パナソニック エレクトリックワークス社(以下、EW社)は、パナソニックグループのなかでも企業向けに電気設備やDXソリューションを提供している企業である。そのEW社は、2021年から2022年にかけ、3つのDXサービスを発表。その第3弾として、今年10月からのサービス開始が予定されているのが、マンション管理をIoT化するサービス「モバカン」だ。
マンション管理員を半減、住民サービスは維持
マンション管理と聞くと管理人が常駐するような、人的リソースが必要な仕事だという印象を抱く読者が多いだろう。モバカンはそんな人の手に依存する業務を、IoTの力で効率化するソリューションだ。このソリューションは、マンション管理会社には業務効率化による業務負担軽減を、住民にはデジタル化による利便性の高さを、それぞれもたらす。
EW社の担当者によれば、モバカンを導入することで、マンション管理員の人員数を5〜6割削減しながら、質の高い住民サービスを提供できるそうだ。その仕組みを見ていこう。
モバカンでは、キーボックスとやインターホンといったツールのクラウド連携をシステムの根幹としている。そのひとつが、カギの遠隔貸し出し機能だ。
マンションで鍵の貸し出しが発生するのは、主にメンテナンス業者に対するものだ。モバカンが導入されたマンションでは、メンテナンス業者がウェブ上でカギの貸し出し申請を行い、それを管理会社が承認すると、パスワードが発行される。実際にマンションへ赴いたメンテナンス業者がそのパスワードを専用のキーボックスに入力することで、鍵が貸し出されるという仕組みだ。
なお、メンテナンス作業完了後に業者が鍵を返却すると、その事実が管理会社側に通知がされる。これまで手渡しで行われてきたカギの貸し借りだが、貸し出しの認可から返却の確認まで、人の手を介さずとも行えるようになった、というわけだ。
また、カギの貸し出しは、住民に対してのものもある。それは、マンション共用部のカギだ。共用部の利用申請はインターホンを通して行い、そこに表示されたパスワードをキーボックスに入力すると、カギが貸し出される。
マンションの掲示板をデジタル化。キーアイテムはインターホン
モバカン導入による変化のなかでも住民への影響が特に大きいのが、掲示板や書庫のデジタル化だ。モバカンが導入されたマンションでは、各部屋のインターホンに表示されるQRコードを読み込むことで、住民向けの最新情報に素早くアクセスできるようになっている。
この変化は、管理会社にとってもメリットがある。リアルな掲示板を用いた従来の掲示方法では、どうしても人の手が必要だ。掲示物を刷り出して現地で貼らなければならないから、管理会社はリモートワークも不可能になる。しかし、モバカンは、こういった問題を解決してくれる。
ここまでの説明を読んでおわかりのように、各部屋に取り付けられたインターホンが、モバカンの機能を支えるキーアイテムとなっている。近年大画面化が進むインターホンは、常時電源が入っておりマンション住民とコンタクトが取れるデバイスなのだ。パナソニックは国内インターホン市場で約半分のシェアを誇っており、モバカンはその強みを活かしたシステムである。
なお、他社製品など、モバカン非対応のインターホンが導入されている物件の住民向けに、インターホンの役割を代替する、モバカンのスマホアプリもリリース予定だ。そのため、パナソニック製のインターホンの設置がモバカン導入の必須要件というわけではない。
高騰する中古マンションの管理費を抑制するキーマンに?
モバカンは、あくまでマンション管理会社に向けたソリューションだ。管理会社は数万円の初期費用と、プランに応じた3~10万円程度の月額費用をEW社に支払い、モバカンを利用する。住民への説明は、モバカンを導入する管理会社が行うが、EW社の担当者が同席してともに説明することもあるという。
新築15年後に行われる大規模修繕などにより、築年数が経った物件では管理費用が高くなりがちだ。そして、その負担は、結局住民側にきてしまう。モバカンは、デジタルツールによる利便性のみならず、管理会社の業務効率化によるマンション管理費抑制にも貢献してくれるかもしれない。
モバカンのサービス開始は2022年10月。その将来に期待したい。