投資ビギナーの心得
「投資は怖い」という先入観を持つ人もいるかもしれない。しかし、短期で大きな利益を得ようとせず、長期的な目線で運用すればリスクを大きく減らせる。投資初心者が持つべき心構えを解説しよう。
【Point 1】長期・分散・積立でリスクを抑える!
将来に向けて資産を形成するためには「長期」「分散」「積立」を意識しよう。金融資産はその時々で価値が上下する。その価格が適正なのかをピンポイントで見極め、売買して利益を上げるのはプロの投資家でも難しい。個人が安定的に資産を運用するためには、長期にわたって資産を分散させ、定期的に積み立てる戦略を取ることが重要となる。
[長期]
景気は、好況と不況が交互に訪れる。世界全体で見ると、その波を繰り返しながら経済活動は拡大し、株や不動産などの資産価値は上昇していく。長期にわたって投資を続けることで、利益を得られる期待は高くなるのだ。
[分散]
投資には「すべての卵をひとつのカゴに盛るな」という格言がある。投資資産の価値下落リスクを減らすため、資産を分散させるべきという意味だ。投資信託やロボアドバイザーを活用すれば、初心者でも簡単に分散投資できる。
[積立]
投資で資産を減らさないコツのひとつは、一気に資金を投入するのではなく、同じ商品を定期的に同額で積立購入すること。価格下落時には同じ投資額で多くの口数を買え、資産価値の上昇時に大きなリターンを期待できる。
【Point 2】資産がマイナスになっても焦らない
2020年3月、新型コロナへの不安拡大で、各国の株式市場が暴落。しかし、現在では各国の株価指数は暴落前の高値を続々と更新している。つまり、そこで焦って資産を売った人は損をしたことになる。短期的な値動きに一喜一憂しないことが、成功のポイントだ。
【Point 3】100円からでもはじめられるネット証券が使いやすい
大手ネット証券では、投資信託を100円から購入可能。一般NISAやつみたてNISAの口座での購入においても同様だ。また、個別株でも通常は100株単位のところ、1株から購入できるサービスを提供している場合もある。少額から投資をするなら、ネット証券を活用しよう。
<代表的なネット証券>
【Point 4】非課税制度のNISA・iDeCoを最大限活用する
株式・投資信託の売買や配当金で得た利益には、20.315%の税金(所得税+住民税)がかかる。その税金が非課税になる制度が、NISAとiDeCoだ。いずれも売却益や配当、分配金に税金がかからないため、うまく活用することで資産の運用効率が上がる。各制度の概要を理解して、非課税で投資できる恩恵を享受しよう。
NISA(ニーサ/少額投資非課税制度)の場合
積極的な投資で資産を増やすならNISAを活用!
NISAには、「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類がある。どちらを利用するのかは申し込み時に選択する必要があり、その年内は変更不可なので、自分に適したタイプを選ぼう。NISAはいつでも売却でき、生活の変化に合わせて現金化可能だ。
[NISAのメリット]
- 一般NISAの場合、個別株や投資信託、REITなど多彩な商品を選べる
- 一般NISAの場合5年間、つみたてNISAの場合20年間の配当も含めた運用益が非課税になる
[NISAのデメリット]
- 未使用枠を翌年以降に繰り越せない
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)の場合
支払い税額を抑えながら老後に備えた資産を形成する
運用益が非課税になるだけでなく、掛金の全額が課税所得から控除されるのが最大のメリット。所得税と住民税の負担が軽くなる。掛金は基本的に毎月5000円以上の一定額を拠出し、自営業は月6万8000円、公務員は月1万2000円など、職業や勤務先の年金制度によって上限額は異なるので、申し込み前に確認しよう。
[iDeCoのメリット]
- 運用益に税金がかからない
- 掛金が全額所得控除となり、所得税と住民税が安くなる
[iDeCoのデメリット]
- 基本的に60歳になるまで積立金を引き出せない
- 加入時や運用時、受取時に手数料が発生する
さらに運用したい人向けに、ロボアドバイザー、投資信託、個別株取引という選択肢も簡単ではあるが、解説しておこう。
【ロボアドバイザー】
年収や金融資産、運用スタイルなどに合わせて、自動でポートフォリオを組んで運用してくれる全自動投資サービス。ほったらかしておくだけで、資産の組み替えをしてくれる。自分で下調べする手間を省きたい人にオススメだ。
[ロボアドバイザーのメリット]
- 資産を簡単に分散できる
- ほったらかしていても、 リバランスを自動で行う
[ロボアドバイザーのデメリット]
- インデックス型の投資信託よりも運用コストが高い
- 最低投資金額が10万円以上のロボアドバイザーも少なくない
【投資信託】
投資家から集めた資金を運用して、利益を還元する金融商品。投資対象は株式やREIT、債券など多岐にわたる。ひとつの投資信託内でも複数の商品に投資をしているため、買うだけで広く分散投資をできるのが魅力だ。
[投資信託メリット]
- 投資のプロに運用を任せられる
- 資産を簡単に分散できる
- 100円〜の少額で資産運用をはじめられる
[投資信託のデメリット]
- 売却の指示から売却価格の決定(約定)までにタイムラグがある
- 種類が多く、銘柄選びに悩むことがある
- 運用時にコストがかかる
【個別株取引】
上場企業の株式を売買する。ハイリスク・ハイリターンで、株価は1日で10%以上の上下をすることもある。投資単位は100株からだが、証券会社によっては1株単位の売買も可能。自分で銘柄を分析する必要があるため難易度は高い。
[個別株取引のメリット]
- 高い値上がり益や配当金を目指せる
- 自分の好きなタイミングで銘柄を売買できる
- 銘柄によっては、株主優待をもらえる
[個別株取引のデメリット]
- 銘柄選びが難しい
- 大きな売却損が発生する恐れがある
- 株価の値動きが気になって、本業から気が逸れてしまう可能性がある
次回は、少額投資にオススメの証券会社を紹介!
文/星 政明 イラスト/勝間田しげる 監修/篠田尚子