。
何より大切なのは、長続きさせること
「皆さんにお伝えしたいのは、『物を買うのは死なない準備ができてから』ということです。防災バッグの準備はしていたが入れていた棚が倒れてしまった、防災バッグを持って外に出たはいいがどこに避難したらいいのか分からない、などでは、まったく意味がありません。家の中に固定されていない家具などの危険箇所はないか、避難場所はどこなのかなどをしっかりと確認した上で、防災バッグを準備するようにしましょう。
また、繰り返しにはなりますが、防災において何よりも大切なことは『長続きさせること』です。気合を入れ過ぎたり、お金をかけすぎたりすると、必ずいつか息切れしてしまいます。そして災害は、息切れした直後に起こり、命を奪っていきます。だからこそ、好きなデザインのリュックを準備したり、自分の好きなお菓子を非常食にしたり、長続きさせるために必要なことは積極的に行うようにしてください」
【プロフィール】
備え・防災アドバイザー / 高荷智也
「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動するアドバイザー。自身が運営する総合防災情報サイト「備える.jp」や各種メディア、セミナーなどを通じて、防災に関する賢い知識を伝えている。
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