テレワークやオンライン会議の普及により、場所や時間にとらわれない新しい働き方が広がりつつあります。これまで“働く場”として機能してきたオフィスの姿も変わっていくなかで、これからのオフィスに求められることは何か。事務用品やオフィス家具のメーカーであるコクヨが、オフィスの新時代を見据えたオンラインイベント「働くのミライ会議 KOKUYO WX(Work Transformation)カンファレンス2021」を4月13日・14日の2日間にわたり開催しました。
「職場」と「家庭」を分けない働き方が今後の主流に
同イベントでは、2日間で8つのセッションをオンラインで配信。様々なゲストを招き、テレワークやこれからのオフィスについてトークセッションが展開されました。
初日は、コクヨ代表取締役社長の黒田英邦氏と慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏によるキーノートからスタート。「激動の1年を振り返り未来を考える テレワーク時代のオフィスの役割」をテーマに、これからの働き方やオフィスの将来について語られました。
会場となったのは、今年の2月にオープンしたばかりだという同社の東京品川オフィス内の施設「THE CAMPUS」。緑あふれる開放的な室内では、同社のオフィス家具を体験したり、併設されたカフェでコーヒーを楽しみながら仕事をしたりすることもできます。
冒頭、黒田社長は「昨年は新型コロナウイルスの感染拡大が社会や働き方を大きく変えた1年だった」と述べ、テレワークやオンラインを活用した働き方が広がっていくなかでオフィス用品メーカーとして何をするべきなのか模索する1年だったと振り返りました。
宮田氏は、「これまでは家庭と仕事は分けるべきだと考えられてきたが、そこを分けて考えないテレワークのような新しい働き方が出てきた。今後はオフィスと家庭が一部重なるような場所が求められる」と述べ、「これからのオフィスは、“働く場”から“つながる場”になっていくだろう」との見解を示しました。
その上で、「今回会場となったTHE CAMPUSのオープンな空間は、まさに仕事と生活が融合した未来の働き方の入り口のような場所」と絶賛。黒田社長も「THE CAMPUSは『働き方の実験場』と位置づけているので、そのように評価して頂いてうれしい」と答えていました。
これからのオフィスは、仕事をする人・仕事以外で立ち寄った人など、様々な人が集まる空間になっていくのかもしれません。
テレワークで効率的に働ける社会へ
2ndセッションでは、引き続き黒田社長が登壇し、ゲストにZホールディングスの代表取締役社長である川邊健太郎氏を招いたトークライブが繰り広げられました。
Zホールディングスの前身であるヤフーでは、2012年から月3回までの在宅勤務を認める「どこでもオフィス」というシステムを導入していたそうですが、活用実績は乏しく、なかなか利用されてこなかったとのこと。しかし、昨年のコロナ禍で一気に利用者が増えたことを受け、2020年10月より「どこでもオフィス」の回数制限を撤廃したほか、フレックスコアタイム制も廃止。さらに、社外から副業人材を公募するギグパートナー制度などを立ち上げるなど、働き方の改革に踏み切ったそうです。
その結果を社員にアンケートしたところ、多くの人が「仕事のパフォーマンスが向上した」「コンディションが良くなった」と答えており、川邊氏自身も通勤にかかる時間が激減したことで、1日に対応できる仕事量が増えたと実感しているとのこと。
一方、コクヨでは昨年から、社員の出社率を最大50%に設定し、出社する人の数を抑えてオフィスの密を防ぐ取り組みを実施しているそう。部署や業務内容によって差はあるものの、テレワーク化が進んでいるようです。
川邊氏は、「今後テレワーク化が進むと、オフィスの効率性を自宅に持ち込みたいと考えるようになるはず。コクヨに期待するのは自宅に持ち込みやすいオフィス製品の開発です」と述べ、黒田社長に自身の要望を取り入れたオフィスチェアの製品化を要望。黒田社長も「ぜひ川邊モデルとして商品化したいですね」と答えていました。
このほかにも、同イベントでは企業の経営・人事・総務担当者がテレワークで変わったことを討論したり、テレワークに伴うオフィスのリニューアルの悩みをコクヨ製品を使った実例を交えて解説したりと、働き方やオフィスのこれからに関する様々な企画が展開されました。
テレワークが拡大すれば出社する人が減り、オフィスも縮小されることになります。ある意味、オフィス用品メーカーには逆風とも言えそうな状況ですが、時代の変化と捕らえて新しい働き方や次世代のオフィスの姿を発信したい、というコクヨの強い思いが感じられるイベントとなっていました。
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